異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

マリアの到達とやけ酒

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「あっ、レベルが100になりましたわ。」


 森林竜を討伐して、マリアのレベルが100に到達したようだ。


「へぇ?あと少しだというマリアの感覚は正しかったんだね。」

「・・・疑ってたんですの?」

「ん?あと竜が一匹分くらいかな、と計算してたけど、疑ってはいなかったよ?」

「それならいいんですわ。・・・・・・何故教えてくれませんでしたのっ!?」


 分かっていたならそう言ってくれと文句を言った。

 ついにヴィオラにまで抜かれて、何気に焦っていたのだ。


「何故って・・・マリアのその反応が見たかったからだけど?」

「クロトっ!どうしてあなたはいつもそうなんですのっ!!」


 マリアは白のロングコートを振り乱しながらポカポカとクロトを叩き始めた。

 それこそがクロトの望んだ反応だとは気づかないままに。

 最近これを味わっていないな、と思って画策していたのだ。


「マリア、そこで涙目になればもっと可愛いんだけど?」

「何を言ってますのっ!?」


 それはさておき。


「それじゃあ、感謝祭当日は・・・よろしく頼むよ?」

「分かってますわ。当初は私の役にはならないと思っていましたのに・・・。」


 マリアは雑貨店の手伝いにも時間を割かれてしまった。

 それに加えて魔人のころの感覚が残っていたので、のんびりペースだった。

 それらが原因となって、レベル上げが一番遅れてしまったのである。


「さて、調査も終わったし帰ろうか。よっ、と。」

「なっ・・・何故お姫様抱っこなんですの!?」

「マリアがしてほしそうな目で見てたから。」

「なっ!?そんな目はしてませんわよっ・・・多分。」


 どうやら、あまり自信がないようだ。

 何だかんだで首に手を回している以上、その判断は間違っていないのだろう。


 その後、そのままドレファトの町に帰り、微笑ましい目で見られるのであった。

 隠密者を発動していると勘違いしていたマリアはご愁傷様である。



 恥ずかしさから家に籠ってしまったマリアを置いて、クロトは次の用事へ。

 向かう場所は、旧ブルータル王国王都、現ブルータルの町。







「ディアナ先輩、まだ昼間なんですから、あんまり飲み過ぎないでください!」

「だって・・・初めてアイシアに負け越したのよ?飲んで忘れたいのよ・・・。」


 この日、模擬戦三本勝負で二敗して負け越したディアナは、少々いじけていた。

 今まで一敗することはあっても、負け越したことはなかったのだ。


「それを言ったら、私はどうなるんだろう・・・。」

「インフィアさんも飲み過ぎないでくださいっ!」


 前々から時折負け越していたが、本日初めて三連敗を喫したインフィア。

 こちらもやさぐれ気味で昼間からお酒を煽っている。


 アイシアは時折時間を作ってクロトに稽古をつけてもらっていた。

 休みの日も返上して、嫉妬の扱い方もクロト程ではないがマスターしつつある。

 もう、余程の事でなければ嫉妬に振り回されはしないだろう。


 そして、クロトからの英才教育(?)を受けて、彼女はどんどん強くなった。

 レベルで下回っているにも関わらず、ディアナ達に勝ち越すくらいに。

 ディアナとインフィが落ち込むのも致し方なしだ。


 二人は、自分たちの才能に胡坐をかいていたことを身をもって実感させられた。

 そのことについて反省しながらも、それはそれとして・・・。


「今日は、酔いつぶれるまで飲むわ・・・。」

「私も付き合うよ、ディアナ・・・。」

「ちょっ、既に潰れる寸前なのに何言ってるんですか!?」


 結局、アイシアが止めても聞く耳を持たず、そのまま酔いつぶれてしまった。


「はぁ・・・。どうやって宿まで帰ればいいんですか、これ・・・。」


 アイシアでは二人を背負って帰るのは難しい。

 いや、両手が塞がることを覚悟すれば、できないこともない。

 だがその場合、その辺の酔っ払いと戦っても勝てるか怪しい。

 それは幾ら何でも危険なので、できればやりたくないのだ。


 普段そこそこしっかりしているディアナと、普通にしっかりしているインフィ。

 二人が昼間から飲んだのは自分が原因だと分かるので、強く止められなかった。

 その気持ちは痛いほど理解できるつもりなので、余計にだ。


「ディアナ先輩、起きてください。もう夜ですよ?」

「むにゃむにゃ・・・アイシア、世話が焼けるわね・・・むにゃ・・・。」

「どんな夢を見てるんですか!いい加減起きてくださいってば!」


 アイシアはこれからどうしようかと頭を抱えた。

 そんな時だった。


「うちの店で昼間から飲んだくれてる客が居ると聞いたんだけど・・・。
 やっぱりアイシアたちだったね。差し詰め、模擬戦で負け越してやけ酒、かな?」

「あ、師匠・・・じゃない、クロトさんっ・・・!」


 それは、用事でブルータルを訪れていたクロトその人。

 文字通り、天の助けであった。

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