異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

エピローグ22

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 天の塔50F

 クロトたちが去った大部屋にて、一つの声が響いた。


蛇使輪廻アスクレピオズ・リーンカーネーション


 部屋の中心に黒い靄が発生し、数分後、一体の魔物が誕生した。


「くっ・・・まさか我が殺されるとは・・・!しかも散々嬲ってくれおって!」


 それは他でもない、ユニークモンスターである、星の主「ゾディア」だった。

 ユニークモンスターとなることで習得した蛇使輪廻。

 この技によって同じ個体として復活したのだ。

 本来であれば、別個体が誕生するはずなのだが。


「まあよい。奴にはいずれ復讐するとして、まずは天の塔を移動させねば。」


 天の塔は攻略されると移動することが可能となる。

 そして、ランダムにて移動した先で新たなダンジョンとなるのだ。

 現在その権限はゾディアが持っている。


「奴は勿論のこと、他の女たちも、いずれ死ぬまで犯してやるか。ククッ!!」


 どうやら、まだクロトのことを女だと思っているらしい。

 何とも気の毒な話だ・・・クロトが。


 また、クロトに目がいっていたが、アクアたちもかなりの美貌だと気づいた。

 ゾディアはそちらも我が物にしようと画策。

 その美しい体を汚す状況を想像し、醜悪な笑みを浮かべている。


 時を経れば、それだけゾディアは強くなる。

 だから、あながち無謀な話でもないのだろう。

 ただ、大事なことを理解していない。


 ゾディアはクロトを見た目通りの年ではないと推測した。

 あの年であれ程の強さなどおかしいというのが根拠だ。

 クロトが数年であれ程強くなったと知れば、尻尾を巻いて逃げ出しただろう。

 明らかに、自分が強くなるより速いペースで強くなるのだから。


 もっとも、まるで勝ち目がないという訳でもない。

 クロトにあそこまでダメージを与えた、初めての存在なのだから。



「くはははっ!我は不死身!奴らを手に入れるまで、何度でも蘇ってやろうぞ!」



 そんなゾディアの声が、天の塔50Fに響き渡ったのだった。










 クロトたちは天の塔を出て、永遠の眠り亭を訪れていた。


「ゴホン。それでは・・・天の塔攻略を祝して、乾杯です!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」


 アクアの合図で乾杯する一同。

 珍しいことではあるが、今回は特別。

 レベル10ダンジョンの攻略というのは偉業であり、世界初のことなのだから。

 もっとも、表に出ていないだけで、シロナは攻略していたのだが。


 なお、周囲に迷惑が掛からないように、ちゃんと隠蔽と遮断を使用している。


「ふぅ。しかし、ダンジョンボス戦は激戦だったな・・・。」

「そうですわね・・・。一歩間違えば危険でしたわ。」


 余裕を持って倒せたように感じられるかもしれないが、意外とギリギリだった。

 仮に、星十二天を一体でもクロトの方へ行かせていたら、かなり苦しかった。

 それだけクロトとゾディアの戦いは紙一重の攻防だったのだ。


 また、アクアの援護が遅れても、厳しいことになっていただろう。

 状況に応じて焦らず戦ったり、勝負を決めにいったり。

 その辺の判断をアクアが間違えていたら、大変なことになってかもしれない。


「そういえば、カレンは神水晶の能力を開花させたんだっけ?」

「ああ、一応な。かなり負担と消耗が多いから乱発はできないがな」

「限定的な時間操作でしたよね?カレンさんとの模擬戦が厳しくなりそうです。」


 アクアは瞳を閉じて上を向き、模擬戦の様子を思い浮かべている。

 以前より大人びたその表情は大層美しく、カレンはドキリとさせられた。

 二十歳も近づいて、美しさに磨きがかかり、色気も漂う。


 ドギマギしているカレンの耳元で、クロトが囁く。


「カレン、僕は女性同士の恋愛にも理解があるつもりだよ?」

「馬鹿を言うな・・・!私にそんなつもりは無い・・・!」


 顔を赤くして否定するカレン。

 クロトも揶揄っているだけなので、本気では言っていない。

 ただ、理解があるというのは真実だ。


「ん・・・。ヴィオラ、お疲れ、さま・・・。」

「・・・エメラもお疲れ様。」


 エメラとヴィオラが静かに乾杯している。

 この二人は意外と息が合うらしい。


「クロトさん、ご注文の品をお持ちしました!」

「ありがとうリンカ。そこに置いといて?」

「かしこまりました!」


 リンカが料理を持ってきた。


「リンカは働き者でござるなぁ・・・。」

「ナツメに自由な冒険者が合っているように、私にはこれが天職だからね」


 笑顔で寛ぐ一同を見て、リンカは本当に幸せそうだ。


 クロトはそんな様子を見ながら、幸せを噛み締めた。

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