異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
388 / 600
第二部「創世神降臨」編

アイシアのやけ酒

しおりを挟む
 クロトは用事があってシンクレア王国の王都に来ていた。

 用事を済ませた後、王都の中をぶらついていると、マップに反応が。


(これは・・・アイシア?レモニア領からこっちの方に来ていたんだね。)


 それについては、別段おかしなことでもない。


(でも、元気が無いみたいだね。どうかしたのかな?)


 アイシアも立派な社員なので、相談に乗るくらいはしても良いと思うクロト。

 アイシアの居る酒場に場所に近づいていくのだった。









 とある酒場にて、アイシアはやけ酒を飲んでいた。



(ディアナ先輩の馬鹿っ!もうあんな人なんて知りません!)


 大変珍しいことだが、果たして何があったのか。

 実は、深いようでそれほど深くない訳がある。


 ディアナとアイシアは、王都にて一時的に別行動をとることに。

 アイシアは目的を果たしてディアナとの合流を図った。


 問題があったのはここから。

 待ち合わせの場所と時間は決めていたのに、待てど暮らせどディアナが来ない。
 

 何かあったのかもしれないと思い、ディアナを探し始めたアイシア。

 フルーリエの町で自分が攫われた時のことを思い出し、顔が青ざめた。

 流石に王都でそんなことは起こらないという判断だったのだが・・・。


 情けない話だが、預かった通信機でクロトに連絡しようかと考え始めた頃。

 ディアナは無事に見つかった。


 だが・・・。


(年の近い女の人と話し込んでいただけなんて・・・!)


 それだけなら別に良いのだ。

 心配を掛けた事を軽く叱って、再会を喜べばいい。


 しかし、そうは問屋がおろさなかった。


「あっ、アイシア、明日は一日この人と一緒に町を回ることになったのよ。」

「・・・そうですか。明日、ですか。」


 普段であれば問題は無かった。

 だが、明日は特別な日で、ディアナとアイシアが初めて会った日。

 一日中一緒にお祝いをする予定だったのだ。


 アイシアは適当に返答してから、その場を去った。

 そして今、酒場でやけ酒を飲んでいる、と。


「うぅ・・・。ディアナ先輩なんて・・・。」


 恐らく、翌日にはちゃんと切り替えていることだろう。

 アイシアはしっかり者なのだ。


 しかし、今回は入った酒場が悪かった。


(あれ・・・?体が動かない・・・?)


 体の自由がきかないことに、今更ながら気づいたアイシア。

 いくら酔っているからといって、これはおかしい。


 そう思っていると、酒場の従業員と思しき者たちが、アイシアを捕まえた。


(えっ!?これ、誘拐・・・いや、体が目的!?酒場もグル!?)


 男たちのいやらしい笑みから、そのように推測したアイシア。

 アイシアは成人を迎え、体も育ってきたので、欲望の対象として見られたのだ。


 裏通りにあるこの酒場は、犯罪の片棒を担ぐ場所だった。

 アイシアの酒に薬を盛って、体の自由を奪う。

 後はベッドでお楽しみということだ。


 普段なら、こんな怪しい酒場に入りはしないのだが・・・。

 ディアナの一件で落ち込んでいて、判断力が鈍っていたようだ。


(先輩の悪口なんて言ったから、罰が当たったのかな・・・?)


 アイシアはもはや諦めムードに。

 若干、自暴自棄の色も混ざっているかもしれない。

 だがそこで、聞き流せない言葉が。


「おい、コイツには仲の良い相方が居るらしいぜ?偉くいい女だとか。」

「くくっ、だったらコイツを餌にしておびき出そうぜ?」

「そうしようぜ?コイツの目の前で犯してやったら面白そうだな!」


(そんなっ!?ディアナ先輩が危ないっ!)


 自分の事よりディアナを心配する辺り、相当好きなのだろう。

 また、ディアナだったらアイシアの解放を条件に為されるがままになる。

 長い付き合いなので、それくらいは分かっていた。


(っ!体が動かないっ!どうすれば・・・・・・そうだ、通信機が!)


 本当に情けない話だが、クロトに連絡すれば、助けてはくれるだろう。

 もちろん、相応の対価は必要になるだろうが。


 しかし、そう上手くはいかない。

 アイシアの体をまさぐっていた男が、通信機を発見。


「おい・・・コイツこんなもん持ってやがったぜ・・・?」

「あ?・・・これ、ミカゲ財閥のマークか!?」

「まさか、関係者か!?だったらやべぇんじゃ!?」


 このままなら助かるかもしれない。

 そんな希望はすぐに打ち砕かれた。


「あ?だったらもう手遅れだ。どうせなら最後に良い思いをさせてもらおうぜ!」

「乗った。俺もそうさせてもらうわ。」

「俺は降りるぜ?幾ら美人でも、割に合わねぇ。」


 反対派の男たちは引き上げ、数名の男が残った。


「さっさと部屋に運ぼうぜ?」

「おう、時間もねぇしな。」


 アイシアはディアナを助けられないと思い、絶望した。













「はいはい、そこまでにしてもらおうかな。」


 アイシアの様子がおかしいことに気づいたクロトが、その場に現れた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』  女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。