異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

感謝祭二日目ー2

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「こ、こちらがご注文の品になります。
 ・・・お慕いしておりますにゃん、ご主人様・・・!」

「うん、確かにディアナの愛を受け取ったよ。」


 ディアナは結局、クロトの顔に泥を塗らない為にも役目をこなした。

 耳まで真っ赤にしてプルプルと震えながらも、何とかやり遂げた。

 青髪の男も非常に満足そうにしている。


「さて、映像に記録できたことだし、オムライスを頂こうかな。」

「・・・なっ!?映像に記録!?なんてことしてくれてるのよっ!」


 ディアナはそう叫びながら青髪の男が示した記録媒体を取り上げようとした。

 だが、男は巧みにディアナをあしらい、アイテムボックスへ収納。

 とても余裕そうで、ディアナの拳をギリギリで受け止めた男の面影は殆ど無い。


「っ・・・この店のルールを違反してるわ!今のを差し出しなさい!」

「ルール違反?本当に?」

「ええ、当然よ!・・・そうよね?」


 そう胸を張りながら、丁度近くに来ていた店長に確認した。

 しかし、店長の答えは期待していたものとは全く違っていた。


「そんな決まりはありませんよ?寝ぼけているのですか?」

「はぁっ!?何言って・・・!だってそういう風に説明があったわよ!?」


 事前に聞かされていた内容と食い違っていた為、ディアナは猛然と食い下がった。

 そんな高ランク冒険者のそんな反応にも、店長は焦ることなく冷静に返答する。


「それは普通のお客様に対するルールですので・・・。」

「このド変態が普通の客じゃないのは分かるけどっ、それはおかしいでしょ!?」

「いやいや、ド変態扱いはないんじゃないかな?実行するとは思ってなかったし。」

「はあっ!?」


 青髪の男に苦笑いで非難されてカッとなったディアナは、頭に血が上った。

 顔を怒りの色で染めて、全力の拳を男に繰り出す。

 そこに先程のような無意識下でしていた遠慮というものが欠片も存在していない。


「あ、あ、あんたがやらせたんでしょうっ!?」


 ビシッ!!


「おっ・・・中々いいパンチだね。」

「なあっ!?」


 渾身の一撃を指一本で止められたディアナ。

 彼女は急激に怒りが覚め、恐怖さえ抱き始めたのを自覚した。

 青髪の男はその様子をニコニコしながら見つめている。


「さっきの反論の続きなんだけど、僕のお願いを君が実行する必要は無いよね?」

「っ・・・でも、VIPであるあんたの頼みを無下にしたら、クロトが・・・!」


 ディアナは数歩分距離をとり、体の震えを誤魔化すために自分を抱き締めた。

 目の前の男がその気になれば、自分など容易く組み敷かれてしまう。

 それが分かってしまった故に本能的に恐怖してしまっているのだ。


 だがしかし、恐怖しつつも男の優し気な顔を見ると、不思議と恐怖心が消えた。

 これはどういうことかと不思議に思っていると、男が口を開いた。


「それでさ、そのクロトって人は・・・・・・こんな顔だったかい?」


 青髪の男は、変装用亜神器『ドッペルフォース』を解除し、本来の姿を見せた。

 すると、黒眼と肩まで伸びた黒髪を持つ、中性的容姿の男性が露わになった。


 そう、紛うことなき、ミカゲ財閥会長兼店の管理者であるクロトその人だった。


「な、な、なあっ・・・・・・・・・何であんたがここに居るのよおおおおっ!!」

「・・・だって僕の店だし。」


 そりゃあ、店長代理が店のルールを捻じ曲げる訳である。

 だって、絶対服従の上司が相手だもの。


「さて、と・・・さっきの映像は大事に保管させてもらうけど・・・いいよね?」


 クロトのその問いかけに、ディアナはごく簡潔に答えた。


「いいわけ・・・ないでしょおおおおおおおっ!!」


 







「あああああっ!?もう帰りたいっ!」

「まだ業務時間が残ってるから帰れないよ?」


 怒りが少し収まった頃、ディアナは自分のしたことを思い返して悶え始めた。

 例えば、クロトの対してどんなことを言ったのか、とか。

 他にも、クロトに対してどれだけの敬意を持ち合わせているのか、とか。

 それらのことを考えれば、ディアナでなくとも悶えるだろう。


 なお、とても仕事にならないので、現在はクロトの専属となり仕事中扱いだ。


「疑っていた訳ではないけど、あそこまで僕を立ててくれるとはね・・・。」

「やめてっ!それ以上言ったらぶっ飛ばすわよ!!」


 できるものならやってみるといいよ?

 いつものクロトだったらそう言っていただろう。


 だが、今回は違う。

 自分を立ててくれたことが嬉しかったので、少し手加減することにしたのだ。


「ディアナ・・・そこまで僕のことを想ってくれて、ありがとう。」

「あんたわざとやってるでしょっ!?揶揄われるより余計に恥ずかしいわよっ!」

「あれ?」


 そんなつもりは無かったクロトは、不思議そうに彼女の非難を受け止めた。

 これも一つの、友情の形なのだろうか。

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