322 / 600
第二部「創世神降臨」編
深海に生える木
しおりを挟む
翌日、二人は新たな天種の方へ歩みを進めている。
酷く揶揄われたというのに、アクアの機嫌は悪くなっていない。
熱い夜を過ごした後では、文句など消えてしまったようだ。
そして、未見の天種というのが・・・。
「・・・木、だね。」
「木、ですか・・・?」
神の瞳で確認できたのは、十メートルほどの木なのであった。
「一応、区分は魔物みたいだけど、戦闘能力は無い、ことも無い、のかな?」
「それはまた、特殊な・・・。魔物の情報を詳しく聞かせてくださいますか?」
名称は、超古代深海木。
レベル90で能力値はHPと魔力、防御力に極振り。
レアスキル「永続再生」で、時間は掛かるが、仮死状態からでも復活可能。
レアスキル「仮死操作」で、任意で己を仮死状態にでき、その間は攻撃無効。
レアスキル「不屈の木」で、一日に一度、どんな攻撃にもHP1で耐える。
「問題は、仮死状態で倒しても、素材が手に入らないこと、だよね。」
「それは大問題ですね。」
仮死操作の説明に、ご丁寧に書かれているのだ。
仮死状態時に倒しても、経験値と素材、共に手に入らない、と。
素材の収集を半ば趣味にしているクロトからすれば、酷い嫌がらせだ。
「ですが、私の魔法で瞬殺してしまえばいいのでは・・・?」
「その場合、不屈の木が厄介なんだよね。」
「と、言いますと?」
「初撃を確実に耐えて、次の攻撃までに仮死状態になるだろうと推測される。」
「・・・なるほど、そういうことでしたか。」
アクアも理解したようだ。
自分の魔法速度でも、仮死になる方が、完全に絶命させるよりも早いことを。
生物というのは、例え首を落とされても、少しだけ生きながらえるもの。
だが、どのみち死ぬ結果に変わりはないし、行動も不能。
さしたる問題は無いのが普通である。
しかし、超古代深海木は違う。
一瞬のタイムラグさえあれば、仮死状態になれる。
死を免れることができるのだ。
そして、仮死状態になった木は、倒しても何も得られない。
「嫌がらせのような木なのですね・・・。」
「全くもってその通り。」
クロトは先程から考えているが、良い対策が思いつかない。
これほど悩むのは、深海に来てから始めてかもしれないな、と思った。
ポイントは一つだけ。
最後まで敵に、攻撃されていると気づかれることなく、倒しきること。
(・・・いや、どうすれば良いのかな、これ。)
そんな方法、あるはずが無い。
忍び寄って一瞬で細切れにしても駄目だろう。
水圧で押しつぶしても駄目。
魔法で爆破しても駄目。
(停滞魔法陣・・・意識までは停滞させられないし・・・うん?)
そこで、ふと思いついた。
ヴィオラのユニークスキル、因果律操作ならいけるかもしれない。
ヴィオラはこの場に居ないが、良いものがある。
それは・・・ヴィオラのユニークスキルをコピーした、模倣の鏡。
アクアにもそのことを伝えて、実行に移る。
「もし失敗したら、仮死から復活するまで、魔法存在を待機させよう。」
こんな深海で、いつ来るかも分からないその時を延々と待たされる魔法存在。
クロトを一発くらい殴っても、許されるかもしれない。
アクアが密かに黙祷を捧げる中、作戦は実行された。
「ユニークスキル「因果超越せし極暗紫の天瞳」・・・発動。」
一日一回の、絶対的な因果律操作を発動。
目の前に現れた因果を、つぶさに選別していく。
クロトが紫の瞳を使うのは初めてだが、問題なく使いこなす。
(ヴィオラはこんなものを見ていたんだね・・・。)
そんな風に思考を逸らす余裕さえある。
やがて、時間にして一瞬の選別を終え、因果を選択。
選んだのは、超古代深海木が、仮死状態を選択しない因果。
攻撃を喰らってからでは存在しない因果だが、戦闘開始前なら、あり得る因果。
クロトが予め指定した秒数が過ぎる瞬間、アクアが動く。
とどめをアクアに任せるのに、万全を期す以外の意味は無い。
アクアの水神魔法が、他のどの攻撃よりも速いのだ。
「水神魔法・神氷絶波!連鎖神氷絶波!」
アクアの神速と言っても過言ではない魔法が、遠方に存在した敵に炸裂。
案の定、仮死状態になること無く、超古代深海木は絶命した。
仮にヴィオラがやろうとしても、ほぼ不可能な芸当だろうと思われる。
戦闘の初めは起こり得る事象が多すぎて、大量の因果で頭がパンクする故に。
平気でこなすクロトは、やはりおかしい。
とは言え、あまり無駄遣いは出来ない。
ヴィオラも一日一度しか使えないので、ストックは殆ど無い。
クロトの隠密者応用でコピーするのも不可。
何故か、一日一度の効果は、直に模倣の鏡にうつしとる必要があるのだ。
クロトは、ユニークスキルの中でも一際特殊ゆえの不具合だと推測している。
とにもかくにも、無事に素材は手に入ったのであった。
なお、レアスキル相当の攻撃無効に、活躍の機会など無い。
酷く揶揄われたというのに、アクアの機嫌は悪くなっていない。
熱い夜を過ごした後では、文句など消えてしまったようだ。
そして、未見の天種というのが・・・。
「・・・木、だね。」
「木、ですか・・・?」
神の瞳で確認できたのは、十メートルほどの木なのであった。
「一応、区分は魔物みたいだけど、戦闘能力は無い、ことも無い、のかな?」
「それはまた、特殊な・・・。魔物の情報を詳しく聞かせてくださいますか?」
名称は、超古代深海木。
レベル90で能力値はHPと魔力、防御力に極振り。
レアスキル「永続再生」で、時間は掛かるが、仮死状態からでも復活可能。
レアスキル「仮死操作」で、任意で己を仮死状態にでき、その間は攻撃無効。
レアスキル「不屈の木」で、一日に一度、どんな攻撃にもHP1で耐える。
「問題は、仮死状態で倒しても、素材が手に入らないこと、だよね。」
「それは大問題ですね。」
仮死操作の説明に、ご丁寧に書かれているのだ。
仮死状態時に倒しても、経験値と素材、共に手に入らない、と。
素材の収集を半ば趣味にしているクロトからすれば、酷い嫌がらせだ。
「ですが、私の魔法で瞬殺してしまえばいいのでは・・・?」
「その場合、不屈の木が厄介なんだよね。」
「と、言いますと?」
「初撃を確実に耐えて、次の攻撃までに仮死状態になるだろうと推測される。」
「・・・なるほど、そういうことでしたか。」
アクアも理解したようだ。
自分の魔法速度でも、仮死になる方が、完全に絶命させるよりも早いことを。
生物というのは、例え首を落とされても、少しだけ生きながらえるもの。
だが、どのみち死ぬ結果に変わりはないし、行動も不能。
さしたる問題は無いのが普通である。
しかし、超古代深海木は違う。
一瞬のタイムラグさえあれば、仮死状態になれる。
死を免れることができるのだ。
そして、仮死状態になった木は、倒しても何も得られない。
「嫌がらせのような木なのですね・・・。」
「全くもってその通り。」
クロトは先程から考えているが、良い対策が思いつかない。
これほど悩むのは、深海に来てから始めてかもしれないな、と思った。
ポイントは一つだけ。
最後まで敵に、攻撃されていると気づかれることなく、倒しきること。
(・・・いや、どうすれば良いのかな、これ。)
そんな方法、あるはずが無い。
忍び寄って一瞬で細切れにしても駄目だろう。
水圧で押しつぶしても駄目。
魔法で爆破しても駄目。
(停滞魔法陣・・・意識までは停滞させられないし・・・うん?)
そこで、ふと思いついた。
ヴィオラのユニークスキル、因果律操作ならいけるかもしれない。
ヴィオラはこの場に居ないが、良いものがある。
それは・・・ヴィオラのユニークスキルをコピーした、模倣の鏡。
アクアにもそのことを伝えて、実行に移る。
「もし失敗したら、仮死から復活するまで、魔法存在を待機させよう。」
こんな深海で、いつ来るかも分からないその時を延々と待たされる魔法存在。
クロトを一発くらい殴っても、許されるかもしれない。
アクアが密かに黙祷を捧げる中、作戦は実行された。
「ユニークスキル「因果超越せし極暗紫の天瞳」・・・発動。」
一日一回の、絶対的な因果律操作を発動。
目の前に現れた因果を、つぶさに選別していく。
クロトが紫の瞳を使うのは初めてだが、問題なく使いこなす。
(ヴィオラはこんなものを見ていたんだね・・・。)
そんな風に思考を逸らす余裕さえある。
やがて、時間にして一瞬の選別を終え、因果を選択。
選んだのは、超古代深海木が、仮死状態を選択しない因果。
攻撃を喰らってからでは存在しない因果だが、戦闘開始前なら、あり得る因果。
クロトが予め指定した秒数が過ぎる瞬間、アクアが動く。
とどめをアクアに任せるのに、万全を期す以外の意味は無い。
アクアの水神魔法が、他のどの攻撃よりも速いのだ。
「水神魔法・神氷絶波!連鎖神氷絶波!」
アクアの神速と言っても過言ではない魔法が、遠方に存在した敵に炸裂。
案の定、仮死状態になること無く、超古代深海木は絶命した。
仮にヴィオラがやろうとしても、ほぼ不可能な芸当だろうと思われる。
戦闘の初めは起こり得る事象が多すぎて、大量の因果で頭がパンクする故に。
平気でこなすクロトは、やはりおかしい。
とは言え、あまり無駄遣いは出来ない。
ヴィオラも一日一度しか使えないので、ストックは殆ど無い。
クロトの隠密者応用でコピーするのも不可。
何故か、一日一度の効果は、直に模倣の鏡にうつしとる必要があるのだ。
クロトは、ユニークスキルの中でも一際特殊ゆえの不具合だと推測している。
とにもかくにも、無事に素材は手に入ったのであった。
なお、レアスキル相当の攻撃無効に、活躍の機会など無い。
0
お気に入りに追加
6,336
あなたにおすすめの小説
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~
ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」
騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。
その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。
この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。
異世界営生物語
田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。
ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。
目覚めた先の森から始まる異世界生活。
戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。
出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。
半分異世界
月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。
ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。
いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。
そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。
「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界
男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。