異世界隠密冒険記

第二部「創世神降臨」編

星十二天「獅子」

　ボス部屋の中に入って戦闘を開始する。


　まずは光輪と闇輪を同時生成。

　これで敵の能力値は、平均４５００辺り。

　クロトは光輪の効果で、殆ど同じ能力値となっている。


　リュノアの能力値は劣っているが、戦闘能力では決して引けを取らない。

　創世種としてのポテンシャルもあるし、戦い方も上手い。

　それに最近は、クロトでさえ背筋が寒くなるような策を巡らせる。


　基本的にクロトが抑え、リュノアは空からの遊撃。


　と、獅子はいきなり咆哮。

　衝撃波のような攻撃をしてくる。


「キュオオオオオオオッ！！」


　クロトが対応する前に、リュノアが咆哮で相殺してしまった。

　スキルには無いので、種族的なものだろうか。


「極天一閃・全絶！」


　クロトは、咆哮を相殺された獅子へ接近して攻撃。


「グラァァァ！」


　軽く吠えた後、獅子はクロトの攻撃を回避。

　しかし、それは誘導でしかなかった。


　事前にリュノアが漆黒魔法を発動させた場所へ退避してしまった獅子。

　リュノアの「漆黒魔法・多重影縛」に呆気なく拘束された。

　そして今度は本命の攻撃。


「極天十六夜連閃・全絶！」


　拘束されて、得意の速力を発揮できない獅子。

　十六撃目を喰らった後、ようやく拘束から脱出。

　クロトと正反対の方向へ跳び退る。


「キュオオオ！」


　そこへ、黒竜王モードとなったリュノアの、黒竜魔法が炸裂。

　黒炎吐息、なのだが・・・その威力は以前と桁違い。

　ダンジョン内で使うクロトの天落世界に、少し劣るほどの威力となっている。


　着地の瞬間に、そんなものをまともに喰らった獅子。

　全身酷い火傷だらけとなっている。

　空間魔法も混ぜていたようで、打撃を喰らった跡が痛々しい。


　なぜタイミングピッタリで炸裂したのか。

　それは、リュノアが多重影縛の拘束をわざと緩め、誘導したからだ。

　あの状況なら、確実にクロトと正反対の位置へ退避すると読んで。


　黒竜魔法の弱点は、溜めが必要で隙が出来やすいこと。

　そして、タイミングを合わせるのが難しいこと。


　今回、リュノアはその弱点を、クロトを案山子扱いして誘導することで対応。

　クロトを信頼しているからこそ出来ることだ。


　獅子のHPは既に一割前後。

　切り札である獣系魔物の召喚を行ってきた。

　召喚された魔物の中には獣皇帝も居る。


　使わせないで倒すことも出来たが、経験値的においしいので、敢えて放置。

　お決まりの一手であるため、対応も容易。


「キュオッ！」


　リュノアが「漆黒魔法・多重影針」を発動。

　ブレスに紛れさせてばら撒いていた影が、一瞬で地面から伸びる。

　針状のそれは、魔物たちを針鼠状態にした。


　それと同時に、獅子に迫っていたクロトとリュノア。


「リュノア！」

「キュ！」


　それだけで指示を理解し、接近しながら魔力体になっていくリュノア。

　そのままクロトを包み、漆黒の炎が揺らめく、黒竜装モードへ。


　黒竜装モードになって更に加速し、獅子の意表を突くことに成功。

　隠密者を発動し、神水晶との相乗効果も発動。

　以前は敵の目の前で消えるなど出来なかったが、今は違う。


　神天魔のブーツによる急加速も使用し、通り抜けざまに剣技を放つ。


「神天龍十字閃・極黒！」


　十字型に交差する二連撃を喰らった獅子。

　何が起きたのか分からないまま四分割されて、絶命した。


　ズザザザザッと音を立てながら、クロトは停止した。


　直後、リュノアがクロトから離れ、幼竜モードに。

　少し苦しそうにしているので、進化が始まると思われる。


「キュ・・・ッ！」


　数分後、リュノアの姿が黒竜王モードになり、そこから更に変化していく。


　十数分後、少し時間は掛かったが進化が終了し、体の変化も止まった。


「おお・・・大きくなったな、リュノア？」

「キュオオオ？」


　鳴き声は余り変わらず、可愛らしいままのようだ。


　全体の大きさは十メートルを優に超え、二十メートル近い。

　それでいて、とてもスラッとした漆黒が基調のボディ。

　顔もシュッとしていて、とても格好良い。

　広げられた翼は、鋭利かつ強靭。

　翼で敵を切り裂くことも出来そうに見える。


　その後、リュノアに頼んでステータスを解析させてもらった。





黒竜皇「リュノア」
種族　魔物　創世種
レベル　５０
ＨＰ　　４０５０
ＭＰ　　３６５０
筋力　　１５５０
防御力　１３５０
魔力　　１５００
速力　　１７８０
幸運　　　　８０


ユニークスキル
可変魔力生物７　


レアスキル
漆黒魔法９　黒竜魔法９　竜眼９　竜感９　竜力９　竜翼１


スキル
全耐性　即死無効　思考加速９　並列思考８
空間魔法９　解析８　連携６




（何と言うか・・・強い。既に天種の能力値にも、かなり迫っているね。）


　うかうかしていると本当に追い抜かれそうなステータスに驚愕するクロト。

　竜翼というスキルは、飛行能力上昇や、翼での攻撃が可能となる。

　竜爪などのスキルが無いのは、竜種の基本性能だからだろうか。


　そこまで考えたところで、リュノアが幼竜化して、クロトに飛びつく。


「キュー！」

「おお、リュノア。よしよし、また一段と強くなって・・・よく頑張ったね。」

「キュオッ！」

「こらこら、くすぐったいよ・・・！」


　クロトはその後しばらく、リュノアとの戯れを続けたのだった。