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第二部「創世神降臨」編
カレンと副団長
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リオンと別れたクロトは、王城の訓練場を訪れた。
するとそこには、死屍累々とでも呼ぶべき状況が広がっていた。
「カレン、人をいたぶって喜ぶ性癖にでも目覚めたの?」
「なっ・・・そうではない!これは訓練の一環で・・・!」
突然背後に現れたクロトの方を振り返りながら、その言葉を否定したのはカレン。
王城の騎士団員たちに稽古をつけていたようだ。
恐らく騎士団長のレスターあたりから依頼でも受けたのだろう。
王城奪還作戦の時からの知人であるのだから。
「稽古、ね。僕にはズタボロになった騎士団員しか見えないんだけど?」
「これはっ・・・騎士団長からボコボコにするよう頼まれたからで・・・!」
「私は、そのようなこと、頼んでいないが・・・。」
「なっ、レスター!話が違うぞ!」
ちょうど訪れていたレスターが、カレンの言葉を否定した。
レスターは口下手ではあるが嘘を吐くようなタイプでは無い。
また、曲がったことが嫌いであるので、騎士たちから慕われている。
つまり、彼の言は本当のことであるということ。
「・・・カレン、そういう嘘は良くないと思うよ?」
「本当なんだ!私は嘘など吐いていない!」
クロトはカレンが嘘を吐いているようにも見えなかった。
これは一体どういうことなのか。
少し沈黙が流れた後、レスターがこんなことを言い出した。
「私は、団員のたるんだ性根を、叩き直してほしいと、頼んだが・・・。」
「やはり言っていたのではないか!」
「ああ・・・そういう・・・。」
クロトは理解した。
つまり、レスターにそんなつもりは無かったが、カレンはそう受け取った、と。
カレンにとって性根を叩き直す=ボコボコにする、ということなのだろう。
「・・・という訳で、不幸な行き違いだったんだね。」
「「はぁ・・・。」」
カレンとレスターは深いため息を吐いた。
「ま、被害も無かったんだし、次から気を付けるということで・・・。」
「「「「被害なら目の前にありますけど!?」」」」
ズタボロになった騎士団員たちが、声を合わせてクロトにそう叫んだ。
何というシンクロ率。
「え?でも、カレンが加減してくれたから、全員五体満足だよね?」
「おい!まるで普段の私が平気で四肢を切断するかのような発言はやめてくれ!」
「・・・・・・え?」
「「「「・・・・・・。」」」」
騎士団員たちが重い体をズザザザザッ!と引きずって、カレンから距離をとる。
どうやら、命の危険を感じたようだ。
「待て!誤解だ!私は訓練でそのようなことはしない!」
「「「ひぃっ!?」」」
「悲鳴を上げるなっ!私から後ずさるな!」
カレンが一歩近づくと、団員たちは一歩離れる、ということの繰り返しに。
その間に、クロトはレスターに尋ねた。
「そういえば、性根を叩き直す、というのは?」
「それがな。クロトがいるから、何が起きても大丈夫と、鍛錬を怠っていたのだ。」
「ああ・・・それは駄目だね・・・。」
現在の王城は騎士団も含め、マリアのおかげで腐敗とは無縁だ。
また、その後はクロトも王城の雇用に関わっていたので、未だにその状況だ。
そんな中で性根を叩き直すというのはピンとこなかったので尋ねたわけだ。
「レスターが直接指導・・・は無理か。」
「私は、口が上手くない、からな。」
二人がそんなことを話している間に、カレンの方がおかしな展開になっていた。
「カレンお姉様、私のことは遊びだったんですか!?」
「何の話だ!私は貴様とは初対面だぞ!?」
「ファンクラブ副会長としてずっと陰ながら見守ってきたのに!」
「時折感じる視線はお前だったのか!」
カレンが女性騎士団員と痴話喧嘩を始めていた。
一体何故そんなことになったのやら・・・。
「カレン、やっぱり女性にモテるよね。」
「ややこしくなるからクロトは少し黙っていてくれっ!」
「クロト会長からも何とか言ってください!」
クロトは両側から正反対のことを言われて反応に困った。
ちなみに、会長というのはファンクラブの会長と財閥の会長が掛けられている。
「とりあえず、二人とも落ち着いて。スティカ、ファンクラブの掟、忘れたの?」
「・・・っ、カレンお姉様に害を為す者は除籍、です。」
「今回は許すけど、掟破りは厳禁だよ?」
「・・・はい。」
女性騎士団員、というより、副団長のスティカは、落ち着きを取り戻した。
そして、カレンに頭を下げて、一歩後ろへ下がる。
「カレン、僕からも謝るから、今回の事は水に流してね?」
「っ、ああ、分かった・・・。取り乱してすまなかった。」
カレンも軽く頭を下げ、一歩下がる。
これにて一件落着。
「ふぅ・・・。全く、カレンを慌てさせていいのは僕だけなのにね。」
「「おいっ!?」」
カレンとスティカは、直ちにクロトへツッコミを入れたのだった。
するとそこには、死屍累々とでも呼ぶべき状況が広がっていた。
「カレン、人をいたぶって喜ぶ性癖にでも目覚めたの?」
「なっ・・・そうではない!これは訓練の一環で・・・!」
突然背後に現れたクロトの方を振り返りながら、その言葉を否定したのはカレン。
王城の騎士団員たちに稽古をつけていたようだ。
恐らく騎士団長のレスターあたりから依頼でも受けたのだろう。
王城奪還作戦の時からの知人であるのだから。
「稽古、ね。僕にはズタボロになった騎士団員しか見えないんだけど?」
「これはっ・・・騎士団長からボコボコにするよう頼まれたからで・・・!」
「私は、そのようなこと、頼んでいないが・・・。」
「なっ、レスター!話が違うぞ!」
ちょうど訪れていたレスターが、カレンの言葉を否定した。
レスターは口下手ではあるが嘘を吐くようなタイプでは無い。
また、曲がったことが嫌いであるので、騎士たちから慕われている。
つまり、彼の言は本当のことであるということ。
「・・・カレン、そういう嘘は良くないと思うよ?」
「本当なんだ!私は嘘など吐いていない!」
クロトはカレンが嘘を吐いているようにも見えなかった。
これは一体どういうことなのか。
少し沈黙が流れた後、レスターがこんなことを言い出した。
「私は、団員のたるんだ性根を、叩き直してほしいと、頼んだが・・・。」
「やはり言っていたのではないか!」
「ああ・・・そういう・・・。」
クロトは理解した。
つまり、レスターにそんなつもりは無かったが、カレンはそう受け取った、と。
カレンにとって性根を叩き直す=ボコボコにする、ということなのだろう。
「・・・という訳で、不幸な行き違いだったんだね。」
「「はぁ・・・。」」
カレンとレスターは深いため息を吐いた。
「ま、被害も無かったんだし、次から気を付けるということで・・・。」
「「「「被害なら目の前にありますけど!?」」」」
ズタボロになった騎士団員たちが、声を合わせてクロトにそう叫んだ。
何というシンクロ率。
「え?でも、カレンが加減してくれたから、全員五体満足だよね?」
「おい!まるで普段の私が平気で四肢を切断するかのような発言はやめてくれ!」
「・・・・・・え?」
「「「「・・・・・・。」」」」
騎士団員たちが重い体をズザザザザッ!と引きずって、カレンから距離をとる。
どうやら、命の危険を感じたようだ。
「待て!誤解だ!私は訓練でそのようなことはしない!」
「「「ひぃっ!?」」」
「悲鳴を上げるなっ!私から後ずさるな!」
カレンが一歩近づくと、団員たちは一歩離れる、ということの繰り返しに。
その間に、クロトはレスターに尋ねた。
「そういえば、性根を叩き直す、というのは?」
「それがな。クロトがいるから、何が起きても大丈夫と、鍛錬を怠っていたのだ。」
「ああ・・・それは駄目だね・・・。」
現在の王城は騎士団も含め、マリアのおかげで腐敗とは無縁だ。
また、その後はクロトも王城の雇用に関わっていたので、未だにその状況だ。
そんな中で性根を叩き直すというのはピンとこなかったので尋ねたわけだ。
「レスターが直接指導・・・は無理か。」
「私は、口が上手くない、からな。」
二人がそんなことを話している間に、カレンの方がおかしな展開になっていた。
「カレンお姉様、私のことは遊びだったんですか!?」
「何の話だ!私は貴様とは初対面だぞ!?」
「ファンクラブ副会長としてずっと陰ながら見守ってきたのに!」
「時折感じる視線はお前だったのか!」
カレンが女性騎士団員と痴話喧嘩を始めていた。
一体何故そんなことになったのやら・・・。
「カレン、やっぱり女性にモテるよね。」
「ややこしくなるからクロトは少し黙っていてくれっ!」
「クロト会長からも何とか言ってください!」
クロトは両側から正反対のことを言われて反応に困った。
ちなみに、会長というのはファンクラブの会長と財閥の会長が掛けられている。
「とりあえず、二人とも落ち着いて。スティカ、ファンクラブの掟、忘れたの?」
「・・・っ、カレンお姉様に害を為す者は除籍、です。」
「今回は許すけど、掟破りは厳禁だよ?」
「・・・はい。」
女性騎士団員、というより、副団長のスティカは、落ち着きを取り戻した。
そして、カレンに頭を下げて、一歩後ろへ下がる。
「カレン、僕からも謝るから、今回の事は水に流してね?」
「っ、ああ、分かった・・・。取り乱してすまなかった。」
カレンも軽く頭を下げ、一歩下がる。
これにて一件落着。
「ふぅ・・・。全く、カレンを慌てさせていいのは僕だけなのにね。」
「「おいっ!?」」
カレンとスティカは、直ちにクロトへツッコミを入れたのだった。
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