異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

星十二天「天秤」

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 ナツメを送り届けたクロトは、夜遅くながら、気晴らしに出かけた。

 場所は、旧ブルータル領で新たに発見された、黄道の迷宮。



 以前エメラと訪れたブルースの町から行くのが近い、ブルーライトの町へ。

 






 ブルーライトの町は、青い星が綺麗に見える町で、村以上町未満といった規模。

 黄道の迷宮への転移魔法陣は、空中に存在する透明な足場に存在した。


(足場がある事自体に誰も気づいて居ないのでは、情報も出てこないよね。)


 黄道の迷宮への転移魔法陣は、本当に分かり辛い場所にある。

 足場に乗って空を見上げると、青い星の位置が左右対称に見えた。


(残りは天秤と山羊。これは天秤が濃厚かな・・・?)


 そんな推測をしつつ、転移魔法陣へ飛び乗った。






 予想通り、黄道の迷宮にあったレリーフと紋章は、天秤。


 星十二天「天秤」が相手になる訳だ。

 能力は・・・どこかで見たことのある内容だ。


 レアスキル「天秤の摂理」と、レアスキル「バランスブレイカー」。


 天秤の摂理は、自分と相手の能力値を交換することが可能。

 切り札として、MPを全て消費し、受けたダメージを敵に反射できる。


 バランスブレイカーは、数秒間だけ、己の能力値を好きなだけ増減させられる。

 ただし、一日一回までで、上限は99999である。


 何とも、判断に困るスキル構成である。

 能力値の交換は厄介だが、両者の能力値平均は1000も変わらない。

 あまり意味は無いように思える。

 切り札の方も、クロトのHPを削り切るには至らないだろう。


 バランスブレーカーは、その数秒間だけ最強になれるのは間違いない。

 だが、どれだけ強くても、数秒なら余裕で耐えられる。



 クロトは天秤の能力について考察を進めていき、一つの結論に辿り着いた。


(・・・なるほどね。この手が使えるなら、一対一の戦いでは無敵かも。)


 天秤が使い得る最高の戦術を見透かしたクロト。

 それに対する対策を確認した後で、ボス部屋へ入るのであった。







 クロトがボス部屋に入った直後、天秤がバランスブレーカーを発動。

 己の能力値を、HP1をのこしてゼロにした。

 そして更に、天秤の摂理を発動。

 己とクロトの能力値を入れ替えた。


 結果、天秤の能力値クロトと同じになり、クロトはHP1のみになった。

 これが、天秤が使用する戦術。

 バランスブレーカーのデメリットを上手く誤魔化した、いい手だ。


 だがしかし、そんな一手をクロトが読んでいないはずは無く、既に対策済み。


「リュノア!」

「キュオッ!」


 クロトの隠蔽を受けていたリュノア。

 返事をした後、「漆黒魔法・影転移」を用いて天秤の背後へ。


「キュオオオオッ!」


 空間属性を纏わせた竜爪スキルによる一撃を、天秤に叩き込んだ。

 技に名前を付けるなら、「絶竜爪」といったところだろうか。


 攻撃を喰らった天秤は、一撃で絶命してしまった。

 なにせ、天秤の能力値は、平均100になっているのだから。


 そう、クロトは己の能力値を、意図的に下げていたのだ。

 悪魔の迷宮で入手したアーティファクトの力を使って。



 名称・ハーフオーブ

 自らの能力値を任意の時間、半分にすることが可能。

 その際、能力値を半分にした時間分だけ、獲得経験値が僅かに上昇する。

 使用制限回数は五回。



 クロトはこれを使って、五回に渡って自らの能力値を半分にした。

 経験値の増加分は本当に僅かなものだが、そこはどうでもいい。


 天秤は、平均能力値が100になっていたクロトと能力値を交換してしまった。

 それゆえに、瞬殺されてしまったのである。


 仮にその戦術で来なくとも、指定した時間は十秒にも満たないので問題ない。

 普通にリュノアが敵を抑えてくれる。


 複製したハーフオーブもあるので、どの段階で天秤がその行動に出ても良い。

 強いて言うなら、最初にそうしてくれると、決着が早まって助かるのだが。



 そんな訳で、天秤は呆気なく葬られたのであった。









「キュゥゥゥ・・・。」

「リュノア?・・・進化が始まったんだね。」


 リュノアが辛そうにしていたので、クロトはすぐに進化だと分かった。


 クロトはリュノアを見守りながら、じっとして待つことに。






 今回は進化を終えるまで、前回までよりも、相当長い時間が掛かった。

 苦しそうにしながらも、少しずつ変化していくリュノアの体。




 リュノアはその最中、思考していた。


 自分が目指すべき姿について。

 また、どうなれば、一番己の能力を生かせるのか。


 体の変化は、リュノアの意志を反映していく。





 数時間は経過したであろう頃、ようやく進化が完了したのだった。

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