異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

ナツメの実家へ挨拶

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「やはり、何度帰って来てもいいものでござるなぁ・・・。」

「その辺は、その人がどんな環境で育ったかにもよるんじゃないかな?」


 ナツメの実家、トウドウ家を前に、そんな会話をするナツメとクロト。


「ところで、拙者の実家にどういった用件でござるか?」

「・・・え?まだ分かって無いの?」

「へっ?」


 クロトの呆れ顔での発言に、間抜けな声を漏らすナツメ。


「まあ、すぐに分かるから、気にしなくていいよ。」

「そう言われると、ますます気になるでござるよっ!」

「気にしたところで、ナツメの運命は変わらないから。」

「運命!?そんな深刻な話だったでござるか!?」


 あわあわしているナツメの手を引いて、クロトは家の敷地内へ。

 普通は逆だと思うのだが、クロトに常識は通用しないのだ。

 玄関で出迎えられ、家の中にお邪魔したのであった。










「本日は、大切な話があって参りました。」

「ふむ、そうか。して、大事な話とは?」


 クロトとナツメは、ナツメの両親、シュウヤとツキメの二人と向かい合っていた。


「クロト殿っ!そろそろ教えて欲しいでござるよっ!この緊張感は一体!?」


 ナツメは視線を彷徨わせながら、クロトに問い掛ける。

 先程から部屋の中に異様な空気が漂っており、気が気ではないようだ。


「父上っ、何故そんなにソワソワしてるでござるかっ!」

「ソワソワなどしておらん。」

「誰がどう見てもソワソワしているでござるよ!?」


 ナツメの言う通り、シュウヤは落ち着きなく体を揺すっている。


「そして母上っ、何故そんなにニコニコしているでござるかっ!」

「あら、だって愛娘の運命が決まるんだもの、仕方ないと思わない?」

「何の話か全く分からないでござるぅぅ!?」


 そろそろナツメが限界のようだ。

 ついでにシュウヤの方も限界が近い。

 クロトも焦らしていた訳では無いのだが。


「大事な話というのは他でもない、娘さんの今後についてです。」

「うむ。それで・・・どうなのだ?」

「はい、心は決まりました。」


 それは、どちらに決まったのか。

 肝心な部分がまるで語られていないと視線で告げるシュウヤ。

 クロトは意を決して、決定的な言葉を発する。









「どうか、娘さんを・・・ナツメを僕にください・・・!」

「っ、よかろう!不束な娘だが、どうかよろしく頼むぞ!」

「はい・・・父上。」


 かくして、両親の許可を得て、ナツメはクロトの恋人に。







「待つでござる!どどどどういうことでござろうかっ!?」


 当事者なのに置いてきぼりを喰らったナツメは、慌てて割って入った。


「ナツメ、まだ分からないの?」

「流石に分かったでござるよ!しかし、こ、これはっ・・・!」


 ナツメが動揺するのもおかしなことではない。

 突然降って沸いた状況に、どう反応するべきか分からなくても仕方あるまい。


「ナツメ、僕が相手では嫌なの?」

「何っ!ナツメ、正気かっ!?」

「そんな事は言って無いでござる!突然過ぎてよく分からないのでござるよっ!」


 ナツメとしても、クロトの婚約者となることに異存はない。

 そんなもの、あるはずが無い。

 ずっと欲しくて仕方が無かった立場なのだから。


 だがしかし、幸福感と驚愕が入り混じって、混乱しているのだ。

 その口元が嬉しそうに緩んでいるのが良い証拠だ。


 クロトは悪戯が過ぎたかなと思い、改めて告白することに。


「ナツメ、僕は君の事が好きだ。」

「・・・!」

「頼りないところもあるけれど、それを含めて、好きだ。」


 クロトは、何だかんだでナツメが好きなのだと、気づかされた。

 残念なところも、愛しく思えてしまうくらいには。


「僕と、結婚を前提に付き合ってください。」

「っ!」


 改めて告白されたナツメは、クロトの真剣な表情にドキドキさせられた。

 胸が高鳴り、この上ない幸福感に包まれる。


「拙者、ずっとこの時を待ち望んでいたでござる・・・!」


 そして、涙を流しながら、告白の返事を返した。


「拙者でよければ、喜んで!大好きでござるよ、クロト殿っ!」




 そうしてナツメは、クロトの恋人となったのであった。











「シュウヤさん、邪魔してはいけませんよ?」

「し、しかしだな、あんな風に抱き合っているのは如何なものかと・・・!」

「恋人なんですから、当然ですよ。」

「だが、私たちの前で堂々とし過ぎでは無いか?」

「そういう人なんですよ、ナツメのお婿さんは。」


 恋人となって抱き合う二人の近くでは、こんな会話があった。

 シュウヤも祝福したいようだが、娘を持った親心というのも複雑なようだ。

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