異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
437 / 600
第二部「創世神降臨」編

エピローグ22

しおりを挟む
 天の塔50F

 クロトたちが去った大部屋にて、一つの声が響いた。


蛇使輪廻アスクレピオズ・リーンカーネーション


 部屋の中心に黒い靄が発生し、数分後、一体の魔物が誕生した。


「くっ・・・まさか我が殺されるとは・・・!しかも散々嬲ってくれおって!」


 それは他でもない、ユニークモンスターである、星の主「ゾディア」だった。

 ユニークモンスターとなることで習得した蛇使輪廻。

 この技によって同じ個体として復活したのだ。

 本来であれば、別個体が誕生するはずなのだが。


「まあよい。奴にはいずれ復讐するとして、まずは天の塔を移動させねば。」


 天の塔は攻略されると移動することが可能となる。

 そして、ランダムにて移動した先で新たなダンジョンとなるのだ。

 現在その権限はゾディアが持っている。


「奴は勿論のこと、他の女たちも、いずれ死ぬまで犯してやるか。ククッ!!」


 どうやら、まだクロトのことを女だと思っているらしい。

 何とも気の毒な話だ・・・クロトが。


 また、クロトに目がいっていたが、アクアたちもかなりの美貌だと気づいた。

 ゾディアはそちらも我が物にしようと画策。

 その美しい体を汚す状況を想像し、醜悪な笑みを浮かべている。


 時を経れば、それだけゾディアは強くなる。

 だから、あながち無謀な話でもないのだろう。

 ただ、大事なことを理解していない。


 ゾディアはクロトを見た目通りの年ではないと推測した。

 あの年であれ程の強さなどおかしいというのが根拠だ。

 クロトが数年であれ程強くなったと知れば、尻尾を巻いて逃げ出しただろう。

 明らかに、自分が強くなるより速いペースで強くなるのだから。


 もっとも、まるで勝ち目がないという訳でもない。

 クロトにあそこまでダメージを与えた、初めての存在なのだから。



「くはははっ!我は不死身!奴らを手に入れるまで、何度でも蘇ってやろうぞ!」



 そんなゾディアの声が、天の塔50Fに響き渡ったのだった。










 クロトたちは天の塔を出て、永遠の眠り亭を訪れていた。


「ゴホン。それでは・・・天の塔攻略を祝して、乾杯です!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」


 アクアの合図で乾杯する一同。

 珍しいことではあるが、今回は特別。

 レベル10ダンジョンの攻略というのは偉業であり、世界初のことなのだから。

 もっとも、表に出ていないだけで、シロナは攻略していたのだが。


 なお、周囲に迷惑が掛からないように、ちゃんと隠蔽と遮断を使用している。


「ふぅ。しかし、ダンジョンボス戦は激戦だったな・・・。」

「そうですわね・・・。一歩間違えば危険でしたわ。」


 余裕を持って倒せたように感じられるかもしれないが、意外とギリギリだった。

 仮に、星十二天を一体でもクロトの方へ行かせていたら、かなり苦しかった。

 それだけクロトとゾディアの戦いは紙一重の攻防だったのだ。


 また、アクアの援護が遅れても、厳しいことになっていただろう。

 状況に応じて焦らず戦ったり、勝負を決めにいったり。

 その辺の判断をアクアが間違えていたら、大変なことになってかもしれない。


「そういえば、カレンは神水晶の能力を開花させたんだっけ?」

「ああ、一応な。かなり負担と消耗が多いから乱発はできないがな」

「限定的な時間操作でしたよね?カレンさんとの模擬戦が厳しくなりそうです。」


 アクアは瞳を閉じて上を向き、模擬戦の様子を思い浮かべている。

 以前より大人びたその表情は大層美しく、カレンはドキリとさせられた。

 二十歳も近づいて、美しさに磨きがかかり、色気も漂う。


 ドギマギしているカレンの耳元で、クロトが囁く。


「カレン、僕は女性同士の恋愛にも理解があるつもりだよ?」

「馬鹿を言うな・・・!私にそんなつもりは無い・・・!」


 顔を赤くして否定するカレン。

 クロトも揶揄っているだけなので、本気では言っていない。

 ただ、理解があるというのは真実だ。


「ん・・・。ヴィオラ、お疲れ、さま・・・。」

「・・・エメラもお疲れ様。」


 エメラとヴィオラが静かに乾杯している。

 この二人は意外と息が合うらしい。


「クロトさん、ご注文の品をお持ちしました!」

「ありがとうリンカ。そこに置いといて?」

「かしこまりました!」


 リンカが料理を持ってきた。


「リンカは働き者でござるなぁ・・・。」

「ナツメに自由な冒険者が合っているように、私にはこれが天職だからね」


 笑顔で寛ぐ一同を見て、リンカは本当に幸せそうだ。


 クロトはそんな様子を見ながら、幸せを噛み締めた。

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

召喚されたリビングメイルは女騎士のものでした

think
ファンタジー
ざっくり紹介 バトル! いちゃいちゃラブコメ! ちょっとむふふ! 真面目に紹介 召喚獣を繰り出し闘わせる闘技場が盛んな国。 そして召喚師を育てる学園に入学したカイ・グラン。 ある日念願の召喚の儀式をクラスですることになった。 皆が、高ランクの召喚獣を選択していくなか、カイの召喚から出て来たのは リビングメイルだった。 薄汚れた女性用の鎧で、ランクもDという微妙なものだったので契約をせずに、聖霊界に戻そうとしたが マモリタイ、コンドコソ、オネガイ という言葉が聞こえた。 カイは迷ったが契約をする。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。