異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

ラファエル再誕

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 自らの予想通り、ラファエルは負けた。

 申し訳なさそうな表情をしながらも、決して手を抜かなかった青髪の存在に。

 身も心も尋常ではなく強い存在に。


 愛した人に相応しい存在になるために、どんな壁も超えてみせる女性。

 決して善性ではないが、内側へ招き入れた者へは狂おしい程の愛を持つ青年。


(この方たちとともにあることが出来れば、どれほど幸せなのでしょうか・・・?)


 死の直前、クロトとアクアに対して、忠義心のようなものを抱いたラファエル。

 そして気づいた。

 自分が何をして、どう生きたかったのかを。


(私は、魂を捧げても惜しくない仕えるべき主を求めていたのですね・・・。)


 ドクン、ドクン、と鼓動が跳ねるのを感じる。

 尽くしたいと思わされる者を見つけ、共に生きたい。

 それがラファエルの願いであり、信念。


(そんな・・・!ようやく、ようやく見つけられたというのに・・・!)


 ラファエルが気づいたときにはもう遅かった。

 既に彼女は死を逃れることができない状況にある。

 嘆いて、嘆いて、そして・・・。


(私はここで終わり・・・。願わくば、あなた方に幸福あらんことを・・・!)


 そう願い、死の間際に定まった信念は、ほんの少しだけ、運命を歪めた。

 それが、ラファエルの心とラファエルの魂というアイテムの誕生である。

 その心と魂は、既にラファエルの下に無かったから消滅を免れたのだろう。

 クロトとアクアに明け渡してもいいと強く思ったが故に。


(もしも、次があるのなら・・・私は、あなた方とともにありたい・・・!)


 そして、ラファエルの意識は消失した。





 きっとそれは、ただの偶然であり、必然だったのだろう。


 ラファエル心と魂は、クロトが新たな目的を達成するための道標になった。

 彼女が心と魂を明け渡さなかったら、クロトの目的は前途多難であったはずだ。

 神を降臨させるなど、そう簡単に人間に為せるはずもないのだから。

 
 ラファエルは、狙って心と魂を置き去りにしたのではない。

 クロトとアクアも、それが目的でラファエルを倒したわけではない。


 ラファエルはクロトとアクアに忠義を持った。

 クロトとアクアも、進むべき道を定めてくれたラファエルに感謝した。


 ラファエルの持つ二人への忠義が二人を助けたのは、間違いなくただの偶然。

 決して意図したものではない。


 だが、偶然だろうと必然だろうと、そんなことはどうでもいいのだ。


 ラファエルは心の底から、クロトとアクアに仕えたい。

 クロトとアクアは打算抜きで、ラファエルという存在が欲しい。


 この事実があれば、あとのことなど些細な問題なのだ。

 人の心以外のことなど、容易く捻じ曲げてしまえるものでしかないのだから。




 魔法陣が光り輝き、素材が分解されていく。

 全てが光となり、その光が集まり、少しずつ人の形を成していく。


 幻想的な状況に、誰もが食い入るように見つめている。

 その中でクロトとアクアは、少しだけ他の者と違った目線を向けていた。

 きっと、直感的に感じていたのだろう。

 ラファエルの持つ、強い忠義と信念を。









「・・・ここは?それに私は・・・・・・っ!?」


 ラファエルは意識を取り戻し、目を開き、自分の状況を確認しようとした。

 そしてすぐに、目の前に見つけてしまった。


 己が恋焦がれていたといっても過言ではない、二人の存在を。

 自分の生きる目的であり、存在意義にもなる青髪と黒髪の存在を。


「やあ、ラファエル。調子はどうかな?具合の悪いところとかは無いかい?」

「お久しぶりですラファエルさん。私の事、覚えていらっしゃいますか・・・?」


 敵である自分へ優しく声を掛けてくれる両者に、やや混乱しているようだ。


「・・・覚えて、おります・・・クロト様とアクア様。」


 ラファエルはそう返事をして、言われた通りに体の具合も確認する。


「体の方は、以前よりやや軽いですが、直に慣れると思われます。」

「そっか。それは良かった。」


 そう言いながら安堵の籠った微笑みを浮かべるクロト。

 ラファエルはそのクロトの瞳に、内側へ引き入れた者へ向ける感情を見た。

 また、アクアの瞳には、自分への恩義と尊敬を見た。


 それを認識した瞬間、ラファエルは己が喜びの感情で満たされるのを感じた。


 クロトとアクアは一度深呼吸をして、こう告げた。


「ラファエル。僕たちは君という存在が欲しい。」

「私たちの手であり足、剣であり盾。そんな存在になって頂けませんか?」

「・・・!!私、は・・・!」


 数瞬後、ラファエルは二人の前で膝を着き、頭を垂れた。


「私の持つ全ては、あなた様方のために!」


 ラファエルの誓いを受けたクロトとアクアは微笑みを浮かべた。

 そして、あらかじめ用意していたものを取り出す。


 クロトは剣を、アクアは盾を、ラファエルに渡したのだった。

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