異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

義体作製

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 橙結晶がクロトの手に収まり、ついに全ての材料が揃った。


 中核となる、ラファエルの魂とラファエルの心。

 神秘結晶、表裏の松明、命の水、その他素材。

 赤結晶、緑結晶 青結晶、黄結晶、紫結晶、橙結晶。

 世界樹の雫、世界樹の葉、世界樹の枝、世界樹の恩恵、などの世界樹素材。

 地底樹の雫、地底樹の根、地底樹の皮、地底樹の恩恵、などの地底樹素材。

 万化の心水、愛の血肉、生命鉱石、生命結晶、神結晶、三位一体の福音。

 黄金林檎、創世結晶、竜結晶、幻想結晶、幻想種の魂、世界の祝福。


 これらの素材を、開発済みの専用魔法陣で合成し、ラファエルを再誕させる。

 ラファエルは一応魔物の区分だ。
 
 だが、天使の迷宮で戦った時の印象から、敵対することはないと思われる。


 そして、その体に微調整を加え、創世神クラリアセレスを降臨させる器にする。

 言うならば、ラファエルの体を一時的に借り受けるようなものだ。


 ただ、クラリスを降臨させるためには幾つかの過程が必要である。

 その為に進めているのが、例のプロジェクトというやつである。

 最悪は世界を人質にとるというアレだ。


 その計画の核となるのは、クラリスに許しを与えること。

 決して自分を許さないクラリスに、自分自身を許させること。


「それじゃあ、始めるよ。」


 場所はグレンの工房で、そこを間借りして行われる。

 周囲にはアクア、ヴィオラ、エメラ、マリア、カレン、ナツメ、セーラ。

 それと、工房を貸してくれているグレン。


 一同が見守る中、クロトは材料が乗った巨大な魔法陣を起動させた。


 巨大魔法陣は光り輝き・・・












 ラファエルは守護者であった。

 初めは他の者と同じく、ただダンジョンを守る存在でしかなかった。


 だが、いつの間にか他の者とは違う感情を宿していた。

 すると、自分の在り方に疑問を覚えるようになった。


 何故自分は、尊き強者たちを蔑んでいるのか。

 何故自分は、自らを至高の存在と思っているのか。


 決してその自問への答えは出なかった。

 しかしそれでも、自分の在り方は自分で決めたいと思うようになった。


 ラファエルはその瞬間、目の前の視界が広くなったように錯覚した。

 自分は何をしたいのか。

 自分はどう生きるべきなのか。

 そんな命題を心の内に秘めた、ユニークモンスターへと進化した。


 ラファエルは自分自身では答えを出せず、他の者にも意見を求めた。

 しかし、同僚たる天使に問い掛けても、話にならない。

 自分たちは至高の存在で、愚かな人間の挑戦者たちに地獄を見せるのが本懐。

 そう盲目的に信じているのだ。


 ラファエルは思った。


(至高の存在だと言うのなら、何故、この場所に縛られているのですか・・・?)


 反逆ととられてもおかしくないので、口には出さなかったが。



 ミカエル、ウリエル、ガブリエルの三人・・・否、三体とともに長く過ごした。

 同僚たちが、時折訪れる挑戦者たちを蔑みつつ、殺す日々。

 中には手強い者も居たが、ミカエルの天使召喚で勝てない者は居なかった。


 一口に挑戦者といっても色々な者が居た。

 ミカエルたちの言う通り、愚かで傲慢な人間。

 ミカエルたちが言うのとは正反対の、強くて心優しい人間。


 本音では、後者の者たちを殺したくなどなかった。

 だが、ダンジョンの守護者であり魔物である以上は、全力で戦わねばならない。


 自分の死に繋がると分かっていながらも手を抜こうとしたことがあった。

 だがそのように考えると、決まって謎の瞳の幻影に自らの支配権を奪われる。

 何度も支配を打ち破ろうと挑戦し・・・やがて諦めた。

 支配を打ち破れるほどの信念と幸運が、彼女にはまだ無かったのだ。


 どれだけの時が流れたのか、無為に過ごしてきたラファエルには分からない。

 ある時、変わった挑戦者が現れた。

 いや、天使の迷宮に挑戦する者は大抵変わっているが、一際変わっていたのだ。

 彼女はその者たちに興味を持った。


 男性一人、女性三人という組み合わせ。

 それぞれ、黒、青、紫、銀という色が似合う者たちだった。

 その中でも、黒、そして青の両名は、ラファエルの視線を掴んで離さなかった。



 戦闘が始まり、ラファエルは青髪の少女と戦うことになった。

 直感で分かったことは、自分はこの者に勝てない、ということだった。

 相性と言えばそれまでだが、それ以上に自らの心が敗北を認めていた。


 かつてない程に、強く、優しく、屈強な信念を持つ存在。


 クロトとアクアリアという二人の存在に。

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