異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

報告の前に寄り道

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 クロトたちは依頼の報告をしにいく前に、ある場所へ向かっていた。

 それは、スカーレットの町から少し行った所にある、森。

 スカーレットでは、黒き森、と呼ばれていた場所である。


 小さな森で、祠くらいしか無いらしく、殆どの人間が知らない場所。

 ご老人から情報を入手するまで、全くのノーマークであった。


 インフィアはただの案内役だったため、一先ず先に帰還。

 残りのメンバーで黒き森へ行くことに。




「それで、何故その森へ行くことにしたんですの?」

「ん?なんか・・・山羊の匂いがするから、かな?」

「・・・黄道の迷宮ですの?」

「何で分かったの・・・?いや、分かるかもしれないとは思ったけど・・・。」


 驚異の察しの良さで、目的を理解したマリアに、驚愕するクロト。

 マリアは胸を張って、返答した。


「クロトの変態的な過程を辿る思考など分からないですので、ただの勘ですわ!」

「マリア、しばらくイチャつくのを禁止で。」

「そんなっ!?」


 微妙に機嫌が悪くなったクロトは、マリアに罰を与えたのであった。





「期間はどれくらいですの・・・?」

「五分くらいで。」

「予想よりずっと短かったですわっ!?」


 数日間もイチャつくのを禁止するなど、クロトの方が耐えられないので。


 ちなみにエメラは、ずっと黙したままだ。

 写真の一件を未だに引きずっているらしい。








「さて、本当に小さな森だったね。」

「というより、森ですらありませんわよ?」

「ん・・・。これ、は・・・違う、かも・・・。」


 クロトたちの周囲には、数百本の木があるだけなので、確かに森とは言えない。

 そして、中央の祠の裏には、転移魔法陣が存在した。


「よし、これで十二か所目だね。」

「長かったようで、あっという間でしたわね・・・。」


 最初の転移魔法陣を見つけてから、まだ一年も経っていない。

 短期間で全て見つけられたのは、クロトが持つ諜報力の賜物だろう。


 クロトたちはアイコンタクトで意志を確認し合うと、転移魔法陣に乗った。







 転移した先にあったのは、黄道の迷宮。

 レリーフと紋章は、山羊。


 星十二天「山羊」も、例によって、かなり特殊なスキルを保持していた。

 レアスキル「山羊の摂理」と、レアスキル「悪夢の宴」。


 簡単に言ってしまえば、悪夢を実体化させるというコンボが発生する。

 また、その悪夢というのが、最も戦いたくない敵として顕現する。
 

 クロトたち三人の一番戦いたくない敵というのは・・・。


「まあ、そうなりますわよね・・・。」

「ん・・・。予想通り、だね・・・?」


 目の前には、クロトの姿をしたナイトメアドールが居た。

 それも、二体。


「ねぇ、僕の相手はどこなの?」

「・・・グルルルル?」


 山羊の方も、切り札を使用して人数分のナイトメアドールを生成した。

 だが、クロトの前には、黒い塊のまま動かないナイトメアドール。

 何故か、クロトに怯えているように見える。


 山羊が不思議そうな鳴き声を上げるのも、無理なからぬことだろう。


 そうこうしている間に、マリアとエメラの戦闘が始まった。







 クロトは暇なので、ナイトメアドールを一撃で倒し、解体させてもらった。

 夢幻の残滓と変幻水を入手。


(ん?これはいけるかも・・・?)


 天感がそのように囁いたため、収納からアイテムを取り出していく。

 命の水、快癒の湯、生命の真透水、絶対零度の生天水、絶対灰燼の生天煙。

 そこに、変幻結晶、迷彩結晶、夢幻の残滓、変幻水を投入。

 容器の中でかき混ぜる。


(・・・後は、これとこれと、これも。)


 神秘結晶、幻想結晶、雷天雲狩りをして手に入れた、絶対曇天の生天雲を投入。


(・・・これで足りないとなると、これかな?)


 魂魄結晶、渦潮結晶、減衰結晶、地底樹の雫と恩恵、世界樹の雫と恩恵を投入。

 最後に循環結晶と、地獄の神水も投入し、かき混ぜていく。


 数分後、七変化する液体が完成した。

 解析結果は、万化の心水。

 ラファエルの器作りに必要な材料の一つだ。


 これで残るは、三位一体の福音と橙結晶、名称不明素材一つとなった。


 完成した万化の心水を、大事に収納へ仕舞うクロト。

 そして、待ちぼうけを喰らっていた山羊へ向き直る。


「それで、お前に戦闘能力はあるのかな?」

「グルルルルッ!」


 そんなものは無い!とばかりに、激しく首を横に振る山羊であったとさ。






 その後、山羊頭の敵を脅して、情報を入手したクロト。

 自分が死ねば、ナイトメアドールも消えることを聞き出した。


「エメラとマリアが成長できるから、勝負がつくまで見逃してあげるね?」

「グルルルゥ・・・。」


 クロトに肩を叩かれて、情けない声を上げる山羊であった。

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