異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
317 / 600
第二部「創世神降臨」編

ダイダル海域海底

しおりを挟む
 クロトとアクアは超古代深海亀を倒し、とりあえず収納。

 百メートル越えの亀など、一々解体していられない。


 アクアも、探索優先ということは同じなので、解体の後回しに異存はない。


 普段は眠っている海亀が居たことからも推測出来たが、海底は近かった。

 海亀と戦闘した場所から数十分もせずに、海底に到着。

 ごつごつとした地面へ着地した。


 周囲は相変わらず真っ暗闇だが、二人は普通に見えているので問題ない。


「・・・何も見当たらないね。」

「そうですね・・・いえ、探知には魔物の反応があります。」


 アクアの探知では、海亀こそ居ないが、氷天水や青の主は存在しているようだ。


「それと、未見の天種も存在しているようですよ?」

「それは嬉しい知らせだね。行く当てもないし、そちらへ行ってみようか?」

「それが良いかと。目標物が分からなくては、探知しようもありませんから。」


 アクアは自分の探知の力量不足を嘆くが、クロトがフォローする。


「いや、探すものも分からず探知なんて不可能に近いから、落ち込まないで?」

「それは分かっているのですが・・・努力はやめたくありませんから・・・。」


 単に嘆くのではなく、解決できる方法を模索する。

 クロトの在り方に近い考え方をするようになっている。


「それは確かに。でも今回は探索も楽しみたいから、落ち込む必要は無いよ。」


 クロトはアクアの頭を軽く撫でて、今後に期待するのだった。





 未見の天種の存在する方へと近づいていく二人。


 クロトが神の瞳で確認したところ、名称は深海大魚。

 名前からして、海底大魚の上位種では無かろうか。


 その体躯は、海亀ほどではないが、かなり大きい。

 HPが高めで、能力値は平均2800程度。

 特筆すべきスキルは、レアスキル「深海魔法」くらいか。


 深海魔法は、大海魔法の派生スキルのようなもので、水圧の制御に長ける。

 大海魔法との同時使用はとても厄介であろう。



 ・・・アクアが居なければ。



「水神魔法・水滅領域!」


 アクアの魔法で深海の一部からごっそり水が無くなった。

 深海大魚は、陸に打ち上げられた魚状態に。

 海底大魚のときも、似たような状況になった気がするが、きっと気のせいだ。


 ちなみに水滅領域は、クロトの魔法陣の仕組みを必死に勉強して習得した。

 今のアクアは、水系統に限ってだが、仕組みさえ理解出来れば殆ど再現可能。

 また、水滅領域の利点は、制御の必要が無く、勝手に効果が発揮されること。

 ごく僅かに例外はあるものの、着々と水を司る存在に近づいている。


「創世十六夜連閃・神断!」


 クロトの十六連撃を喰らった深海大魚は、瀕死に。

 最後の意地で、深海魔法を発動し、水圧をかけようとした。


 だが、アクアに制御を奪われ、逆に自分が水圧を掛けられて絶命。




<レアスキル「深海魔法」を習得しました>




「あっ・・・。クロトさん、深海魔法を習得出来ました!」

「うん、最後の水圧は色々応用できそうで、儲けものだったね。」

「はい、ありがとうございます。わざわざ瀕死で止めておいてくださって・・・。」

「アクアの強化に繋がるなら、手間は惜しまないよ。ただ、一つだけ・・・。」


 クロトは一つだけ納得のいかないことがあるようで、それを言葉にした。


「水も無いのに水圧をかけるというのは、変な表現だよね・・・?」

「それを言ってしまったら、水圧がかかること自体おかしいですから・・・。」


 言われてみればその通り。

 水が無いのに水圧とは、これ如何に。


 せめて、水圧と同等の圧力をかける、とかなら分からなくも無いのだが。




 クロトの率直な意見に、アクアは苦笑を浮かべるしかなかった。


 ファンタジーにそのあたりの説明を求めてはいけないのだろう。




 その後、アクアは深海魔法の練習を始めた。


「クロトさん、その・・・・・・。」


 アクアがとても言い辛そうに、クロトへ何かを頼もうとしている。

 クロトは皆まで言わせず、了承する。


「深海魔法の実験をしたいんだよね?実験台になるよ?」

「うっ・・・ありがとうございます・・・。」


 やはり、生物での実験は必要不可欠だろう。

 ぶっつけ本番で敵に使うのは、あまりにも怖い。


 当然だが、実験台になるのは、クロトの魔法存在である。



 一回目、調整を間違えたのか、魔法存在が一瞬でぺしゃんこになってしまった。

 防具を外してあるとはいえ、呆気ないものだ。


「・・・・・・。」


 自分と全く同じ姿の魔法存在をアクアに潰される。

 クロトと雖も、微妙な思いがあるようだ。


「すすすすみませんっ!?」


 沈黙してしまったクロトに、アクアが慌てて謝った。


「いや、気にしないで?どんどん練習して。」

「ううっ・・・・・・。」


 それが合理的だと分かっていても、どこか申し訳ない気分で一杯になる。

 アクアは痛む心を押さえながら、暫くの間、練習を続けたのであった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:879

男の俺が痴漢されてイッちゃうなんて…!

BL / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:130

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:105

転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:383pt お気に入り:4,903

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:362pt お気に入り:9,922

もう「友達」なんかじゃいられない。

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:14

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。