異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ

大中小

470 / 600

第二部「創世神降臨」編

訃報？

しおりを挟む

　クロトは詳しく調査を行い、アリスの安否を確認した。

　聞き取り調査によると、アリスは門が開いた時、直ぐ近くに居たそうだ。

　それらの情報と神の瞳に反応が無いことを合わせて考えると・・・。

　クロトの視線は自然と、ギルド跡地にある血だまりに向けられた。

　ギルドマスター代理のミリスやグランドマスターのガイアと話し合いが行われた。

　その結果、門の内部にギルドの精鋭部隊を送り込まれることが決まった。
　
　殆どクロトの提案そのままである。

「まさか、『宵呼びの嵐』が黄昏の門のことだったは・・・驚きです。」

「俺はクロトに話を聞いていたが・・・聞くのと見るのでは印象が違い過ぎる。」

　直ぐ近くにある黄昏の門と、結界内部にひしめく魔物たち。

　直に目にしたガイアとミリスは冷や汗ものだ。

　中には橙の主も混ざっており、外に出てこようものなら大惨事は確定的だ。

「しかし、門の固定とはまた・・・とんでもないことをなさるもので。」

「そうだな。それで、黄昏の門の脅威をなくせるのであれば・・・やはり侵攻か。」

　ギルドとしても、黄昏の門の被害については把握している。

　それを解決できる機会ともなれば、逃す訳にもいかないのだろう。

「では、方針はそれで決定で。メンバーは僕が選んでもよろしいですか？」

「うむ。丸投げのようで悪いが、SSランク冒険者のクロトに一任する。」

「いえ、元よりそのつもりでしたから。それでは、早速行動に移ります。」

　クロトはどことなく元気が無い状態で、そう会議を締めた。

「・・・と、アリスさんの安否は不明。それと、門の中への侵攻が決定したよ。」

「そう、ですの・・・。」

　マリアが代表で返事をしたが、どこか雰囲気が暗い。

「・・・そうか。」

　端的に返事をするヴィオラ。

　仲間内では最もアリスと関係が深かったため、目に見えて落ち込んでいる。

　周囲はそれに引きずられて暗い状態なのだ。

　クロトも残念に思っているのは間違いないが、言ってしまえばそれだけだ。

　戦闘や思考に悪影響は与えない。

　ヴィオラも、数時間あれば気持ちを切り替えるだろうと思われる。

　人死には闇ギルドにおいて日常茶飯事だったのだ。

　最近が幸せ過ぎたために、今はその高低差に参っているに過ぎない。

　アリスの生死は確定していない。

　だが、クロトやアクアの感知に引っ掛からずに逃げおおせたとは思えない。

　また、ギルドや町を放置して逃げる人でもない。

　今この場に居ないという事実が半ば答えであると、一同は考えている。

　クロトだけはとある理由で、まだ半信半疑なのだが。

　クロトはカレンの方をチラッと見る。

　その表情から何か知っていそうな気配を感じ取ったが、何も聞かない。

　カレンが話さない以上は、知らない方がいいことなのだと確信している故に。

　そのような理由から、アリスの生死については棚上げすることにした。

　そして、門の中に突入するメンバーを選ぶ。

「ま、全員で突入してしまえばいいよね？」

「適当過ぎですわっ！もう少し考えてくださいましっ！」

「じゃあ、何か代案は？」

「うっ・・・それは・・・！」

　考え込み始めるマリアだが、クロト以上の案など浮かびそうにない。

「マリア殿、素直に謝るでござるよ。」

「ナツメにだけは言われたくありませんわね。」

「うっ・・・！」

　心当たりがあったようで、ナツメはノックアウトされた。

「不満なら、マリア一人で行ってくるというのは？」

「謝りますからそれだけは許してくださいましっ！」

　マリアもノックアウトされた。

　言い方は適当であったが、状況からして全員突入が最適な方法だ。

　初めから勝負はついていたのだ。

　そういう訳で、その場に居る七人の突入は決まったのであった。

「あ、セーラも連れてこようかな・・・？」

「ん・・・？セーラ、は・・・エルフに里、から・・・出ない、よ・・・？」

「それなら大丈夫。複合結界がつい最近完成したから。」

　クロトの言う通り、世界樹と地底樹の複合結界は完成した。

　これでセーラも安心して里を出られるわけだ。

　万が一結界が破られるなら、セーラが居ても無意味に近いからである。

　なにせ、複合結界はクロトでさえ傷つけることができない出来栄えなのだ。

　竜のブレスが同時に幾つも直撃しても、痛くもかゆくもないであろう。

「じゃあ、セーラを迎えに行ってくるね。皆は準備をして待機で。」

　クロトはそう言うと、転移でエルフの里へ向かった。

　結界内への直接転移は、地底樹の巫女たるクロトの特権である。

しおりを挟む