異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

毒雨の都

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 クロトは数日間、カザロフを揶揄ったり、マリアを揶揄ったりしながら過ごした。

 そして、そのようにしばらくのんびりした後、次の目的地を定めた。


 向かうのは、旧レモニア王国、毒雨の都。




 曰く、そこはかつて栄えた都だった。

 曰く、突如、紫の雨が降り出した。

 曰く、その雨に触れると、一瞬で死亡する。


 それが、世界七大危険地帯の一角、毒雨の都。




「その言い伝えは間違っているよ?」

「わあぁぁぁぁっ!?」


 誰も居ないはずの書庫で、第一王子のリオンが悲鳴を上げた。

 突然横から話しかけられたら、そんな反応にもなるだろう。


「リオン、余所の家で騒いだら迷惑だよ?」

「誰のせいだと思っているのかな!?大体、ここは王城だから、僕の家だけど!?」


 リオンがセミロングの金髪を振り乱しながら、クロトに詰め寄る。

 左手は胸に当てられており、呼吸も荒いので、相当驚いたようだ。


「・・・リオン、王城を私物化。マイナス二点・・・と。」

「それは何の点数だい!?途轍もなく嫌な予感がするんだけど!?」

「リオンがこの国の次期国王に相応しいかどうかの点数だけど?」

「なっ・・・!?そんなものをつけていたのかい!?」


 驚愕して目を見開くリオン。

 そして、当然のことながら、点数が気になる。


「クロト君、参考までに、どういう方式なのか聞かせてもらえるかな?」

「構わないよ。持ち点からの減点方式で、ゼロになったら不適格、かな。」

「初めの持ち点は何点なんだ?」

「十点だけど?」

「既に残り八点じゃないかっ!」


 リオンは残り点数が五分の四しかないことに焦る。

 そして、不適格になった場合にどうなるのかを考えた。


「まさかと思うけど、国を乗っ取ったりしない、よね・・・?」

「・・・・・・え?」


 クロトはポカンとした顔になった。

 リオンは、国の乗っ取りが無いことを確信し、安堵のため息を吐いた。


「いや、そんな面倒なことせずに、一度、国を終わらせるけど?」

「予想よりも更に酷かった!?冗談だよね!?そうだと言ってくれ!!」

「・・・普通に本気だけど?」

「あああああっ!?」


 リオンは頭を抱えて叫びだす。

 そんな未来は欠片も想像したく無かった様だ。


 だがそこでリオンは、まだ八点残っていることを思い出した。

 これを維持出来れば何の問題も無いのだと、自分に言い聞かせる。

 数秒後、リオンは立ち直った。



「ちなみに、残りの点数は三点だからね?」


 一瞬でへし折られたが。


「ちょっと待ってくれ!何故、残り三点になっているのかな!?」

「えっと・・・・・・仲の良い友達が居ない、マイナス五点。」

「どこから突っ込んでいいのか分からないよっ!?君は僕の友達だよね!?」


 この間、ちゃんと認めて貰ったはずだ、と主張するリオン。

 クロトも、そのことは覚えているが、重要な要素が抜けていることを指摘した。




「確かに友達だけど・・・僕たち、別に仲良くは無いよね・・・?」

「クロト君の馬鹿ぁぁぁぁっ!?」










「・・・それで、その項目だけ、そんなに減点が高い理由は?」

「仲の良い人が居ないと、安心して力を借りられないよね?」


 一人で出来ることなど限られている。

 だからこそ、信頼できる相手は必要不可欠。

 一人で全てのことを出来ないとは言い切れない。

 だが、効率が落ちるのは間違いない。

 クロトとて、それが分かっているから、財閥をつくったのだ。


 クロトはそのことを、懇切丁寧に、リオンに教えた。


「・・・信頼できる相手なら、クロト君が、居るんだけどな・・・?」


 髪の毛を指でクルクルさせながら、恥ずかしそうにそう告げたリオン。

 以前も似たようなことがあったが、中性的な容姿だと、やはり絵になる。


「・・・リオン。信頼関係はね、相互性が無いと意味が無いんだよ?」

「クロト君、僕、泣いても良いかな?」


 リオンは涙目になりながら、そう言ったのだった。









「ところで、毒雨の都の言い伝えが間違っているというのは?」


 ようやく本題に入ることが出来たリオン。

 友達云々は、とりあえず横に置いておくようだ。


「ほぼ創世の頃からある毒雨の都に、人が住んでいたはずが無いからだよ?」

「・・・なんで創世の頃からあると思ったんだい?」

「何でって・・・この箱庭世界の壁に当たるんだから、当然だよね?」

「・・・もしかして、聞いてはいけないことを聞いてしまったのかも。」


 リオンの顔が青ざめていく。

 そんなリオンに、クロトはとどめを刺した。


「外側の世界と比べれば、天種なんて、優しい存在だよね。」


 リオンは、あんまりな内容に、気絶してしまった。

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