異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
290 / 600
第二部「創世神降臨」編

セレンの嫉妬

しおりを挟む
 突然現れた謎の人間に驚きを隠せないライト。


(おいおい・・・いつの間に?全く気づけなかったぞ・・・!?)


 そんなライトにお構いなしで、話を進める仮面人間。


「ふぅ・・・それで、汝の望みは何なんだ?」

「え?ああ、こいつを助けたいんだが・・・命の水を貰えないかと思ってな。」

「それくらいならお安い御用。・・・だが、本当にそれでいいのか?」

「・・・?ああ、それでいいぞ?」


 ライトは意味を図りかね、適当に頷く。


「うむ、では早速・・・。」


 仮面人間はマントの中から容器を取り出し、中の水を赤髪の女性にかける。

 たちまち怪我は治っていき、腕も再生した。

 もう、命に別状はないだろうと思われる。


「はぁ・・・良かった・・・。」

「うむ。では、対価の方を頂こうか。」

「っ・・・そうだったな。」


 ライトは対価の事を思い出し、何を取られるのかとヒヤヒヤしつつ尋ねた。


「対価ってのは、何を払えばいいんだ?」

「簡単だ。汝にとって一番大事なものを頂いていく。」

「なっ!?」


 一番大事なものと言えば・・・・・・恋人のセレン。

 勝手な事と自覚しつつ、それだけは勘弁してくれと土下座して頼み込もうとした。


 だがしかし、それはかなわなかった。


 仮面人間がパチリと指を鳴らすと、ライトは一切の身動きが取れなくなったのだ。


(っ!?これは一体・・・!?動けない上に声も出せねぇ!)


 信じられない思いで一杯のライトに、仮面人間が話しかける。


「悪いが、説明が終わるまではそのままで居て貰う。襲われても面倒なのでな。」

「・・・・・・。」

「予め言っておくが、一番大事な物の中に、汝の所有物以外は含まれない。」

「・・・・・・。」

「つまり、通常は、恋人や妻は含まれないということを明言しておく。」

「・・・・・・!」


 それを聞いたライトは、表情すら変えられないが、心の中で安堵した。


「願いの難易度次第ではあり得る・・・が、今回は適用されない。」

「・・・・・・。」

「では、対価を頂く。一番大事なものは・・・恋人に送る指輪か。」

「・・・!?」


 なぜそんなことを知っているのか。

 しかし、問いただすことも出来ず、目の前の光景に驚愕していた。


 なんと、自らの収納の中から、指輪が飛び出してきたのだ。


 大枚をはたいて手に入れた、思い入れの強い指輪。

 ライトは心の中で涙を飲んで、差し出すことを決めた。


 仮面人間は指輪を手に取り、何かを見定めると、口を開いた。


「ふむ。これではこちらが貰い過ぎか。これは返却しておこう。」


 仮面人間がそういうと、指輪はライトの収納へ戻った。


「代わりに、こちらを頂いていこう。」


 収納から新たに飛び出したのは、手に入れたばかりのアーティファクト。

 かなりの値打ちものだが、指輪と比べれば、大したものでは無い。


「では、これで失礼する。さらばだっ!」


 そう告げた仮面人間が消えた瞬間、ライトの体は自由に動くようになった。


「・・・一体、なんだったんだ?」


 色々と疑問は残る。

 だが、助けて貰ったことへの感謝の念は強い。


 ライトは、今度会ったら礼を言おうと決め、赤髪の女性が起きるのを待った。











 セレンは、ライトが遅いのを心配しながら、戻ってくるのを待っていた。


(ライトさんなら、きっと大丈夫。・・・早く戻って来ないかなぁ。)




 やがて、ライトは無事戻って来たのだが、素直に喜べない理由が一つ。


「・・・ライトさん、その人は?」

「ああ・・・何と言うか、馬車の生き残りだ。」

「・・・随分と仲良さそうですね?」


 赤髪の女性は、ライトの腕にしがみついていたいたため、言葉が冷たくなる。

 そのことを自覚しながらも、言葉は止まらない。


 ライトはモテるが、今まで、セレン以外にそんな真似を許していなかった。

 ならば、もしかしたら・・・。


 どうか違っていて欲しいという願いを込めて、ライトに尋ねた。


「・・・恋人にするつもりですか?」

「それは、その・・・・・・済まない、セレン。」


 そっぽを向きながら、暗に肯定したライト。



 セレンは、自分の中から黒い感情が溢れ出すのを感じた。






 赤髪の女性、レイナが目を覚ました時は大変だった。

 状況を把握したレイナは、両親の遺体に縋って、泣き喚いた。


 悲しみに暮れるレイナを見たライトは、こう思った。


 自分が、この悲しみに暮れる女性を、幸せにしてあげたい。


 それは、半ば一目惚れに近いものだった。



 気づいたら、ライトは告白していた。



 レイナは、急なことで驚いていた。

 そんな気分ではないので断ろうとしていたが、出来なかった。

 自分を助けてくれた男性の真剣な表情に、胸がときめくのを感じてしまったから。


 レイナは、頼れる両親が死んだばかりで、縋れる人を求めていたのかもしれない。

 だがそれでも、恋は恋。


 顔が熱くなるのを自覚しながらも、答えを返した。



「私で、よければ、よろこんで・・・!」

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る

イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。 《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。 彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。 だが、彼が次に目覚めた時。 そこは十三歳の自分だった。 処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。 これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。