異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

百合?

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 クロトは断腸の思いで天の塔の破壊を断念した。


 だが、それはそれとして、一つ気になる事が。

 先程の話で、男性だけではなく女性にも詰め寄られたとのこと。

 そして、対応に困ってしまったという空気があった。


 それはつまり・・・。


「・・・二人とも、同性愛の気があるの?」

「ん・・・!?そんな、の・・・ない、よ・・・!?」


 エメラは驚愕しながら否定し、アクアは激しく首を振っている。

 アクアが首を振る方向は勿論、横方向だが。


「アクアはともかく、エメラは少し怪しいかも・・・?」

「ん・・・!?どう、して・・・?」

「ほら、インフィアと一緒に居ると楽しそうで百合百合しいから。」

「ん・・・!それ、は・・・違う、から・・・!」


 インフィアの事は好きだが、それ以上の感情はないエメラ。

 まあ、クロトも本気で疑っている訳ではないのだが。


「ま、どちらでもいいんだけどね?見ていて眼福だし。」

「ん・・・!?クロトっ・・・めっ・・・!」


 揶揄われたことに気づいて、エメラはクロトを睨んだのだった。





 これは後日の事だが、インフィがエメラに詰め寄った。


「エメラさん!エメラさんが女性もいけるって本当ですかっ!?」

「ん・・・!?誰、が・・・そんな、こと・・・言った、の・・・!?」

「夢の中にクロトさんが出てきて教えてくれましたっ!」


 エメラはクロトのことを疑ったが、流石に夢に入ることなど出来ないと思った。

 故に、その可能性を切り捨て、他の可能性を模索する。


 だが、そうしているうちに、インフィはエメラに迫る。


「私、私っ・・・エメラお姉様がそうだったなんて知らなくてっ・・・!」

「んんっ・・・!?インフィ、落ち着いて・・・!」

「実は私、エメラお姉様の事がっ・・・!」

「ん・・・!?待っ・・・インフィ、だめっ・・・!」


 エメラはインフィに危うい気配を感じ、押しとどめようとする。

 だが、何故か体が動かず、それもできない。


「エメラお姉様・・・!!」

「ん・・・!インフィ、やめ、て・・・!」


 インフィは聞く耳を持たず、エメラの唇に己の唇を近づけていく。


 そして、二人の唇が・・・・・・










 エメラはベッドから跳ね起きた。



「・・・ハッ!?・・・夢、だった・・・?」


 珍しく眠そうな瞳が見開かれており、状況の整理を行っている。

 そして、やはり夢だったと結論付けた。


 一安心して隣を見ると、そこにはクロトが眠っている。

 二人とも全裸で、ベッドは乱れていて、そこで何があったのかは一目瞭然。


 アクアと模擬戦をして、何とか勝ち取った権利だ。


 エメラはクロトに抱き着いて、再び眠りについた。


 なお、夢の事を現実に引きずることはしなかった。

 インフィとの関係も今まで通り。


 それが良い事なのかは、誰にも分からない。


 はてさて、何故エメラは、そんな夢を見たのだろうか。










 翌朝のこと。


「ん・・・!クロトっ・・・カプリコーンの角笛、を・・・使った、の・・・!?」

「大正解。忘れた頃に使うと効果的だと思ったんだけど、バレてしまったね。」


 エメラは珍しく怒りをあらわにした。


「ん・・・!クロト・・・反省、してっ・・・!」

「えっと・・・何をそんなに怒っているの?そんなに不愉快な夢だった?」

「それ、は・・・!」


 言われてみれば、愉快でこそ無いが、不愉快という訳でもないことに気づいた。


「ん・・・。それでも・・・あれは、だめ・・・!」

「初めて使う訳だし、「好きな人に詰め寄られる」としか決めてなかったよ?」

「ん・・・!?」


 エメラはクロトを睨みつけるが、表情から本気で言っていると理解させられた。

 それはつまり、自分がインフィを好きということで・・・。


「・・・・・・。」


 エメラは自分の心が分からなくなり、自問した。

 自分はインフィをそういう対象として見ていたのか、と。


 だがやはり、それはあり得ないと思い、疑問が湧いた。

 クロトに正直に相談してみると・・・。


「なるほどね・・・。「好き」の定義が上手く行かなかったのかも。」


 という答えが返ってきて、エメラは、なるほど、と納得した。


 エメラはインフィを恋愛的な意味では好きではない。

 だが、妹分としては大好きなので、混同されたのだろう。


「予想していたより使いこなすのが難しそうだね・・・。」

「ん・・・。好き、は・・・色々、だから、ね・・・。」

「僕としては、僕自身がエメラの夢に出ることを期待してたんだけどな・・・。」


 クロトは微妙に残念そうだ。








「ところで、エメラから聞いた夢の状況を、絵にしてもいいかな?」

「ん・・・!?それは、だめっ・・・!クロトっ・・・反省、してっ・・・!」

「インフィあたりに高く売れそうな予感が・・・。」

「クロトっ、めっ・・・!」


 クロトを叱って睨むエメラは、とても可愛かった。

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