異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

女心の難しさ?

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 その後しばらく、セレンは今までよりも、ライトにくっつくようになった。


 レイナの身の上話も聞かされ、同情を抱いたセレンは、凡そ普段通りに戻った。

 だが、時折セレンが、暗い感情を湛えた瞳をしているのを見る。



 このままでは、いつか、何か良くないことが起きる。


「根拠は無いが、そう思えて仕方が無いんだ・・・。」

「・・・うん、間違いなく何か起きるね。」

「・・・やっぱりそうか?」

「多分、としか言えないけどね。」


 クロトは、こういうのを死亡フラグというのだろうと思った。


「ライト、死んだら骨は拾っておくよ。」

「何の話だ!?そこまで不味い状態なのか!?」


 何が不味いとは断言できないが、何かが不味い気がするクロト。

 だがしかし・・・。


「僕に出来ることは無さそうだから、他をあたってね?」

「他に当てなんていねぇ!そこをなんとか!」

「いや、どの面下げて何を言えと・・・?」


 明らかに人選ミスとしか思えない。

 クロトは上手くやれる自信が無かった。












 結局、アクアが全て解決してしまったという事実のみ、明言しておこう。


 恋愛面に関しては、クロトでも難しかったようだ。

 










「・・・スイレン、女心って難しいね?」

「突然現れたかと思ったら、一体何ですか、会長?」


 藍色の長髪と藍色の瞳、同色の眼鏡を掛けたクールな女性。

 ミカゲ財閥会長秘書のスイレンは、仕事をこなしながら受け答えをしている。


「そんなことより、暇なら仕事をしてください。そこにありますから。」

「了解。いつも苦労をかけて済まないね。」

「・・・別に、苦労を掛けられてはいませんが。」

「・・・そっか。」


 その後は黙々と仕事をして、溜まっていたぶんは片付いた。


「じゃあ、僕はこれで。後はよろしくね。」

「分かりました。」


 簡単なやりとりだけ交わして、クロトはその場を去った。



 後に残ったスイレンは、ため息をついた。


(やはり、あの瞳で見据えられるのは苦手ですね・・・。)


 平静を装っていたが、実際は違った。

 クロトの瞳に見据えられると、色々と支障があるのだ。


 凡人を超人へと押し上げた強い信念が、一番色濃く現れる場所である故に。


 その瞳に魅了されてしまわないようにするだけで一杯一杯である。


(仕事をしにきてくれるのは有難いのですがね・・・・・・ん、これは?)


 自分の机の片隅に、何かが置かれているのに気づいたスイレン。

 そこにあったのは、器に入ったチョコレート。


【チョコは差し入れだよ。ちゃんと規定通りの休みも入れる事!】


「・・・・・・。」


 職務中であるため、しばし葛藤したが、効率を上げるためと言い聞かせ、頂く。

 スイレンも、甘い物好きの女性ということだろう。



「・・・美味しい。」



 スイレンは、珍しく笑みを浮かべた後、仕事を再開した。









 クロトは仕事を片付けた後、マリアを揶揄って遊んでいた。


「やっぱり、マリアは揶揄い甲斐があるね。」

「いい加減、揶揄うのはやめてくださいまし・・・!」


 クロトに揶揄われて真っ赤になっていたマリアが、何とかそれだけ絞り出した。


「そうは言うけど・・・マリア、嬉しそうだよ?特に口元とか。」

「なっ!?」


 マリアは慌てて口元を押さえて確認する。

 すると、口元が嬉しそうにつり上がっているのが分かった。


 そして、耳まで真っ赤にして俯いてしまった。


(ああああっ!?どれだけクロトにベタ惚れなんですの、わたくしはっ!?)


 恥ずかしさのあまり悶える姿がまた、とても可愛い。

 クロトは背後から、マリアを抱きすくめた。


「マリア、愛してるよ。」

「っ!?」


 耳元で愛の言葉を囁かれて、それだけで幸福の絶頂に。


(ああ・・・。わたくし、もう色々と駄目ですわね・・・。)


 どれだけ自分を惚れさせれば気が済むのか。

 もはや、ベタ惚れという言葉ですら生ぬるい。

 クロトのやること為すこと、全てを肯定してしまいそうなのを抑えるので精一杯だ。


 マリアは戒めの意味を込め、自分の手を、己を抱き締める手に重ね合わせた。





「・・・さて、それじゃあ行こうか。」


 マリアに声を掛けるも、マリアはクロトの手を握って離さない。

 クロトはもう一度声を掛ける。


「・・・マリア?」

「・・・・・・クロト。もう少しだけ、抱きしめていてくださいまし・・・。」


 マリアのお願いに、クロトは何も言わず、無言で抱き締め続けた。


 二人は、何気ないひと時だが、かけがえのない時間を過ごしたのだった。

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