異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

カレンと夜のお話

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 カレンが帰ってきた日の夜。

 クロトとカレンはクロトの部屋に居た。


「それで、どうして二人っきりになりたかったの?」

「それは、だな・・・幾つか聞きたいことと話したいことがあるんだ。」

「雰囲気からしてただの夜這い願いではないと思ったけど・・・。」


 クロトはカレンの意図をいまいち掴めていなかった。

 二人っきりということは、他の人には聞かれたくないということ。

 カレンが隠し事など珍しいし、纏う雰囲気により、クロトにも緊張が走る。


 カレンは意を決して話し始める。


「もしも、万が一、私がクロトと別れたいと言ったら、どうする・・・?」

「え、何?他に好きな人でもできたの?」

「違う!もしもの話だ!私はクロト一筋と誓っている!」


 カレンは慌てて誤解を解こうとした。


 クロトはクロトで、冗談めかして言ったのだが、内心は穏やかではない。

 心臓の鼓動が信じられないレベルで速くなり、冷や汗が流れそうだ。

 自分にそこまでの自信はないので、振られることは考えないではなかった。

 だが、実際に直面しそうになると、こうも動揺させられるのかと感じた。


「あ、うん・・・熱い告白をありがとう?」

「ッ!?・・・そ、それで、どうなのだ?」


 自らの発言を恥ずかしがりながらも、クロトに答えを求める。


 クロトは少し考え込んでから、答えを出した。


「そうだね・・・。もしそう言われたら、素直に別れるよ?」

「・・・・・・。」

「でも、内心はどうしようもないくらいに嫌だね。」


 そう微笑みながら告げたクロトは、今にも泣きそうに見える。


「そ、そうか・・・。」

「うん。そうだよ。カレンのことはこの上なく愛しているからこそ、ね。」


 カレンは自分がどれだけ愛されているかを理解して、頬を赤く染める。

 どことなく落ち着かなくなり、ベッドに腰掛けた状態でもぞもぞと動いている。


「カレン、トイレならあっちだよ?」

「そんなことは分かっているし、そうではない!」


 クロトのボケに対してカレンが即座に反応。

 完全にいつもの雰囲気に戻った二人から、思わず笑みがこぼれる。


 こういう何気ないひと時に幸せを感じるクロトとカレン。

 微妙に甘酸っぱい空気へと変化し、二人ともドキドキと胸が高鳴っていく。


「それで、どうしてそんなことを聞いたの?ひょっとして浮気でもした?」

「違うと言っているだろう!?私はクロト以外に抱かれるなど死んでも御免だ!」

「ん、そっか・・・。」


 何故かやたらと実感がこもっていそうな発言に驚くクロト。

 本当は更に揶揄うつもりだったようだが、思惑を外されてしまったみたいだ。


 そこで、ふと閃くものがあったクロトはカレンににじり寄る。


「な、なんだ・・・?どうしたクロト?」

「ん?なんでもないからじっとしてて?」

「え、あ、何を・・・ひゃうっ!?」


 突然クロトに体をまさぐられ、可愛い声を上げるカレン。

 クロトはドキリとさせながらも、手は止めない。


「クロト、何をっ、んあっ・・・!んんんっ・・・んん・・・!!」


 カレンは自分の喘ぎ声を耳にして顔を真っ赤にした。

 そして、聞くのを堪えられなくなり、手で口を塞いだのだ。

 しかし、漏れ聞こえる声が、余計に色っぽいものに。


 無意識的にクロトを止めるという選択肢は排除しているらしい。

 その理由は・・・言うまでもなかろう。


 口を塞ぎ上を向いて、愛撫ともとれるクロトの手の動きに耐えるカレン。

 クロトの手はカレンの敏感な部分にも伸びており、カレンの喘ぎ声も激しくなる。


 数分後、クロトは手を止めた。


「うーん・・・。」

「っ、はぁ、はぁ、はぁ・・・クロト?どうしたというのだ?」


 唸るクロトに息を荒くしたカレンが問いかける。

 その言葉尻からは、何故こんなことを、という意味以外にも感じ取れる。

 つまり、何故やめてしまったのか、というものだ。

 本人は気づいていないのだろうが。


 クロトは少々厳しい顔つきで、カレンに尋ねた。


「ねぇカレン、僕以外の誰かに体をまさぐられたなんてこと、ないよね?」

「ッッ・・・!?何故!?」


 カレンは心臓が止まったかと錯覚した。

 同時に体中から冷や汗が流れ出る。

 心当たりがあり過ぎたのだ。


「違う、違うんだ・・・!決して浮気などではないんだっ・・・!」

「ああ、それは分かってる。ちゃんと信頼してるから、そこは疑ってないよ?」

「っ?そ、そうなのか・・・。よかった・・・!」


 カレンはクロトに不貞を疑われていないと知り、この上なく安堵した。








「でもさ、どうしてまさぐられた相手が、男だと決めつけたの?」

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