異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

VS天蠍2

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「天魔神剣・天魔神演舞!」


 マリアの十六連撃が、蠍の鋏を迎撃。


「ぐっ・・・なんて強くて重い一撃なんですの・・・!?」


 尻尾を切断されて弱り、咄嗟に繰り出した一撃。

 そんな大したことが無いはずの攻撃だというのに、弾くので精一杯。


(クロトは、こんな化け物を相手に、ずっと一人で戦ってましたの・・・!?)


 マリアが驚くのも無理はない。

 蠍の能力値は半減し平均5000に満たない程度。

 それに対し、マリアの能力値は20000近く。


 これだけの差が合って、弾くので限界などと、考えたくも無い現実だ。


 完全に体勢を崩したマリアに、蠍の毒生成が襲い掛かる。

 悪寒を感じたが、到底回避することは不可能。


 だが、問題は無い。


 激痛から立ち直ったクロトが倒れ込むマリアを受け止め、退避を画策。

 そのための時間はリュノアがつくる。


「キュオオオオオオオオオ!」


 黒炎吐息が蠍に襲い掛かり、注意を逸らした隙に、クロトの退避が完了。

 マリアの居た場所が毒で満たされるも、時すでに遅し。



 マリアは痺れる手を気にしながらも、クロトに声を掛ける。


「クロト、遅くなりましたわ。」

「いや、最高のタイミングだったよ。もう少し掛かると思ってたんだけど。」


 クロトは、ラドンの臨界突破が終了するまでは勝てないと推測していた。


「そこは、後で説明しますわ。」

「了解。蠍から五メートル以上離れないように気を付けて。」

「分かりましたわ。」

「キュ!」


 蠍のHPは残り四割。


 蠍との戦いは、クロトだけでは厳しかった。

 敵の持つ神眼で隠密者が効きづらいのが厄介なところ。


 敵の注意が三か所に分散するだけで、とても有難い。
 


 戦闘を再開する一同。

 三者とも範囲毒を警戒し、接近しつつ物理・魔法を組み合わせた戦い方をする。


 戦闘再開から五分ほど。


「天魔神剣・戦女神演舞!」


 マリアが、舞うような十六連撃を側面から叩き込むが、殆どダメージが入らない。


 しかし、一瞬でも蠍の注意を逸らせれば、それは値千金。

 クロトは永久機関からエネルギーを引き出して、剣に纏わせる。


 蠍はクロトの攻撃を阻止しようとするが、そこへリュノアの漆黒魔法。

 蠍を縛り付け、時間を稼ぐ。


「天魔神法術・全天魔必縛!」


 マリアが更に捕縛魔法を重ね掛け。

 蠍がもがいている間に、準備は完了。


「ゴッドアイ・アクセラレーション!」


 十倍に加速したクロトが、蠍の毒纏が薄い、腹の一部。

 全てに均等に毒纏をするのが、相当難しいことが伺える。


 蠍の下に潜り込み、剣技を放つ。


「神天龍十六夜連閃・二極!」


 クロトの三十二連撃を喰らった蠍は、僅かに宙に浮きあがる。

 蠍の残りHPも、あと僅か。


 寧ろ、今の剣技を耐えきったことの方が驚きである。

 どうやら、クロトの攻撃直前、毒纏を腹部へ集中させたらしい。

 勘に近い行動だったようだが、正解であり、不正解でもある。


 毒纏が腹部へ集中しているなら、他の部分は、脆くなる。

 その隙を逃すマリアとリュノアではない。


「天魔神剣・天魔神演舞!」

「キュオオオオオオオオッ!」


 マリアの十六連撃で左側の鋏を切断。

 リュノアの空間魔法を纏った竜翼連刃で、右側の鋏を切断。


 蠍は丸裸状態になった。


「キシャ!!」


 追い詰められた蠍が自滅覚悟で、自分ごと周囲を毒で満たそうとする。


 ・・・が、それは叶わなかった。


 クロトは神瞳加速の副作用で動けないが、その前の仕掛けが無くなる訳では無い。


 戦闘開始直後に、空中から蠍へ攻撃した分身が居た。

 その分身が蠍へ襲い掛かる前に、天井にとある仕掛けをしておいた。


 それは、マリア、リュノア、クロトの内、誰かの意志で起動させることが可能。

 クロトは行動不能なので、今回はリュノア。


 天井に仕掛けられた魔法陣は、鋏が切断される少し前に起動。

 おもりと共に蠍へ降って来た。


 蠍もそれには気づいて居たが・・・どうにかする手段が無い。

 毒と空間の複合壁も、使える程のMPが残っていない。




 蠍へ魔法陣がくっつき・・・・・・大爆発。




 マリアとリュノアは退避済み。

 動けないクロトも、蠍が壁になってくれているので、ダメージは無し。


 蠍は大爆発をその身に受けて、絶命した。


 蠍が倒れ込む前に復帰したクロトは、すぐさま退避。

 こうして、規格外のユニークスキルを持つ蠍との戦いは、幕を下ろした。



「クロト、大丈夫ですの?」

「キュイ・・・?」

「うん・・・ちょっと精神的に疲れただけだから。」


 地面に倒れ込んだクロトは、痛む頭を触りながら、心配は無いと答えた。

 また、それと同時に、一つ気づいたことが。




「マリア、リュノア。蛇つかい本体はどうしたの?」

「・・・・・・あっ。」

「・・・・・・キュッ。」


 どうやら忘れていたらしい。

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