異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

閑話 カリスの療養

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 ヘキサアイズ戦の後、クロトに置き土産を喰らったカリス。

 弱った状態に大爆発は、かなり響いた。


「ぐっ・・・やはり、暫くは休息が必要か。」


 早く次の行動に移りたかったカリスだが、ダメージは甚大。

 先に回復を図るべきだと判断し、拠点に戻って来た。


「クロトめ・・・いや、奴が真面目に戦おうとしたのを信じた私が馬鹿だった。」


 カリスは常に冷静な男・・・だったのだが、クロトへの対応だけは違う。

 長く連れ添った悪友のような対応になっている。

 何故か、それが一番しっくり来るので、変えようとはしていないカリス。


「はぁ・・・。これで一息吐けるか。」


 カリスは簡単に拠点の整理を行い、大きな椅子に腰掛けた。

 以前は、下級魔人が勝手にやってくれた事なのだが・・・。

 クロトに全滅させられた為に、一人もいない。


 それについては、特に憎んでいる訳では無い。

 ハッキリ言って、お互い様だ。


「クロト自身が動けなくなる間、私の動きも封じておこうという魂胆か・・・。」



 大正解だよ、カリス。


 そんなクロトの声が聞こえて来たような気がして、思わず眉を顰める。


「まあいい。奴とは敵だが、元より何もしないつもりゆえにな。」


 カリスにとってクロトは、唯一私情で殺したい相手。

 だが、ヘキサアイズを嫌う者同士である。

 残りのヘキサアイズ打倒の為に、殺すつもりは無かった。


 そんな考えだから、クロトにツンデレと言われるのではないだろうか。



 そう言いつつ鏡を覗いてみると、赤い髪が、見るも無残なことになっていた。





「・・・やはり殺しに行くか。」


 怒りの表情を鏡に映しながら、本気でそう思った。

 だがしかし、今動けば、マリアらに返り討ちに会うのは自明の理。

 諦めて休むという選択肢しか無かったのだった。











 しばらく休んだところで、魔物が近づいてくることを察知したカリス。

 様子を見に、そちらの方へ向かった。



「・・・・・・!?キャン、キャン・・・!」

「これは・・・ヘルハウンドの子供、か?」


 カリスの前には、まだ小さなヘルハウンドが居た。


「貴様、怪我をしているのか?」

「・・・キャウゥ。」





 カリスはヘルハウンドを拠点へ連れて帰って、治療をした。

 新たな部下にでもしようと思ったのかもしれない。


 しかし、傍から見れば、ただの動物思いなお兄さんである。





 数日後、ヘルハウンドは、すっかり元気になった。



「キャンキャン!」

「待て、やめろ。舐め回すな・・・・・・名前を付けるか。」


 呼び名が無いと不便なので、懐いてしまったヘルハウンドの名を考えた。


「貴様の名は・・・イヌ助、だ。分かったな?」

「キャウ?・・・キャンキャンッ!?」

「嫌だと言うのか・・・?」

「キャン!!」


 魔王に名づけのセンスは無かったようだ。


 ヘルハウンドは初め、不思議そうな顔をしていた。

 だが、それが自分の名前だと分かると、断固拒否の姿勢に。


「ふむ・・・。ならば、イヌ五郎でどうだ?」

「キャンキャン!?」

「これも駄目とはな・・・。イヌ衛門ならば・・・。」

「キャン!?キャウキャウ・・・!」


 まるで、「イヌから離れてよ!」とでも言いたげだ。

 ちなみに、ヘルハウンドとイヌは別物だ。


「そうか・・・。では、ハウル。」

「・・・キャンッ!」


 イヌ助改めハウルが認め、ようやく名前が決まったようだ。


「しかし、こやつの食事をどうするか・・・。」

「・・・わふ?」

「手持ちの食料を食い尽くされてしまったが、その辺の魔物で良いな?」

「・・・・・・わふん。」


 とてもそんな食欲は無かったが、やむを得ず頷くハウル。

 カリスは食欲の無さを理解して、行動を決めた。


「私も動けるようになった。人間の町にでも潜入して、食べやすい物を買うか。」

「わふ?・・・キャンッ、キャンッ!!」


 見た目は人間なので、忍び込むのには問題ない。


 その言葉に、嬉しそうな鳴き声をあげるハウルなのであった。









 後日、人間の町でとあるものを見つけ、それでハウルと契約を結んだ。

 それを作ったのが誰かなど、欠片も知らずに。


 大抵の人間よりも知能が高く、それを解析出来てしまった。

 そのため、問題ないと判断して使用したのだが・・・。


 クロトの頭のことを忘れていたのは、大きすぎるミスだろう。

 その物には、何重にも隠蔽された仕掛けが、施されていたのだから。


 ダミーのトラップまで仕込まれていた為に、まるで気づけなかった。




 カリスが己の早計を後悔するのは、何時のことになるのやら。

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