異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

リオンの性別

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 リオンから感謝を受け取ったクロトは、本題に入った。


「それで、今日は暇なんだよね。」

「本当に珍しい。それで、遊びに来てくれたんだ・・・。」

「まあね。リオンの顔が最初の方に浮かんだから。」

「そ、そうなんだ・・・!」


 とても嬉しそうに照れ笑いを浮かべるリオンは、どうしようもなく可愛い。

 これで、三番目くらいに浮かんだと言ったら、どんな反応をするのやら。


「リオン、女になってみる気はないかい?」

「ないよ!何故そんなことをしなければならないのかな!?」

「リオンがステータス的にはギリギリ男なのが微妙に許せないんだよね。」

「どこからツッコんでいいのか分からない!まずギリギリって何さ!」


 クロトは猛るリオンを尻目に収納から一つのアーティファクトを取り出した。


「リオン、これは一日三時間だけ性別を変えることができる首飾りだよ。」

「・・・・・・それが何か?」

「・・・いくらで買うんだい?」

「いかにも僕がそれを欲しがってるみたいな言い方をしないでくれっ!」


 真っ向から否定するリオンだが、クロトは更に責める。


「これはね、改良するのに国が傾くほどの金額を使ったんだよ?」

「作ってくれなんて頼んでないけど!?」

「それは嘘。以前性別を変えたいか聞いたときに、迷ってたよね?」

「それはそうだけど・・・!」


 暗に、そういう意味で言ったのではないと主張するリオン。


「さあリオン。今こそ男になるべきだよ。」

「その言い方だと僕が元々女みたいに聞こえるからやめてくれないか!」


 クロトは、男らしく覚悟を決めろという意味で言ったのかもしれないが。

 途轍もなく紛らわしい。


「なんなら、半永続的に性別を変える方もあるよ?」

「っ!?・・・どういうものか聞いても?」


 何故かリオンは興味津々で、クロトに尋ねた。


「ん?ずっと男性でいたいと思うなら、身体的には男性で居られる物だよ。」

「本当かい!?」

「生憎、女性専用だから、リオンには必要ないけれどね。」

「あっ・・・!」


 クロトはさっさと収納に戻してしまったので、リオンは不満そうだ。


「そんな顔をされても、男のリオンには無用の長物だからね?」

「っ、それは分かっているんだが・・・。」


 葛藤しているリオンを見て、確信を持ったクロト。

 そろそろこの問題に蹴りをつけるべきなのかと思案する。

 親友の秘密を暴くなど、進んでやりたいことではない。

 だが、このままではリオンが不憫だろう。


 クロトは覚悟を決めた。


「リオン、ちょっとその腕輪を解析してもいいかな?」

「え?これはただの腕輪だから、別に構わないよ・・・?」


 緊張した面持ちで何でもない事のように許可した。

 だが、クロトが言いたいのはそういうことではない。


「違うよ。そう隠蔽された部分を突破して解析していいか、ということだよ?」

「ッ!?」


 リオンは激しく動揺した。

 まさか、そんなことすら見抜かれているとは、思いもしなかったようだ。

 少々クロトの力を舐め過ぎていたらしい。

 まあ、普段のクロトからは、そういう凄みを感じないのも確かだが。


「それは駄目だっ!」


 そう言いながらも、既に手遅れであることは理解しているリオン。

 クロトが自分の秘密に気づいているだろうことも。

 だがそれでも、認める訳にはいかないのだ。

 自分はこの国の第一王子なのだから、と。


「ご両親は、リオンが自由に生きてくれればそれでいいと言ってたよ?」

「それは、僕が嫌なんだ・・・!」


 一夫多妻が推奨されており、この世界が男性優位というのは分かるだろう。

 王位に就くのが女性だと、間違いなく様々な問題が生まれる。

 国が上手く立ち行かなくなることも、歴史が証明している。


 ここまで来れば、誰にでも分かるだろう。


 リオンは・・・女性として生まれたのだ。


 そして、リオン以外の子はできなかった。


「僕は・・・!」



 リオンは、もうどうとでもなれとばかりに、感情を爆発させた。


 自分に襲い掛かる理不尽。

 国の為に、腕輪を使い、男として過ごす苦痛。

 性別のせいで上手く馴染めず、孤立する日々。

 親友であるクロトを騙していた罪悪感。


 自分の未来と国の未来。

 この二つはリオンの中で、いつも天秤に掛けられていた。


 前者をとるのは、恵まれた環境に生まれておきながら、あまりにも身勝手。

 だがそれでも、国の為に感情を殺し切ることができるほど、リオンは強くない。

 そのため、女として生きたいと思ったことは、一度や二度ではない。


 だからこそ、天秤は揺れ続ける。

 クロトのように自由気ままに生きる人間と出会ってからは、より一層。

 やがて天秤は、前者に傾き始めた。


 そして、今の状況に至る。


 リオンは半ば自棄になって、もうお終いだと思いつつ、全てを話した。

 二度と天秤が揺れることはなく、自分の身勝手を責めた。


 クロトは、リオンが静かになった頃合いを見計らい、こう告げた。






「ところでリオン。口元に食べかすが付いてるよ?」

「ねぇ今シリアスな場面だったはずなんだけど僕の勘違いかな!?」


 なんというシリアスブレイカー。

 リオンは自責の念を一時的に忘れて、クロトに詰め寄る。


「なんでクロト君は大事なところでっ・・・・・・えっ?」

「・・・・・・。」


 リオンは気づいたら、ベッドに押し倒されていた。

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