異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

島の中央へ

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「おはよう、アクア。」

「お、おはようございます、クロトさんむっ!?」


 クロトは目覚めたばかりのアクアにキスをした。

 アクアは驚いていたが、満更でもなさそうである。

 すぐにクロトの唇を受け入れた。


「んっ・・・はぁ、はぁ・・・。朝から、はぁ、激しい、ですね・・・。」

「そうだね。まだ昨日の余韻が残っているせいかな?」


 クロトは、再び薄れそうになる理性を、がっちりと繋ぎ止める。


 昨日の行為では、完全に理性が無くなっていた。

 あの状態に慣れ切ってしまっては、いけないような予感がしているクロト。

 そんなクロトに、理性の再確認は必須行為だったのだろう。


(最近、理性を手放すことが増えてきているね。このままだと・・・。)


 自分はきっと、アクアたち恋人を貪るだけの毎日になってしまう。

 そんな未来は、とても魅力的であるが、絶対にその道へ進んではいけない。

 そんなものは、自分が望んだ幸せではない。


 締めるべきところはキッチリ締めていこうと誓ったクロトであった。




 それはさておき。


「ところでアクア、本当に耳が弱いんだね?」

「忘れてくださいっ!」


 一生忘れないだろうことは間違いない。

 クロトはその事実を、アクアに伝える。


「僕は、アクアの耳の弱さを、一生忘れないと誓うよ。」

「そんなことを誓わないでくださいっ!?」


 顔を両手で覆い、しばらく悶えた後、ベッドに潜り込んだアクアであった。







 探索を再開した二人は、島をぐるっと一周して、元の場所へ戻って来た。

 ここまで、所要時間は4日ほど。

 ダイダル海域の探索を始めてからは、約一か月になる。

 島のマッピングは、全体の半分くらいが終わっただろうか。


「順調だね。ここから渦巻き状に進んで中央を目指すということで良いかな?」

「問題は無いと思いますが、時間が掛かるかもしれませんね。」


 途中で遭遇するかもしれない魔物のことを思い浮かべて、そう言ったアクア。


「まあ、楽しみつつも慎重に行こうか。」

「了解です。」


 そうして、島の中央を目指すことになった。








 その後三日間、思いの外、探索は順調に進んだ。

 途中で未見の天種と何度か遭遇したが、問題なし。




 未見だったのは三種類。


 一種類目が、青い猿である、超古代深海猿。

 なぜ猿が海の中に居るのやら。

 どういうことなのか、まるで分からない。

 木の上から集団で襲撃をかけて来たのだが、看破していたために返り討ち。


 特筆すべきスキルは無く、精々、深海魔法くらいか。


 二種類目が、途中にあった湖に居た、超古代深海鯨。

 何故そんなものが湖に居るのか。

 普通は海に居るべき生物では無いだろうか。


 特筆すべきスキルは、レアスキル「潮流魔法」。

 潮を操る魔法なのだが、湖では無用の長物。

 配置を間違えてないだろうかと疑問に思ったクロトであった。

 潮流結晶を解体で入手した。




 そして三種類目は、現在戦闘真っ最中である、超古代深海イソギンチャク。

 レベル98の魔物で、レアスキル「無限増殖」と「瞬間再生」を保持。



「水神魔法・神氷絶波!」

「サポートありがとう、アクア!」


 この敵の特徴は、本体が中央におり、その周囲が触手状のものに覆われている事。

 全容を把握できない程に大量である触手により、本体の正確な場所が分からない。


 見た目は他と同じ触手であるため、アクアの感知では判別不可。

 クロトの神の瞳では、イソギンチャク全体が一つの光点で表示されるため不可。


 ただの触手はどれだけ切り落としても無駄。

 一瞬で再生する特徴であるため、本体を狙う必要がある。

 本体も他と同じ触手なのではないかと推測したのも、つい今しがただ。


 アクアが全て薙ぎ払うのも無理。

 全ての触手を切断する前に、元に戻ってしまう。

 本体は、のらりくらりとかわし続けているようだ。


 だが、敵が優勢だったのも、ついさっきまで。

 クロトが触手の動きに法則性を見つけ、本体が数秒後に存在する位置を計算。

 アクアに伝えて、タイミングを合わせて道を開いて貰った。


 傍目には適当に動いている様にしか見えない触手。

 一体どこに法則性があるというのか。


 クロト曰く、触手に意志があることは早々に気づいた。

 後は、その意志を逆に辿って推測すればいいだけ、とのこと。


 これっぽっちも意味が分からない。

 本当に、どんな頭の構造をしているのだろうか。



 クロトはイソギンチャクの本体である触手に接近。


「神天十六夜連閃・龍絶!」

「!?」


 一瞬で姿を消したクロトが、背後から触手を斬りつける。

 倒しきれないことは分かっていたので、そこから更に剣技を繋げる。


「神天十六夜連閃・逆龍!」

「!?!?!?」


 計三十二連撃を喰らったイソギンチャクは、その命を散らしたのであった。





 戦闘終了後、アクアとクロトの視線は、一点を向いていた。


 それは、イソギンチャクで隠れていて見えなかったモノ。






 地面に横たわる、青く巨大な門、である。

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