異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

エピローグ20

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「ナツメ、僕の事はクロトでいいからね?」

「しかし、クロト殿と呼ぶ癖がついていて、なかなか難しいでござるよ・・・。」


 クロトはナツメの呼び方を修正しようとしたが、難しそうだ。


「無理しなくとも、その内自然に呼べるようになるだろうから、大丈夫だよ。」

「そうだと良いのでござるが・・・。」


 ナツメは不安そうだが、クロトの言う通り、問題は無いだろう。

 今は、もっと大きな問題があるのだ。


「そ、それで、この状況は一体・・・?」

「うん?何か、他の部屋が一杯だからって、ツキメさんが・・・。」

「どんな状況でござるか・・・。明らかに嘘でござるよ・・・?」


 クロトもそんなことは分かっている。


「でも、渡りに船だったから、乗ることにしたんだよね。」

「それで、この状況でござるか・・・。」


 そう、現在二人は、同じ部屋の同じベッドで横になっている。

 色々とおかしな点はあるが、クロトは全てスルーしている。


「まあ、流石にここで手を出す度胸は無いけどね。」

「そ、そうでござるか・・・。」


 どことなく残念そうなナツメが、そんな声を漏らした。


 それもそのはず。

 片思いを始めてから、優に半年以上経っているのだ。

 クロトとそういうことをしたいという願望も、募りに募っている。

 そういう妄想をしたことも、一度や二度では無い。


 クロトは夜着姿のナツメを、ギュッと抱き締めて、囁く。


「ナツメ、好きだよ。」

「っ!?」


 ナツメの背筋に甘い痺れが走り、幸福感が体中を満たす。


 手を出すつもりは無いが、これくらいは良いかなと思い、ナツメに口づける。


 実はクロト、この前のデートの日から、ずっとナツメにキスをしたかった。

 ナツメの唇に目が行かないようにするのは、中々精神を削られていた。


「っ、ん・・・ふあっ・・・んぅっ・・・!」


 ずっと待ち望んだキスをされ、為されるがままになるナツメ。

 我慢した時間が長いだけに、快感もひとしおなのかもしれない。


 クロトはナツメの反応に興奮しつつも、理性の手綱は放さない。

 今日はキスだけに留めると決めていたので、ギリギリではあるが堪えている。


 これが、あらかじめ決めていなかったら、とても我慢など出来なかっただろう。

 それだけ、喘ぐナツメはクロトの理性を激しく刺激しているのだ。


 クロトはキスを終えて、ナツメを優しく抱きしめる。


「クロト殿・・・ここでやめるのはズルいでござるよっ・・・!」

「ごめんね?流石にご両親がこちらを伺っている状況ではね・・・?」

「それは、それはぁ・・・!」


 ナツメの瞳は潤み、頬は上気している。

 これまでずっと我慢してきた欲望が溢れ出し、抑えが効かない状態だ。


 ナツメも、今の状況で結ばれるのは恥ずかし過ぎると思っている。

 だがそれでも、情欲の炎は消えてくれない。


 クロトは少しでもナツメの欲望を満たすために、再びキス。


「んんっ、んあっ・・・!もっと・・・!ん、んんんっ・・・!」


 再びのキスで、ナツメの理性は完全に溶けてしまった。

 クロトが欲しくて欲しくて、それだけしか考えられない状態に。


 クロトの行動は逆効果であった。


「ごめんね、ナツメ。また明日。」

「えっ・・・?」


 クロトはナツメを魔法陣で眠らせた。

 恐らく、今のままでは眠れないだろうから。


 そして自分にも、同じ魔法陣を使用した。

 昂り過ぎて眠れないのは、クロトも同じということだ。



 こうして、二人は結ばれることなく、朝を迎えたのだった。











 一晩超えたことで、ナツメは再び欲望を抑え込むことに成功していた。


(クロト殿には感謝でござるな。父上と母上に見られたままなど・・・っ!)


 朝食中に想像してしまい、思わずシュウヤを睨むナツメ。

 シュウヤもやましさからか、目を逸らすしか出来なかった。






「では、娘を頼むぞ。」

「はい。必ず幸せにしてみせます。」


 クロトはシュウヤに、そう誓った。


「父上、母上・・・今までお世話になったでござるっ・・・!」

「ナツメ・・・!」


 ツキメはナツメを抱き締めて、涙を流した。

 シュウヤは目を閉じて、涙を堪えているようだ。




 かくして、ナツメとクロトの関係は、大きな変化を迎えたのだった。

 






「さて、少々デートしてから帰ろうかな?」

「そうするでござる!」


 ナツメはクロトの提案を聞いて、嬉しそうに笑みを浮かべ、そう答えた。









「じゃあ、行き先はナツメが腰を抜かしたカシュマの寺院で。」

「そのことはもう忘れて欲しいでござるっ・・・!!」


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