異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

カレンに迫る脅威

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 クロトが隕石に気づいてすぐ、カレンも同じものに気づいていた。

 それは、以前と微妙に位置が変わった天の塔に入る直前のこと。


「ん?あれは一体・・・?」


 カレンは王都方面の上空で光る何かが落下しているのを発見した。

 直ちに天眼を使用して確認すると、隕石とクロトを見つけた。


「クロトが居るなら大丈夫だと思うが、一応王都に・・・っ、消えた!?」


 カレンはクロトと隕石が突如消えたことに驚愕し、思わず声を上げた。

 転移魔法では隕石を消せないため、訳が分からず呆然とした。

 クロトは神瞳転界については誰にも話していなかったのだ。


 世界からクロトが消えたのを目撃したカレンは、少なからず動揺した。

 そしてそれが、致命的な隙になってしまった。


「クロトが消えた・・・?転移でないならどうやってムグッ!?」


 突如体の自由が効かなくなったかと思えば、その直後に何かに口を塞がれた。

 剣を抜こうにも手は動かず、口を塞がれたため声も出せない。


 これが命を奪うような攻撃であったなら反応できただろう。

 また、ゾディアが真双子分身ネオジェミニ・アバターでなければ気づいていただろう。

 だが、敵の技は初見で対応できるほど甘くは無かった。


「んんんっ!!んー!!(やめろっ!離せっ!!)」

「クク・・・真天蠍災害ネオスコルピウス・ハザードは効いているようだな。身動きがとれまい。」

「(っ、この声は、ゾディアだと・・・!何故・・・!?)」


 カレンは己の後ろに居る存在に気づいたが、同時に疑問が湧き上がる。

 何故ゾディアが生きているのか。

 どうやってダンジョン外の自分に干渉したのか。


「分からないという顔をしているな?天の塔が移動直後だからできたことだ。」

「!?」


 片方の疑問は解決したが、なんのなぐさめにもならない。

 耳元で囁かれて、ゾディアに対して激しい嫌悪感を抱いた。


「クククッ・・・!さて、我が城へと連れて帰り、可愛がってやろう・・・!」

「むーっ!んんんんっ!?(可愛がる・・・まさか・・・!?やめろっ!?)」


 自分がゾディアに何をされるのか理解して、顔を青ざめさせる。

 久しく感じていなかった恐怖を感じた。

 必死に体を動かそうとするが、それは叶わなかった。


「無駄だ!空気に紛れて放った我の真天蠍災害を吸い込んでは、暫く動けまい!」

「(真天蠍災害・・・!?体の自由が効かないのはそのせいか!)」


 カレンは初めて聞く技名だったが、考察している余裕などない。

 話を聞きながらも打開策を探しているが、何も思いつかない。

 カレンは誰よりも強い剣術を誇るが、搦手には弱いのだ。


「本当は今すぐにでも可愛がってやりたいが、奴に気づかれても面倒なのでな。」

「(奴とはクロトのことか・・・!)」


 カレンはこの状況でもクロトがやってこないことに疑問を持っていた。

 先程クロトが行使した技が原因だと推測しているが、定かではない。

 だが、この窮地を自分の力で乗り越えなければならないことくらいは分かる。


「さて、諦めはついたか?我のものになるのだから、光栄に思うがいい!」

「んんんんっ!んーんんんっ!?(ふざけるな!誰が貴様などに・・・!)」

「フハハッ!気の強いことだ!貴様が跪いて我に許しを請う時が楽しみだ!」

「んー!!(クロトっ、済まない・・・!)」

「フハハハハハハハッ!!」


 ゾディアは高笑いをしながら、その場から消えた。

 カレンもゾディアに連れ去られ、その場には何も残らなかった。


 クロトが裏世界から戻ってくる少し前の話だ。










 カレンは天の塔50Fで、天井から伸びている特殊な鎖に拘束されていた。

 両腕は頭の上で拘束され、宙にぶら下がっている状態だ。

 流石に毒の効果は切れたが、動けないことに変わりはない。


 何故そんなことが可能なのか。

 それは、ゾディアが限定的にダンジョンのシステムへ介入したからである。

 神格を持つに至った為に、力技で介入が出来てしまったのだ。

 また、天の塔という特殊なダンジョンであったことも、それを後押しした。


「ふふ・・・気分はどうだ?我のカレンよ。」

「誰が貴様のものだ!私はクロト以外の誰のものでもない!」

「フン!この状況でそんな口をきけるとは・・・タフな精神だ。」


 ゾディアは顔をしかめながらも、余裕な態度は崩さない。


 一方のカレンは、内心穏やかではなかった。

 綺麗な銀の長髪を振り乱しながら、必死に拘束を解こうと動いている。

 だが、無駄な抵抗だと半ば気づいてしまっていた。


「まあよい。そろそろお楽しみといこうではないか・・・!」

「っ・・・!」


 ゾディアはカレンに近づいていく。

 カレンは・・・過去最大級の窮地に追い込まれた。

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