異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

スソウ村

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 クロトとエメラは、ブライア高山を下っていた。

 途中でスカイラダールの町を通過して、更に下山。


 その先は、スカイブルナの町とは反対方向。

 ブルムンドという小さな村があるという話を、スカイラダールで聞いている。


 二人はそこへ向かっていた、のだが・・・麓付近で事件。


 少女が魔物に追いかけられていたのだ。

 村娘風の少女だったので、クロトは案内役に丁度いいと判断して、助けた。

 助けた理由は、相変わらず酷いものだが、そんなことを知らない少女。


「あ、あの・・・ありがとうございましゅっ!」


 クロトに見つめられ、顔を赤くしてお礼を言ったが、見事に噛んだ。


「落ち着いて・・・。僕はクロト。君の名前は?」

「わ、私はファーナ、ですっ!」


 青髪の少女ファーナは、緊張しながらも、自己紹介を済ませたのだった。






 その後、村への道中、話を聞いていくと、少しだけ事情があることが分かった。


「その、母親が亡くなってしまって、村に居づらくて・・・。」

「それで、ちょくちょく山へ採取に、か・・・。」


 ファーナの母親が病で亡くなり、村に居づらいというのは、微妙に納得し難い。


「居づらいというのはどうして?それに父親は?」

「あの男、父は・・・冒険者で、滅多に帰って来ませんが・・・。」



 言い方からして、父親を嫌っているのが良くわかる。



 なんでも、母親は優しくて良い母親だったが、父は違う。

 乱暴者で、母親と結ばれたのも、半ば無理やりだった。


 母親も父を愛してなどいなかったが、ファーナが生まれたため、結婚。

 そうして男の施しを受けないといけない程、困窮していた。


 当時十八歳だった母親もその少し前に両親を亡くしており、生活力は低い。

 訳あって両親と村に移住したが、元はよそ者であり、町村に頼れる人も居ない。

 自分だけならともかく、娘もとなると厳しいものがある。

 ファーナの為に涙を呑んで、妻となる事を決意。


 だが、男は碌に家計の為に働かなかった。

 自分の稼ぎは、自分だけの為にあっという間に使い切る。

 そのくせ、時折、母親を抱きに来る日々。


 それでも偶に、死なせない為の僅かなお金を渡されていた母。

 自分でも少しだけ稼いではいたが、ほんの少しだけ。

 何の取柄もなく、身分のハッキリしない女性の稼ぎなどそんなものだ。

 つまり、男の施しが無くなると娘のファーナが困るため、拒めない。


 男が村にやって来た日は、いつも辛そうだったらしい。



 そんな日々を続けること、約十四年。


 栄養不足が祟ったのか、数か月前に母親が他界。

 自分のことを顧みず、ファーナに沢山食べさせたのも、早世の原因か。

 いつも具合が悪いのを上手く隠していたために、ファーナも気づくのが遅れた。


 そして気づいたときには既に手遅れ。

 何故もっと早く気づいてあげられなかったのか。

 そう思ったファーナは、母の亡骸の前で散々泣いた。



 父親の男が乱暴者だったため、村においてファーナと母親は疎まれ気味。

 男自体を殆ど疎まない辺り、この辺りの風潮が良く表れている。


 それが、村に居づらいという話に繋がる。

 採取での生活費稼ぎも、母、ファーラに教わったそうだ。






 何と言うか、重い話だな、と思ったクロト。


 男がそれなりに強者であったため、文句を言う人も居なかっただろう。

 そんな中、明確に男を嫌っているファーナ。

 必死に生きようとしている姿からも芯の強さが伺える。

 きっと母親譲りなのだろう。



「あ、そろそろ村に着きます。」

「ああ。・・・確かに、小さな村だね。」

「はい。冒険者ギルドも無いような村でして・・・。」

「ん・・・。それ、は・・・珍しい、ね・・・。」

「ということは、宿の類もなし、か・・・。」


 今晩は断絶空間で寝ようと決めたクロト。


「あの、家はとても、人様が眠れるような家では無くて・・・済みません。」

「ファーナが謝る必要は無いよ。何とかするから、大丈夫。」


 クロトに微笑まれ、赤くなるファーナ。

 クロトは失敗したかと思いつつ、村へ入った。


(完全に恋する乙女の目だよね、あれは。困ったな・・・。)


 万が一告白されようものなら、断るしかない。

 だが、そのショックで気力を無くされるのも後味が悪い。

 死なれでもしたら尚更だ。


(そういえば、解析してなかったね・・・・・・って、レアスキル?)


 ファーナの解析結果には、レアスキル「植物探知」が存在した。

 それを見たクロトは、詳しく解析。


 結果、探知範囲内にある、欲しい植物の位置。

 それを何となく知ることが出来るスキルだと分かった。


 クロトは思った。




(地底樹だって植物、だよね・・・?)

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