異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
455 / 600
第二部「創世神降臨」編

光と謎の黒ローブ

しおりを挟む
 ゾディアに解放されたカレンの心は揺れていた。

 クロトにそんな姿を見られるくらいなら、いっそそうするべきではないか、と。


 表情は生気を失い、目は虚ろ。

 心はへし折れる一歩手前だ。


 だがそれでも、カレンの頭の中にはクロトが居る。

 そんな答えを、クロトが望まないことは分かる。


 思い浮かぶのは、クロトと過ごした日々。

 人生の中で、最高の幸せを味わったとき。


 いつまでも、クロトとともに、幸せでいたい。

 だから決して、膝を折りはしない。

 最期までクロトに相応しい女で居たいから。


 カレンは再び立ち上がり、剣を構えた。


「なっ・・・貴様、何のつもりだ!?」

「返答していなかったか?貴様に跪くなど、絶対に御免だ。」


 カレンは光の灯った瞳でゾディアを見据え、そう言った。

 既に涙は無く、体中から闘気がほとばしっている。


 ゾディアは完全に予想外だったようで、怒り狂った。

 カレンの心を折ったと確信していたのだろう。


「クソッ!クソがっ!何故我に屈服しない!?何故だあああああっ!!」

「分からないか?ならば教えてやろう。」


 二度と折れないだろう心を宿したカレンは、こう告げた。





「私の心はクロトに預けている。貴様にも、私自身にも、折れる訳が無い。」





<特殊条件10「失われない希望」を確認>

<特殊条件1~10を確認>

<全ての効果発動が保留中です>

<特殊条件11「最初にして最後の光」を確認>

<スキル「光魔法」を習得しました>





「ああああああああああああ!!!!」


 カレンの言葉にキレたゾディアは、「星神剣・超新星」を発動させた。


 どうにかする方法など、カレンには思いつかない。

 光魔法も習得したばかりで、今のままでは役立たずだろう。


 襲いくる膨大なエネルギーを前に、カレンは両目を閉じた。










「チェンジ・ザ・ワールド」


 突如その場に現れた謎の黒ローブ。

 如何なる方法によってか、超新星を消し去ってしまった。


「なっ!?貴様、どうやっ「デス・ザ・ワールド」て!?」


 黒ローブがゾディアの言葉を意に介さず、何かを呟いた。

 次の瞬間、ゾディアはその場に崩れ落ち、屍となった。


「イレイズ・ザ・ワールド」


 その言葉の後には何も起こらなかった。


 カレンは訳も分からず呆然としている。

 目の前の黒ローブが何者なのか分からないし、敵味方も不明。

 そもそも、性別すら分からない。


 だというのに、妙な安心感を覚えている自分を不思議に思う。


 黒ローブがカレンに近づくが、カレンは警戒しない。

 目の前の存在は間違いなく自分の味方だと、直感が言っているのだ。


 そして、黒ローブはカレンに話しかける。


「――――――――――――」

「なっ・・・!?」


 男の話をにわかには信じられないカレン。

 だが、嘘を吐いているようにも見えないし、嘘感知の魔道具も作動しない。

 黒ローブの言葉を信じるしかなかった。


「――――――――――――」

「っ・・・だが、それは・・・!」

「――――――――――――」

「・・・・・・そうか。・・・分かった。それだけでいいのだな?」

「―――」


 用が済んだのか、黒ローブはその場を去った。





「・・・私に、できるだろうか?」


 一人残されたカレンは、不安げにそう呟いたのだった。















 カレンが行方不明になってから十五日。

 梟の止まり木亭はちょっとした騒ぎになっていた。


「カレンさんが無事に帰ってきてくださって、ホッとしました。」

「心配を掛けたようで済まない。天の塔で少々苦戦してしまってな・・・」


 何事もなかったかのように帰ってきたカレンを、一同は出迎えた。


「天の塔・・・どこで苦戦したんですの?」

「恥ずかしながら、牡羊の試練で長々と眠ってしまった。」

「ん・・・。私、と・・・同じ、だね・・・?」

「自分から眠ったエメラとは違うと思うのだが・・・。」


 頬を掻いて恥ずかしそうにしているカレンにナツメが問いかけた。


「カレン殿は隕石を見なかったのでござるか?」

「それは見たな。ただ、クロトならどうとでもするのではないかと思ったのだ。」

「・・・それならば納得だ。」

「僕を何だと思ってるのかな・・・?」


 顔を引き攣らせたクロトだが、あまり正面から否定はできない。

 結局なんとかできているわけなので。


「ゴホン。ところでクロト。」

「ん?どうかしたの?」


 そう反応したクロトに、カレンは耳打ちした。


「その、だな・・・今日の夜、時間はあるだろうか・・・?」

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯
ファンタジー
目標である登録者3万人の夢を叶えた葭谷和昌こと活動名【カズマ】。 しかし次の日、身に覚えのない大炎上を経験してしまい、SNSと活動アカウントが大量の通報の後に削除されてしまう。 タイミング良くアルバイトもやめてしまい、完全に収入が途絶えてしまったことから探索者になることを決める。 数日間が経過し、とある都市伝説を友人から聞いて実践することに。 すると、聞いていた内容とは異なるものの、レアドロップ&レアスキルを手に入れてしまう! 手に入れたものを活かすため、一度は去った配信業界へと戻ることを決める。 そんな矢先、ダンジョンで狩りをしていると少女達の危機的状況を助け、しかも一部始終が配信されていてバズってしまう。 無名にまで落ちてしまったが、一躍時の人となり、その少女らとパーティを組むことになった。 和昌は次々と偉業を成し遂げ、底辺から最速で成り上がっていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。