異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

感謝祭一日目ー1

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 感謝祭が開催され、ミカゲ財閥の本社に人がなだれ込んだ。

 建物内部はこの日の為に百貨店状態に改造されているのである。

 そりゃあ、客も詰めかけるというものだ。


「食料品売り場はこちらです!十分な数が取り揃えてありますので慌てないで!」

「お一人様につき購入個数の制限がございますので、ご注意ください!」

「基本はすべて無料ですが、必ずレジを通るようにお願い致します!」


 係員たちがそれぞれ客の誘導を行っている。

 空間歪曲の魔道具も作動しているので、現状はパニックになっていない。


「お買い上げ品を確認致しました。クラリスバッジはお持ちですか?」

「これでいいんですよね・・・?」

「はい、確認致しました。こちらはレシートになります。またのお越しを!」


 クラリスの描かれたバッジを見せることで、購入金額は十割引きに。

 これは事前に配布されているので、みんな持っている。


 なお、このバッジには識別コードがあり、一つ一つが別物だ。

 したがって、公開はされていないが個人の買い物履歴が記録されている。

 すなわち、その店舗での購入上限を超えるとレジの店員にそれが伝わるのだ。


「パンフレットと地図はこちらで配布しております!」

「おっ、これか。・・・うおっ、見たい部分が拡大された!?」

「こちらは最先端の地図ですので小型化も可能で、持ち運びが便利ですよ。」

「ふーん・・・って、シンクレア王国の地図まであるじゃねぇか!?」


 配布された地図はサイズ変更が可能で、非常に持ち運びが楽だ。

 尚且つ、世界中のどこで何が行われているのかが分かりやすい。


「ブルータルの町に、アトラクション<幽霊屋敷の謎を解け>?面白そうだな。」

「ヴォイザード郊外に、<巨大迷路を大探検!>か。行ってみようかね。」


 一つの町に最低一つはアトラクションがある。

 また、各地に転移魔法陣が設置されており、移動は簡単だ。

 ここまでくると文化祭のノリである。

 規模は違い過ぎるが。


「ドレファトで<闇ギルド「終末の鐘」の実態を暴け!>って、なんじゃこりゃ?」

「クロトおおおおおっ!聞いてねぇぞおおおおおっ!!」

「レドグリアの町<エメラフィア展示場>・・・すぐに行かなくっちゃ!」

「えっ?エメラお姉様の!?」


 聞き覚えのある絶叫がいくつか響くも、周囲の音にかき消された。


「カラーヴォイス王城<リオンちゃん、頑張る!>って、何これ!?
 クロト君、こんなのがあるなんて一言も聞いてないんだけど!?」

「ほうほう。面白そうではないか・・・!」

「父上!?こんなところで何を!?変装くらいしてください!!」

「なーに、誰も気づかんだろう。な、アイリス。」

「ふふ、そうですね、エド。誰もこちらを見ていませんから。」


 国王一家がお忍び(?)で訪れているが、誰も気づく様子がない。

 みんな買い物かパンフレットに夢中なのだ。


「フルーリエの町<アイシアとディアナの猫耳喫茶>ってどういうことよっ!?」

「あ、先輩。師匠から要請があったのでOKしておきましたよ。明日開店です。」

「アイシア!?何で引き受けたのよ!?」

「え?師匠の為ならなんでもするんですよね?」

「そういう意味で言ったんじゃないわっ!!」


 アイシアとディアナは社員と客の両方になれる故に、そういう配役に。

 一日目は自由にしていいから二日目は働け、ということだろう。


「スカイブルナの町<絶叫コースター>ってどんな奴なんだ?」

「名前だけでも面白そうです!行ってみましょう、ライトさん!」

「あ、私も行く・・・!」


 ライトとセレン、レイナの三人はスカイブルナの町へ転移した。

 というより、ライトが二人の恋人に引きずられていった。


 あっちこっちで大騒ぎとなっている現状。

 そんな中、パンフレットの端っこに載っているスケジュール表に注目する者が。


「ん?ミカゲ財閥前広場<虹のコンサート>?これがもうじき始まるのか。」

「へぇ・・・帰り際に見ていきましょう?」









 ミカゲ財閥前広場、特設会場にて。


「みなさん、こんにちはっ!感謝祭は楽しんでいますか?
 今日は精一杯歌いますので、是非、聞いていってください!」

「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」」


 アクアが簡潔に挨拶をして、演奏が始まった。


 メンバーは全部で八人。

 メインボーカルのアクア。

 同じくボーカルのセーラ。

 ドラムのクロト。

 ピアノ伴奏のエメラ。

 エレキギターのカレンとスイレン。

 フルートのヴィオラ。

 マリアがパーカッション。


 クロトの居た世界では「何だその組み合わせ!」と言われて当然なレベルだ。

 ちなみに、ナツメは何をやらせても駄目だったのでクビになった。


 相変わらずの残念具合である。

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