異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

ファーナ

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 クロトたちが冒険者だと知ったファーナは・・・。


「そうだったんですか・・・納得です。高ランクと言うと、Aランク、とか?」

「えっと・・・まあ、そんな感じだよ。・・・何とも思わないんだね?」

「えっ?何がですか・・・?」

「僕たちが冒険者だっていうこと、気にしないんだなって。」

「ええ、特に冒険者に思うところもありませんし・・・?」


 全く分からないといった様子のファーナ。


「嫌いな父親と同じ冒険者であっても?」

「そうですよ?同じ括りで判断することじゃ無いですから。」


 クロトはファーナの瞳を見つめるが、嘘や誤魔化しの気配は感じない。

 ファーナは本当に拾い物かもしれない貴重な人材だと思ったクロト。


 嫌いな人が冒険者というだけで、冒険者全体を嫌わない。

 クロトからすれば当然のことだが、それを自然に思える人は、意外と少ない。


 スキルと合わせて、途轍もなく貴重な人材だと確信した。


「お母さんも、一概に判断せず、相手をよく見るように言っていましたから。」

「ん・・・。いい、お母さん、だね・・・。」


 クロトもエメラと同感である。

 つくづく、惜しい人を亡くしたものだ。

 生前に出会っていたら、好意を持った可能性すらあっただろう。


「そっか・・・。あ、ちなみに、僕はSSランクだよ。」

「私、は・・・Sランク・・・。」

「・・・・・・えっ?」



 数秒後、ファーナの絶叫が、辺りにこだました。






「驚きすぎだよ、ファーナ。」

「でででですけどっ!「深淵」様と「風姫」様とは知らずに大変失礼をっ!?」


 ファーナは、見ていて面白い程に狼狽えている。

 SSランクの冒険者をボロ家に招いて鍋をよそわせたのだ。

 その狼狽えようも納得できる。


 この辺りの風潮とは関係なく、高ランク冒険者には純粋な尊敬がある様子。

 ちなみに、「風姫」はエメラの異名で、魔王の侵略時につけられた。

 どちらも活躍したので、大変有名となっている。


「僕はね、やりたくないことは、基本的にやらないから。」

「ん・・・。クロト、が・・・やりたく、て・・・やった、こと・・・。」


 だから気にするなと言い聞かせる二人。

 ファーナは、今更取り繕っても遅いと判断して、謝るのをやめた。




「それで、ファーナの父、いや、男の話なんだけど・・・。」

「はい、私にわかることであれば、何でもお答えします。」


 仮にも父親ではあるが、情報を売り渡すことに何の躊躇いもない様子。

 当然と言えば当然なのだが。


「ランクや特徴。それと、村に来るペースと前回いつ来たか、分かるかな?」

「ランクは不明。赤い髪で、村へは三月に一度。前回は丁度三月程前です。」


 クロトは男の特徴を聞いた後、神の瞳で調べてみた。

 すると、村に近づくそれらしき人間が居た。

 タイミングが良いのか悪いのか。


 強さ的には・・・意外と強く、S-ランク並みはある。

 小さな村で逆らえる人間など、居ないはずである。


「その男の名前って、ウーズ、じゃないかな?」

「えっ・・・はい、そんな感じの名前だったと思います。」

「・・・言いにくいんだけど、この村に近づいてるよ。明日辺り来ると思う。」

「・・・・・・。」


 クロトの情報を聞いて、ファーナは黙り込んでしまった。

 その表情には、嫌悪感と僅かな恐怖が宿っていた。

 嫌悪感は分かるが、恐怖については分からない。

 暴力を受けた訳ではなさそうだが。


「ん・・・。何か、怖い、の・・・?」


 エメラが心配そうに抱き締めながら、尋ねた。

 ファーナは、自意識過剰かもしれないと前置きしてから、正直に話し始めた。


「実は、前回来たとき、いやらしい目で見られた気がして・・・。」

「前回、ということは、ファーラさんが亡くなったあたりかな?」

「はい・・・母が無くなる一週間ほど前になります。」

「ん・・・。お母さん、は、なんて・・・?」

「亡くなる直前、次に男が来る前に、逃げるように、と。」


 クロトの天感も同じことを告げている。


「どうして残っていたのかな?」

「そろそろ出るつもりでしたが・・・この家を離れ難くて、つい・・・。」


 大変よく理解できる話だったので、クロトとエメラは、なるほど、と頷いた。

 なにせ、二人でさえ、妙な離れ難さを感じるくらいだ。

 ファーナの離れ難さは、想像に難くない。


 クロトは意を決して、重要な話を始めた。


「それで、大事な話があるんだけど・・・。」

「はい、なんでしょうか?」


 クロトは、単刀直入に述べた。









「ファーナ。僕は、(スキルのことを含めて)君のことが欲しい。」





 ファーナは意味を理解すると、一瞬で耳まで赤くなった。




 その様子を見たクロトは、


(・・・失敗したね。前にも同じようなミスをした気がするけど、いつだっけ?)


 という風に思ったとか。





 ほぼ同時刻、ローナがくしゃみをして、サラに風邪の心配をされていたのだった。


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