異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

プロローグ18

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 ダイダル海域の浅部と深部には、大きな壁がある。

 文字通りの壁では無く、障害的な意味での壁だ。


 それは・・・渦潮。


 勿論、ただの渦潮では無い。

 それくらいなら、クロトは平気で渡ってしまうので。

 クロトが侵入を躊躇うのは、その渦潮に、著しい能力値減少の効果があるからだ。

 
 ゆえに、アクアに調査を頼んでいた。

 アクアが最近王都に居ないことが多かったのは、そういう理由がある。


 そして、アクアによって、渦潮の無い場所が発見されたという報告が。

 その翌日、クロトはアクアと共に、シレーマの町へ向かったのだった。


 ちなみに、前日の夜は、待ちかねていたマリアの相手を。

 アクアは久しぶりにクロトに抱いてもらいたかったようだが、身を引いた。




「・・・何なら、マリアと一緒でもよかったんだよ?」

「いえっ、それは遠慮しておきますっ・・・!」


 クロトは揶揄い混じりにアクアへ、昨夜の提案をもう一度告げる。


 二人同時というのは、クロトの趣味ではない。

 だが、アクアが喜んでくれるのであれば、それも良いかと思っての提案だ。


 アクアは真っ赤になって首を横に振っているが。

 さすがに恥ずかしいらしい。


 クロトが複数の女性と同時に行為をするのを嫌うのは、簡単な理由。

 行為の時は、一人の女性に全ての愛を注ぎたいからである。


「そういえばアクア、装備が少し変わったみたいだね?」

「あ、はい。グレンさんに頼んでいた装備が完成しましたので。」


 アクアの新しい防具は、青と白を基調とした、露出少なめのもの。

 どことなく、聖女という存在を思い起こす格好だ。

 冒険者五割、聖職者五割といった塩梅だろうか。


(端的に言うと、物凄く可愛くて美しい・・・。)


 実はクロト、今にも抱きしめたくなりそうな衝動を必死に堪えていた。

 全く表に出して居ないのは、いつも通りだが。


「グレンさん、相変わらずいい仕事してるね・・・。」

「はい、とっても素晴らしい装備です!」


 若干会話が食い違っているのは、些細な問題だろう、きっと。




 それはさておき。


 アクアの杖、水氷神の波杖にも、神水晶が組み込まれている。

 その特殊効果として、水神魔法の威力・制御力向上というものが分かっている。

 しかし、それ以上の事は、未だに不明。


 クロトの超隠蔽やエメラの風雷神剣・万断、マリアの天魔乙女モードなど。

 それらに匹敵する効果があって然るべきなのだが・・・。


「お話を伺う限り、心の底から必要としなければ発現しないのかと・・・。」

「・・・なるほど、一理あるね。それだと、僕の効果発現は特殊なのかな?」

「詳細は分かりませんが、クロトさんだから、で納得できてしまいます。」

「その意見は、微妙に納得しかねるんだけどな・・・。」


 クロトは不満げな様子であった。






 海へやって来て、船を出したクロト。

 アクアの転移で直接出向くのもありだが、途中の道順も覚えておきたいので。


 なお、アクアも小型の船を所持している。

 すっかりお金持ちの仲間入りだ。


 クロトの船に乗り込んで、アクアの案内にて目的地を目指す。

 ダイダル海域までは一日。

 魔法存在に運転を任せ、アクアとクロトは優雅にクルージング?の様相に。


「アクア、飲み物はフルーツジュースで良いかな?」

「あ、はい。以前頂いたとき、とても美味しかったのを覚えています。」


 アクアの肯定の返事を聞いてから、冷蔵庫から冷えたジュースを取り出す。

 グラスに注いだ後、テーブルへ置く。


「ありがとうございます。」

「どういたしまして。」


 アクアは美味しそうにジュースを飲む。

 相当なお気に入りのようだ。

 以前渡した分は、既に飲み切ってしまったのかもしれない。


 クロトはそう考えつつ、微笑ましく気持ちでアクアを見守った。


「・・・ふぅ。・・・あの、クロトさん?そんなに見つめられると・・・あぅ。」


 クロトにじっと見つめられただけで、真っ赤になって俯くアクア。

 やはりクロトにベタ惚れのようである。


 クロトは照れるアクアを見つめつつ、シレーマでのことを色々と思い出していた。

 印象深い出来事の中の一つは、海底の迷宮から脱出した時のこと。


(確かあの時は、アクアに何も言わずに、上空に転移して・・・。)


「空中に転移して・・・怖がって抱き着いてくるアクアは最高だったな・・・。」

「クロトさん!?まだ覚えていらしたのですか・・・!?」


 アクアは両手をバタバタさせて慌てふためいている。

 アクアにとってあの時の出来事は、とても羞恥心を煽るのだ。


「可愛い悲鳴、必死にしがみつくアクア・・・最高級の幸せだった・・・。」

「クロトさんっ、もうやめてくださいっ・・・!!」



 涙目で、睨みつけているつもりのアクアがまた、最高に可愛くて・・・。





「アクア、もっとその目で僕を見て欲しいな・・・?」

「えええっ!?」

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