異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

感謝祭一日目ー6

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「そんなことがあったのでござるか・・・。マリア殿も大変でござるなぁ。」

「大変で済む話じゃありませんわ・・・。」


 ナツメが訪れて、クロトの予想通りハズレを引いたまではいい。

 だが、リンカが端っこに当たったナツメを憐れみ、一時的に隣を譲っている。

 勿論、あくまでも一時的に、だが。

 つまり現在の並びは、マリア、クロト、ナツメ、リンカの順である。


「ナツメ、折角隣を譲ったんだから、もっとくっつけばいいのに。」

「うっ、しかし、それは気恥ずかしいでござるよ・・・。
 大体、リンカだってそれほど密着はしていなかったでござろう?」

「うっ・・・痛いところを・・・!」


 ナツメ、マリア、リンカの三人は、ベタベタするのを恥ずかしがるタイプだ。

 もっとも、全く恥ずかしがらないのはエメラくらいなのだが。


「マリア、もっとくっついてもいいよ?」

「遠慮しておきますわ。」

「僕としてはそうしてくれた方が嬉しいんだけどな・・・?」

「・・・仕方ありませんわね。」


 マリアは口とは裏腹にニヤニヤしながらその申し出を嬉しそうに受けた。

 クロトはマリアの扱い方にとことんまで長けているようだ。


「ほらナツメ、あなたも。」

「う・・・失礼するでござる・・・!」

「ん、どうぞ。」


 ナツメは幸せそうに抱き着くマリアをみて我慢がきかなくなったようだ。

 一瞬だけ躊躇ったものの、リンカの押しに負けてクロトの腕を抱え込んだ。


(ふぅ・・・僕ってこの上ない幸せ者だよね・・・。)


 両手に花状態のクロトは改めてそう思わされた。

 両腕に触れている柔らかい感触を意識しつつも妙な気分にならないよう注意する。

 そんなある意味苦行ともとれる行いをクロトが平気でしていると、次の来訪者が。


「クロト!スティカに私の居場所を漏らしたのはお前か!?」

「・・・・・・。」

「む、違ったのか?だとしたら疑って済まなかった・・・。」

「・・・・・・正解!」

「ならば初めからそう言え!余計な謝罪をすることになったではないか!」


 新たな来訪者カレンは、どうやらスティカと一悶着あったようだ。


「嘘を吐くつもりなんて無かったし、カレンが溜めを否定と勘違いしたんだよ?」

「あんな『何のことか分からない』みたいな顔をされれば普通は誤解する!」

「それを含めての勝手な勘違いということで。さ、クジを引いて?」

「むっ・・・。」


 カレンは躊躇いもせずにくじを引いて、黄色い玉を手にした。

 残念ながらハズレ玉だ。


「ハズレですわね。当たりがでるまでここに座るといいですわよ。」


 マリアはそう言うと、カレンに自分の座っていた席を譲ろうと横にズレた。


「別に私はどこでもいいのだが・・・。」

「カレン、我慢は体に毒ですのよ。」


 マリアは半ば強引にカレンの手を引いてクロトの隣に座らせた。

 カレンはそれに逆らえず、素直に座った。

 やはり、クロトの隣に座ってイチャつきたいという欲望はあったようだ。

 これで、マリア、カレン、クロト、ナツメ、リンカという席順になった。



「カレンはナツメの注文と同じ激辛水で良かったかな?」

「拙者はそのようなもの注文していないでござるよ!?」


 ナツメはグレープジュースを示しながら風評被害を起こすまいと発言。


「激辛水・・・?いや、私は緑茶がいいのだが・・・。」

「了解。」


 クロトはグラスに緑茶を注ぎ、カレンの前へ移動させた。


「それで、カレンはいつ抱き着いてくれるのかな?」

「ぶっ!何の話だ!私が抱き着きたいと言ったかのような言い方はやめてくれ!」


 口に含んだ緑茶を噴き出しそうになりながら頬を染めるカレン。

 カレンもマリア程ではないがよく弄られる。


「カレンは数少ないわたくしの同類ですわね。」

「そんな枠組みには入りたくない!」


 結局カレンはクロトの腕に抱き着かないまま、時間が過ぎていった。

 そして、十数分後に次の訪問者が。


「お待たせしました、クロトさん。」

「全然待ってないよ、アクア。」


 祭りの観光を終えて約束の場所へ訪れたのは、クロトの正妻と名高いアクア。

 クロトに差し出されたクジをパパッと引くと・・・黒い玉が。


「おめでとう、と言うべきかな。当たりの玉だよ。」

「そうですか。やはり嬉しいものがありますね。」

「あ、拙者が退くでござるよ。」


 ナツメが席を立とうとするカレンを押しとどめ、アクアに席を譲った。

 アクアはお礼を言いながらクロトの隣に腰掛ける。

 それから、ごく自然に手を繋ぎ、頭をクロトに預けて寄り掛かった。


「流石ですわね・・・。カレンも見習った方がいいですわよ?」

「余計なお世話だ・・・!」


 そう答えたカレンだが、羨ましそうな表情を隠し切れていない。

 故に、クロトは少しフォローすることに決めたのだった。

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