異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

諜報員とマリア

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 梟の止まり木亭へ向かうクロトたち三人。


「まさかエメラさんにそんなご趣味があったとは・・・。」

「ん・・・。恥ずか、しい・・・。」


 エメラは分身を使った行為のことを暴露され、珍しく顔が真っ赤だ。

 羞恥ポイントを踏み抜いたらしい。


「僕も、まさかエメラが、と思ったものだよ。」

「ん・・・。クロト、お願い・・・。もう、言わない、で・・・?」


 エメラがうるうるした瞳でクロトに懇願するが、明らかに逆効果だ。


「そうだね。エメラも嫌そうだし、一日二回までしか言わないよ。」

「そん、な・・・!?」


 エメラは抗議の目をしているが、クロトは意に介しない。


「まあ、奇特な趣味といえば、アクアもそうだけどね。」

「えっ・・・!?私にそんな趣味はありません、よ・・・?」


 アクアの主張は段々と弱弱しくなった。

 本当になかったかどうか、記憶を探っているようだ。


「ほら、精霊の泉で「あっ!?あれは違いますっ!」・・・ふーん?」


 アクアはクロトの言葉を意図的に途中で遮った。

 そのため、エメラは気になって仕方がないようだ。


「ん・・・。クロト、教えて・・・?」

「教えるのは構わないけど、その上目遣いでのお願いは、破壊力が高いね。」

「ん・・・?」


 エメラは無自覚だったらしい。

 恐ろしい女性である。

 クロトはドキリとさせられたが、平静を装って話し始める。


「実はね・・・。」

「クロトさんっ!その話はやめましょう!もう宿に着きますからっ!」

「ん・・・。アクア、静かに、ね・・・?」

「んんっ・・・!」


 再度クロトの言葉を遮ろうとしたアクアを、エメラが生成した分身が押さえる。

 後ろから羽交い絞めにして黙らせた。


「アクアはね、精霊の泉で・・・・・・ということなんだ。」

「ん・・・。意外と、大胆・・・。」

「んんーっ!」


 アクアは取り繕うとしているが、エメラに押さえられて何も言えない。

 筋力なら圧倒的にエメラが上なのだ。


 そうこうしているうちに、梟の止まり木亭へ到着。


「・・・何してるんですの、一体。」

「ん?決して百合という訳ではないみたいだよ?」

「そんなことは言われずとも分かってますわよ・・・。」


 マリアは頭を押さえて呆れている。


「あ、そういえば・・・スイレンへの連絡役、ありがとう、マリア。」

「どういたしまして。それくらいしか出来ませんもの、お安い御用ですわ。」

「流石は暇を持て余した自宅警備員だね。」

「それは今関係ありませんわよねっ!?」


 誇らしげな表情から一転して、怒りの表情になった。


「でも、そんなマリアも大好きだよ?」

「なっ、なっ・・・!?」


 今度は赤くなって口をパクパクさせている。

 ころころ変わる表情を見ているクロトは、実に楽しそうだ。


「マリアって可愛いよね。」

「・・・褒めても何も出ませんわよ?」


 嬉しそうにしながらも、どこか警戒している雰囲気だ。

 いい加減、上げて落とされるのにも慣れてきたのだろう。


「ねぇマリア、そんな態度をとっていたら嫌われちゃうよ?」

「サラは黙っていてくださいまし!クロトはここから落とすんですの!」

「・・・穿った見方をし過ぎじゃないかなぁ?クロトさん可哀そう・・・。」

「クロトはこの程度で嘆くほど弱くはありませんわよ。・・・えっ?」


 マリアがクロトに向き直ると、そこには悲壮な表情のクロトが居た。


「僕のこと、嫌いになってしまったのかな・・・?」

「なっ・・・そんな訳ありませんわ!」

「でも、褒めても喜んでくれないばかりか、疑いの目を向けられて・・・。」

「そ、それは・・・クロトが上げて落とすからですわ・・・!」


 マリアは反論しながらも、その言葉尻は弱弱しい。

 自分が如何に酷いことをしたのか理解したようだ。


 仮に自分がクロトの立場だったら・・・泣いてしまってもおかしくない。

 嫌いにならないでと縋りついていたかもしれない。

 そう思い至って顔が青ざめる。


「ク、クロト・・・!やっぱり私が悪かったですわ・・・!」

「マリア・・・大好きだよ。」

「わ、私も、大好き、ですわ・・・!」


 マリアは素直にクロトの言葉を受け入れ、素直に抱き締められた。


「・・・まあ、マリアの愛を疑ってなんていなかったけどね。」

「今回はそういうオチですのね・・・。」


 マリアはまた騙されたと思いつつも、嫌な気はしていなかった。


「あ、サラ。演技ありがとうね。アドリブにしてはいいセリフだったよ?」

「どういたしまして、会長様!」

「どういうことですのっ!?」


 ビシッと敬礼するサラを、マリアが問い詰める。


「えっと、会長から、マリアを揶揄う機会逃すべからず、という指示があるの。」

「実にナイスだったよ。流石はマリア専属諜報員だね。」

「はいっ!お褒め頂き感謝感激!」

「もう嫌ですの・・・。何なんですのこの二人・・・。」


 マリアはその場で項垂れてしまったのだった。

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