異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

エルフの里でのひと時

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「クロトお兄ちゃん!」

「ん?ああ、ユーリス、久しぶりだね?」


 クロトが散歩していると、ユーリスが駆け寄って来た。

 前回、里の子どもの中で一番最初に話しかけてきた子なので、とても印象深い。

 相変わらず元気一杯の様子だ。


「久しぶりだから遊んでっ!」

「ん、いいよ。何して遊ぼうかな・・・?」

「肩車で一緒にお散歩!」


 どうやら、肩車の楽しさが忘れられなかったらしい。


「よし、それじゃあ早速・・・。」

「わぁあああっ!」


 クロトが肩車をしてあげると、ユーリスはとても興奮した声を上げた。

 肩車も好きだが、クロトと一緒に散歩することも好きなのだろう。


 途中ですれ違う大人のエルフたちに軽く会釈されながら、あっちこっち散歩する。

 会釈されるのは、クロトが敬われているからに他ならない。


 前回は客人というだけだったが、今回は里の英雄。

 絶望的なまでに強い竜を次々仕留めていったクロトは、それだけで尊敬に値する。

 おまけに、崇拝対象たるセーラを伴侶としたため、敬われない方がおかしいのだ。


 本当にこんなのばっかりだな、と思いつつ、珍しく嫌な気はしていないクロト。

 エルフの里が、それだけ好きだということだろう。


 ただ、本来は里の為では無くセーラのため。

 ゆえに、ムズムズした感覚は存在する。


 子どもたちは、尊敬の色もあるが、それ以上に遊びたい盛り。

 殆どむずがゆい物を感じなくてすむため、接しやすい。


「クロトお兄ちゃん、あそこに行きたい!」


 ユーリスが指さしたのは、里の中央広場。


「ん?あそこにいるのはマリアとカレンか。ん、行ってみよう。」





 クロトが中央広場へ向かうと、そこはカオスだった。


「マリアー!年増ってなにー?」

「なっ!?どこでそんな言葉を覚えたんですのっ!?」

「ユフィが言ってたー!」

「ユフィ!どういうことですのっ!?」


 子どもになんてことを教えているのかと問いただす。


「ユフィもよく分からずに、お父さんに意味を聞いたのです・・・。」

「あっ、なるほど・・・。疑って悪かったですわ・・・。」


 迷いなく疑ってしまったことを恥じるマリア。


「それで、クロトは何て答えたんですの?」

「年増は、マリアのことなのです!」

「クロトっ!何処に居ますのっ!」

「ここに居るよ?少し誤解があるようなんだけど・・・。」


 クロトは、そんな言い方をした覚えは無かったので、否定する。


「でしたら、どういうことなんですの?」

「どうもこうも、年齢を重ねた人としか言わなかったんだけど・・・。」

「ユフィっ!?」

「バレたのですっ!」


 ユフィは慌てて逃げ出した。

 子供に見えて、大人な部分も多々あるということだろう。

 いや、あの誤魔化し方は、子供らしいとも言えるか。


「ねぇ、ユフィ?ちょっとお話ししましょうか?」

「お母さんなのですっ!?」


 ユフィはセーラに連行されていった。

 教育的指導が行われるようだ。


 クロトとマリアは、そろって黙祷を捧げた。





「マリアー!私も肩車してー!」

「それは良いですが、何故さっきから呼び捨てなんですの・・・?」


 ユーリスを羨ましく思った女の子が、マリアに肩車を求めた。

 エルフの子は、女の子でも活発だ。


 マリアは、何故また呼び捨てになっているのか気になる様子。

 前回ちゃんと訂正させたはずなのに、と。


「クロトお兄ちゃんが、そう呼んだらいいものくれるんだってー!」

「クロトっ!!」


 マリアが隣を見るも、そこに居たのはクロトと入れ替わった魔法存在。

 怒りのやり場を失い、魔法存在に愚痴を言うマリアであった。


 魔法存在が同情の視線を向けていた気がするが、きっと気のせいだろう。

 仲間を見るような目でマリアを見ているのも、気のせいに違いない。




 クロトとユーリスは、少し離れた場所に居たカレンの元へ。


「ふぅ・・・。皆元気いっぱいだな・・・。」

「カレン、楽しそうだね?」

「ん、まあな・・・。何だか、とっても癒されるのだ・・・。」

「ああ・・・その気持ちには同意させて貰うよ。」


 エルフの子たちは本当に純粋ないい子に育っている。

 外に出すのが心配なくらいには。


「あ、クロトお兄さん!久しぶりです!」

「久しぶり、リーリア。」


 カレンと一緒に居たのは、女の子のリーリア。

 クロトのお嫁さん宣言をした子なので、忘れられるはずもないだろう。


 少しだけ大人っぽくなっているが、まだまだ子どもの範疇だ。


「あの、これっ!贈り物ですっ!」

「え?あっ・・・。」


 リーリアはクロトに何かを渡すと、走り去ってしまった。

 流石に恥ずかしくて、その場には居られなかったのだろう。


 カレンはニヤニヤしながらクロトに尋ねる。


「クロト、何を貰ったんだ?」

「・・・ただの花だね。値段にすると、一ゴールドの価値も無い。」

「クロト、その言い方は・・・。」


 リーリアの想いを踏み躙る言葉に、顔をしかめて、クロトを諭そうとする。

 だが、言葉には続きが。









「けれど、僕はこの花を、僕の全財産よりも大事にするだろうね・・・。」



 クロトはとても優しい笑みを浮かべて、そう断言した。

 どちらかを選べと言われたら、間違いなく花を選ぶだろう。

 クロトにとって、お金はただの手段なのだ。



 カレンは、疑ってしまったことを恥じて、クロトに謝罪した。

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