異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

お姫様抱っこ

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 クロトは眠っているマリアをお姫様抱っこして、王都に戻って来た。

 そのまま梟の止まり木亭へ入ると、セレンに驚かれた。


「クロトさん、何をしていらっしゃるのですか?」

「ん?これは、お姫様抱っこだよ。セレンもライトにお願いしてみたら?」

「へっ!?そ、それは・・・・・・。」


 クロトの提案を聞いて黙り込んでしまったセレン。

 彼女を放置して、もう一人の従業員である赤髪の女性に話しかける。


「ただいま、レイナ。やっぱり、ここで働くことになったんだね?」

「あ、うん・・・。そう、なんだ。」


 レイナは、ライトの二人目の恋人で、宿で働くことを打診されていた。

 受けるだろうとは思っていたので、驚きは無い。

 ちなみに、クロトと同い年なのでタメ口である。


「仕事の方はどう?困ってることは無い?」

「うん、今のところは特に何も。仕事も覚えられたし。」

「そっか、それは重畳。ライトに虐められてない?」

「えっ・・・?」

「ちょっと待て、何てこと聞いてんだ!」


 丁度ライトが梟の止まり木亭へ入って来た。


「え?ライトが上手くやれているか確かめただけだよ?」

「だったら、もっと別の聞き方ってものがあるだろ・・・。」


 呆れているライトに、セレンがヒソヒソ声で話をする。


「ライトさん、その・・・アレ、やって欲しいな、なんて・・・。」

「アレっつーと、アレか・・・。流石に恥ずかしいから、二人のときに、な。」

「はい!ありがとうございます!」


 そんな中、レイナはクロトに囁いてきた。


「私もやって貰えるかな・・・?」

「大丈夫だよ。ライトなら期待に答えてくれる。」


 レイナは、想像したのか、頬が赤い。


 ところで、先程からクロトが意図的にスルーしていた視線が一つ。


「ナツメ、そんな目で見ても、お姫様抱っこはしないよ?」

「そそそんなことは言って無いでござるよっ!?」

「だったら、その視線をなんとかしてね。」

「・・・はっ!?」


 ナツメは、収納から顔を隠せるものを適当に取り出して顔を隠した。

 それは、以前クロトがナツメにあげた、ヘンテコなお面。


「「ぶっ!?」」


 レイナが、クロトに指で示されたナツメを見て、噴き出した。


 ちなみに、もう片方はたった今、梟の止まり木亭に入って来たカレン。

 出し抜けにヘンテコなお面のナツメを見て、不意を突かれたようだ。

 お腹を抱えて、必死で笑いを堪えている。


 こういう状態だと、何を見ても笑えてしまうもの。

 クロトに用が合って訪ねて来たローナを見て、笑い出すカレン。


「くくくくっ・・・!!」

「えっ?何でボクが笑われてるのっ!?」

「あははははっ・・・苦しいっ・・・!!!」


 ローナは必死で笑いを堪えようとするカレンに困惑している。

 クロトが端的に状況の説明をすることに。


「ナツメが痛い子なのが原因だよ。」

「酷いでござるよっ、クロト殿!?」

「それは知ってるけど、それがなんで、カレンのこの状況に・・・?」

「ローナ殿も酷いでござる!?」


 ナツメは既に仮面を外していたので、ローナはいまいち理解できていない。


「ナツメの(お面をかぶった)顔が悪かったんだよね。」

「それだとただの悪口でござるよ!?」

「あ、うん。大体わかった。」


 ナツメが文句を言いながらお面を取り出したので、理解できた様子。


 再度仮面を取り出したことで、カレンが再び笑い出す。

 レイナは、わき腹をつねって笑いを堪えている。

 ライトとセレンは、周囲の状況にお構いなしでイチャついている。


 収拾がつかないレベルでカオス。


 そしてこのタイミングでマリアが目覚めた。


「ん、んん・・・・・・・・・・・・えっ?」


 目を覚ましたマリア。

 自分の状況とカオスな周辺、把握することが多すぎて混乱してしまった。


 それでも、直ぐに理解してしまったのは流石と言える。

 クロトに聞きたいのは一つだけ。


「クロト・・・ずっと、王都の中も、このままだったんですの・・・?」


 どうか違っていて欲しいという思いで、恐る恐る問いかけた。

 クロトは、マリアを安心させるように微笑む。


 マリアがホッとした様に息を吐いた。


「勿論、このままの状態で歩いてきたよ?」

「一体全体何が、勿論、なんですのよおおおおっ!!」


 真っ赤になり頭を抱えて悶えるマリアは、とても可愛らしい。


「あああああっ!?明日からどんな顔をして表を歩けば良いんですの・・・!?」

「いつも通りの可愛い顔で良いんじゃないかな?」

「クロトは黙っていてくださいましっ!大体、いつまでこの体勢なんですのっ!?」


 マリアが怠い体に鞭を打って、動き始める。


「うん?体勢が心地よく無かったのかな?」

「違いますわ!早く離して欲しいという事ですわっ!」


 マリアはクロトの勘違いを指摘するが、クロトはますます首を傾げる。


「じゃあ何で、僕の首に手を回しているのかな?」

「・・・・・・えっ?」


 マリアが言葉の意味を理解して、自分の姿を確認。

 すると、何故かクロトの首に手を回し、強く抱き着いていた。


 数秒間沈黙した後、一瞬で耳まで赤くなって俯いてしまった。


「マリア、大丈夫?」

「少し、黙っていてくださいましっ・・・!!」


 嫌だ嫌だと言いながら、実はお姫様抱っこを喜んでしまっていたマリア。

 自分の本心が行動に現れたせいで、まともにクロトの顔を見ることが出来ない。




 そして、マリアはついに確信するに至った。

 もう二度と、自分はクロトから離れられないのだと。


 マリアは、それを認識して、多大な幸福感に包まれた。






 かくして、新たな仲間も加わり、今日も梟の止まり木亭は、とっても平和だ。


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