異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

リュノアVSラドン

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 一口に天種と言っても、ピンキリである。

 セラフィムのように与しやすい存在も居れば、紫の主のような強敵も居る。


 現在リュノアが戦っているラドンは、天種の中でも最上級の強さを誇るだろう。

 特殊な技能などは無いが、ただただひたすらに、強い。


 元の能力値も平均3000と高く、レアスキル「十倍力」で、それが十倍に。

 クロトの最大まで上昇した能力値とほぼ互角と言えば、その強さがよく分かる。


「キュオオオオオオッ!」

「シャァァ!」


 リュノアは空中にて、常に一定以上の距離をとって、足止めに専念していた。

 漆黒魔法がラドンを拘束し、ラドンが拘束を振り払うという繰り返し。


 漆黒魔法は、ここまでその真価を発揮しているとは言い難いものがあった。

 攻撃も出来るが、拘束がメインの地味な魔法。


「シャァァァッ!?」


 そんな魔法を、能力値で圧倒的に上回るラドンが、苦しめられている。


 そう、漆黒魔法は、圧倒的強者を墜とす為にある魔法。

 敵の能力値が高ければ高い程、強い効果を発揮する魔法だったのだ。



 それは、対象が巨大なほどに大きくなる、影の如く。



「キュオオオオオオ!」

「シャァァ!」


 もう何度目になるか分からない「漆黒魔法・多重影縛」が、ラドンを拘束。

 直ぐに振り払われるが、少しづつ、ラドンの体力を奪っていく。


 いい加減じれったくなってきたラドン。

 ブレスを吐いて漆黒魔法を消し去ろうとするが、乱暴に過ぎる。

 影は、そんな方法では消せないというのに。

 寧ろ自分がダメージを受ける始末。

 
 降って沸いたチャンスに、リュノアは足止めへの専念から戦略を切り替えた。

 黒竜魔法レベル10で使用可能になった、吐息の圧縮を使用。


 再度、漆黒魔法で拘束したラドンへ、「黒竜魔法・滅炎吐息」を放った。

 この魔法は、ブレスを呑み込んで威力を増す効果がある。


 滅炎吐息はラドンのブレスを浸食し、大爆発を起こした。


 思わぬところで大ダメージを与えることに成功し、勝ちの目を見たリュノア。

 傷ついたラドンを漆黒魔法で拘束し、動きを封じる。


 弱ったラドンは拘束を簡単には振り払えずに、リュノアへ最大火力のブレス攻撃。

 自信があったのだろうが、完全なる悪手。


 たった今リュノアが習得したレアスキル「滅竜魔法」。

 文字通り、竜が得意とするブレス殺しの魔法の前には、無力。


「キュオオオオオオオオオオオオッッ!!」


 リュノアが咆哮と共に、「滅竜魔法・滅竜吐息」を放つ。

 滅竜吐息は、滅炎吐息では吸収しきれなかったであろう敵のブレスを、全て吸収。

 カウンターで、己の黒炎吐息を混ぜ合わせた一撃が、ラドンに直撃。


「シャァァァァァァァッ!?!?」


 ラドンは極大ダメージを喰らい、吹っ飛んで行った。



 吹っ飛んで行ったのは、マリアの居る方向。

 かなり離れていたのだが、マリアの居る所まで飛ばされてしまった。






 マリアの、飛ばされて来たラドンへの対応は、反射的なものだった。


 限界突破と橙の瞳を発動し、宙を飛んでいて隙だらけの敵に、奥義を放つ。

 その際、咄嗟に天魔神の混剣に魔力を流したのだが、これが思わぬ効果を発揮。


 マリアを光と闇が覆い、一瞬で服装が変わってしまった。

 その姿は、まるで戦乙女のようで、綺麗に輝いている。



「天魔神剣・天魔神演舞!」



 口を突いて出たのは、予定とは違う言葉。

 だが、不思議としっくり来た。


 マリアの、クロトの剣技を参考にした十六連撃はラドンを切り刻む。

 飛んできた勢いもあって、大ダメージを与えた。


 ラドンは状況を理解できないながらも、あらゆる方向にブレスを放つ。

 臨界突破も行使した上で、だ。


 それが、決定打となった。


 ブレスの方向を予測して先回りしていたリュノアの滅竜吐息が、吸収。


 黒竜魔法を混ぜたカウンターブレスがラドンに炸裂。

 そのまま絶命させた。


 その間にもマリアは動いており、エレメンタルヒュドラに急接近。

 
「天魔神剣・天魔神演舞!」


 闇と光がまじりあった十六連撃は、ヒュドラの首を全て切断し、絶命させた。


 切り札の使用は躊躇われたが、敵を瞬殺できるチャンスは逃せない。

 特に、ラドンが無防備な姿を晒す機会など、そうは無いはずなのだから。


 ラドンがこうも良いようにやられたのは、リュノアの滅竜魔法あってこそ。

 色々な偶然が重なったのは確かだが、勝ちは勝ち。


 そこで、ふと気づいて、自分の姿を顧みるマリア。


(この姿は・・・神水晶と天魔スキルの相乗効果、ですわね。)


 戦乙女モードとでも言うべき姿は、露出が多く、妙な恥ずかしさに襲われる。


 だが、今はそれどころでは無いと思い直し、気分を落ち着け周囲を見渡す。

 すると、ラドンはリュノアにしとめられていた。


 マリアは一安心し、リュノアと合流。

 そして、クロトの居る戦場へ向かった。

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