異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

天秤の試練

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「二択クイズ?それが天秤の試練なの?」

「ん・・・。二手に、分かれて・・・クイズ、解く・・・。」

「・・・両方正解する必要がある。」

「ううううっ!一問も正解できなかったでござる・・・!」


 三人の説明を聞いて、ようやく全体像がつかめたクロト。

 説明の仕方に難がある二人と、泣いていて使い物にならないナツメ。

 ここまでの所要時間は約30分。


「組み分けはどうしたの?」

「ん・・・。私が、一人・・・。」

「ナツメとヴィオラが二人、か・・・。」


 ヴィオラは微妙に頬を赤くした。

 自分の頭の悪さが露呈してしまったのが恥ずかしいのだろう。


 詳しく聞くと、エメラの正解率が八割ほどで、ヴィオラとナツメが三割。

 二人合わせてエメラに届かないとなれば、それは恥ずかしいだろう。


「・・・不正解の半分は、全てナツメが悪い。」

「うううっ・・・あれは絶対に右だと思ったのでござる・・・!」

「・・・違うと言っても突っ走るのは、頭が残念な証拠。」

「ヴィオラ殿が酷いでござるっ!」


 ヴィオラが容赦なく毒を吐いた。

 クロトはどういう問題でどういう選択をしたのかを尋ねた。


「・・・パンはパンでも、食べられないパンは何?」

「・・・選択肢は?」


 いきなりツッコミどころ満載だが、今はスルーを決め込んだクロト。


「・・・右の道が、フライパン。左の道が、腐ったパン。」

「間違いなく左だね。フライパンは、パンという前提を満たしてない。」


 なんとも、引っ掛けの要素が強そうなクイズであると思った。

 つまり、理にかなわない答えにはならないということ。


 クロトは、自分が挑むことは決めたが、他のメンバーをどうするか悩んだ。

 クロトの恋人たち(戦闘員)の頭の良さは、割と明らかになっている。


 アクア≒エメラ>マリア>ヴィオラ≒カレン>>>越えられない壁>>>ナツメ



「まあ、大体こんな感じだよね。」

「この越えられない壁とはなんでござるかっ!?」


 クロトはナツメをスルーして話を続ける。


「一口に頭がいいと言っても色々でね・・・。」

「そうですわね。純粋な知識と発想力による違いもありますわよね。」

「他にも、戦闘時の判断力や思考速度も考慮しなくてはなりませんよね。」


 ヴィオラは知識や発想力で劣るが、思考速度はクロトに次いで速い。

 カレンはも発想力や思考速度で劣るが、知識と戦闘時の判断は高い。

 アクアは平均的で穴が無く、どれも一流だが、一部でヴィオラやカレンに劣る。

 エメラはアクアより平均が落ちる分、判断力が極めて高い。


 早い話が、総合的な差は無いということだ。ナツメ以外は。


 ナツメはどの要素もそこそこなのだが、時々やらかすせいで台無しなのだ。


「マリアは、長く生きただけあって、どれも優秀だよね。」

「その余計な一言を言わせるのは、この口ですの!?」

「そんなことより、越えられない壁の説明がほしいでござる!」

「そんなこと!?」


 中々にカオスな状況になってきたので、アクアがクロトに最終決定を求める。


「クロトさん、どうなさいますか・・・?」

「うーん・・・人数を半分に割るのは、必須なんだよね?」

「ん・・・。五人、なら・・・三人と、二人に・・・。」


 つまり、クロト一人と残り全員という手段は使えないということ。


「なら、行くのは四人で、僕とエメラ、アクアとヴィオラかな?」


 エメラを選んだのは、割とそのままの理由と、数合わせ。

 ヴィオラは、思考速度を使ってアクアのサポート。

 マリアとナツメはお留守番だ。


「ナツメはともかく、私が選ばれなかった理由はなんですの?」

「マリアは・・・問題に揶揄われそうで不安だから、かな。」

「・・・納得したくはありませんけど、納得しましたわ。」


 引っ掛け問題に騙されて入口に戻され、猛る自分の姿を思い浮かべたようだ。


「拙者はそんなにダメでござるか・・・。」


 ナツメは落ち込んでしまった。

 彼女もバカという訳ではないし、頼りになる前衛なのだが。


 流石に可哀そうになったクロトは、先の事も考慮し、こう決断した。


「・・・よし、六人全員で行こうか。」

「「えっ?」」


 完全にお留守番モードだったマリアとナツメは、驚いた。


「ただし、勝手な行動は厳禁だからね?」

「分かりましたわ!」

「分かったでござる!」


 大変威勢のいい返事だが、まるで親と子どもである。


(何か、連れていくと妙な事態になる気がする・・・。)


 そう思ったクロトは、その妙な事態を、決して悪いものではないと判断。

 それで最終決定としたのであった。

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