異世界隠密冒険記

リュース

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第二部「創世神降臨」編

解決報告

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「世界樹も、だいぶん落ち着いたみたいよ。」

「・・・保留ではありますが、見通しが立ったために落ち着いたのでしょう。」

「・・・ええ、それで合っていると思うわ。」


 セーラとクロトは互いにそのことを確認し合って、一息吐いた。


「では、依頼は完了ということで。セーラさんの力を借り過ぎた気はしますが。」

「それは別にいいんだけど・・・呼び方が戻って無い?」

「・・・・・・えっ?」


 クロトは首を捻っている。

 どうやら無自覚で呼び捨てにしていたらしい。


「さっきは、私をセーラと呼び捨てにしていたのに・・・。」

「それは・・・すみません。次からは気をつけます。」


 覚えは無いが、嘘では無さそうなので、素直に謝るクロト。

 セーラは、不満そうな顔を、さらに不機嫌なものに変えた。


「・・・私の事は、セーラと呼んで。良いわね?」

「えっ・・・でも、それは・・・・・・分かりました。」


 断れる雰囲気でも無いので、要求に応じた。


「分かったなら、早速呼んでみて。それと、敬語も無しで。」

「・・・分かった。これからはそうさせて貰うよ、セーラ。」

「うんうん・・・大変結構!」


 そんな訳で、セーラとクロトの関係性は、少し変化したのだった。

 この先、更なる変化があるかどうかは・・・・・・誰にも分からない。










 エルフの里に戻って来た二人。


 雨が降るまでは里に滞在することになったのだが、いつになるかは不明。

 とりあえず、夕食にしようということになった。


 そのため、途中でエメラとカレン、マリアを拾おうとしたのだが・・・。


「・・・・・・。」


 マリアは意味ありげな視線を向けてくる。


「・・・マリア、どうかした?」

「・・・いえ、なんでもありませんわ。」


 マリアは色々考えた末に、何も言わないことにしたのだった。


 マリアはセーラとクロトの関係が変化しているのに気づいた。

 そしてそれが、更に変化する僅かな可能性も。


 マリアが願うのはただ一つ。

 どうかクロトが苦しみませんように、と。




 エメラは表情や反応には一切出さなかったが、クロトの心情の変化に気づいた。

 時折、ほんの一瞬見せていた辛そうな表情。

 それも殆ど無くなり、少し申し訳なさそうな表情に留まるように。


 セーラのおかげなのだろうと理解し、密かに感謝した。





 カレンはというと、今のところは気づいて居ないようだ。

 元々、感情の機微に敏感なタイプではないゆえに、仕方が無い。

 とはいえ、その内気づくだろうと推測されるが。


 何となく雰囲気が良くなって、嬉しいカレン。



 すぐに気づいたエメラやマリアがおかしいのだ。

 特に、ほんの一瞬しか表に出さない怒りを感じ取ったエメラ。

 クロトが全力で隠していた感情を察するなど、敏感というレベルではない。




 三者三様の想いを抱きながら、この日の夕食を迎えたのだった。










「そんな訳で、雫以外の目的は果たせたよ?」

「どんな訳ですのっ!?大体、他の目的なんて殆ど聞かされてませんわよ!?」

「世界樹の異変の調査に来たのでは無かったのか・・・?」

「ん・・・。それ、なら・・・もう少し、だけ・・・滞在、だね・・・?」


 クロトの説明に対する反応も、三者三様。

 それぞれの特徴がよく表れている。


「そうか・・・世界樹の異変は収まったのか・・・。」

「クロト、流石なのです!」


 レフィとユフィは大変喜んでくれた。

 セーラは喜ぶ二人を、微笑ましそうに見つめている。


 クロトは、詳細な説明を求めてくるマリアに、端的に説明。


「要は、今のうちに子供たちと遊んでおいて、ということかな?」

「・・・大体分かりましたわ。」


 マリアはそれだけで、おおよそのところを理解してしまった。

 どんな頭をしているのだろうか。


「・・・マリア、頭の中を見せて欲しいんだけど。」

「そんな真顔で言われても嫌に決まっていますわ!」

「でも、どんな頭をしていれば理解できるのか、気になるんだよね・・・。」

「わたくしは、あなたの頭の中身の方が気になりますわよっ!」


 自分の事を棚に上げて、暗にマリアの頭が異常だと伝えたクロト。

 当然の如く、マリアは反論したが、糠に釘状態。


「はいはい。夕食ができたから、話は後でお願いね。」


 セーラが話を遮って、残りは夕食後となった。







 そして夕食後、世界樹の件で、クロトは何があったのかを尋ねられた。


「・・・確か、事の始まりは、セーラが僕に、後ろから抱き着いてきた事かな?」

「ちょっ、クロト君!?そんな所まで話さなくてもっ・・・!?」

「「「「「・・・・・・。」」」」」


 セーラは、クロトが適当に誤魔化して伝えると思っていたので、動揺している。

 クロトの真面目さを甘く見ていたのかもしれない。

 咎めることで、肯定しているのと同じ効果が生じるのだが・・・。


 一同、特にレフィは、何とも言えない空気に包まれるのだった。

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