異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

アクアVSクロト人形完全版

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 シロナ人形に戦闘力は無い。

 クロトが、戦うシロナのイメージなど持っていなかったからだ。


 だがそれでも、切り札を行使する。

 そうしなければ勝てないのは明らかなのだ。


 アクアはクロトとシロナ人形の戦いを度々窺っていた。

 その内容は、異様の一言。


(クロトさんの攻撃が、当たっていない・・・?)


 そう、両者の攻防は、一撃も掠らない状態が続いている。

 もっとも、シロナ人形に攻撃の意志など無いようだが。


「わっ!?危ない危ない・・・!今、躓いてなかったらやられてたよ・・・。」

「分かり切ったことを・・・。それがシロナの天運だろう?」

「まあ、その通りなんだけどねっ!」


 アクアは、なんだか楽しそうだな、という感想を抱いたのだった。





(余所見している余裕は無さそうですね。相手はクロトさんなのですから。)


 アクアは自分が任された敵に向き直る。


「水神魔法・鏡花水月!」

「神天十六夜連閃・龍絶」


 クロト人形の攻撃は、再びすり抜けた。

 鏡花水月は、認識をズラす魔法であり、見抜くのは至難の業。

 相手の感知を誤魔化すことが可能なのだ。


「神天十六夜連閃・逆龍」

「水神魔法・明鏡止水!」

「!?」


 アクアの姿が突如消失し、剣技を中止するクロト人形。

 明鏡止水は、隠密者に近い効果があり、相手の感知から完全に逃れることが可能。

 ただし、物質の透過が出来ないのは隠密者と違う。


 存在というものは、多かれ少なかれ、世界に波紋を立てる。

 皆、その波紋を気配などとして捉える。


 波紋を操るが故に、波紋を立てずに存在することが可能になったアクア。

 その存在を察することは出来ない。


「水神魔法・神氷超絶波!」

「純白の翼神、神毒の翼壁」


 アクアの魔法は翼による防御を貫通し、クロト人形に襲い掛かる。

 クロト人形はバラバラになった。


「・・・っ、魔法存在!?水神魔法・神氷超絶壁!」

「ゴッドアイ・アクセラレーション、神天龍十六夜連閃・二極」


 ギリギリ感知の展開と防御が間に合った。

 クロト人形の三十二連撃はアクアの生成した壁を破壊。

 そこで隙が生まれてしまう前に退避した。


 アクアはそれを確認しながら冷や汗を掻いた。


(クロトさん相手に出し惜しみなんて、甘かったですね・・・。)


 切り札を切るタイミングを計りながら、戦闘を続ける。


「水神魔法・水神の抱擁!」


 アクアの拘束魔法を軽々と回避するクロト人形。

 本命の攻撃は、次の魔法。


「水神魔法・水龍の咆哮!」


 クロト人形が回避した魔法が水龍を形取り、水圧を衝撃波に変換して放った。


「GOGAAAAAAAA!!」

「天神法術・天落世界」


 クロト人形は衝撃波の攻撃を逸らすことに成功。

 戦いは膠着状態に。


 光輪やら闇輪やらは互いに相殺されて効果が無いも同然。

 能力強化系アイテムも殆ど無意味。

 元々あった手札で戦うしかなく、それでいて互角。


 ほぼクロトと同等であるクロト人形相手に互角であるアクアは、完全な人外だ。


(神界突破は使えないようですし、隠密神も不可。これでも勝てませんか。)


 早くクロトの援護に向かいたいところだが、焦りは厳禁。

 そう思って、もう一度戦略を組み立て直すアクア。


「水神魔法・神津波!」

「神天一閃・龍絶」


 アクアの津波を回避し、背後に現れたクロト人形が剣技を放った。


(やはりそうきましたか。実に合理的です。以前までの私なら、ですが。)


 クロト人形の弱点は、アクアの新しい能力について全容を知らない事。

 アクアは切り札となる魔法を発動した。


「水神魔法・水神顕現!」


 その魔法が発動した直後、クロトの剣がアクアの腕を切断した。






「・・・ようやく捕まえましたよ?」


 アクアの切断された腕が、クロトをガッチリと捕まえていた。


 水神顕現は、自らの肉体の全てを、一時的に神水へ変換するというもの。

 水であるが故に、切り離された腕も操ることが出来る。

 回避主体のクロトを捕まえるためには、身を切らせるしかなかったのだ。


 痛覚は残っているが、気にするそぶりも無い。

 アクアはクロト人形に体のあちこちを切り裂かれながらも、抱き着いて捕獲。


(同じ姿でも抱き着くのは嫌悪感がありますが、仕方ありません・・・。)


 そこは戦闘だからと割り切って我慢するアクア。


「水神魔法・神氷超絶波!」

「!」


 アクアは予め感知していた魔法存在も同時に攻撃し、全てを葬った。

 今度は入れ替わりも許さないという意思表示だ。

 その後で、自分の体を繋ぎ直して、水神顕現を解除。


「ふぅ・・・。やはり、消耗が大きいですね・・・。」


 水神顕現は、MPを全て消費しなければならない。

 また、消費するMPも一定値を超えている必要がある。

 MPが多いほど効果が強まるというおまけつき。


 アクアは魔法にMPを使わないので、そこまでの負担という訳でもないのだが。







「では、クロトさんの援護に・・・・・・えっ?」


 アクアは間抜けな声を上げて、ソレを見た。




 背後から自分の心臓部を貫通している、クロト人形の剣を。

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