異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
231 / 600
第二部「創世神降臨」編

セーラと談笑

しおりを挟む
 驚かせたことへの許しはあっさり出された。


 現在二人は、世界樹の根元に座って談笑している。


「なるほど。変わったユニークスキルよね・・・。」

「セーラさんのユニークスキルも相当特殊だと思いますよ?」

「まあ、ね。もっとも、ユニークスキルなんて、大概特殊なんだけどね?」

「言えてますね。特殊じゃないユニークスキルとか、見たことありませんし。」


 クロトは驚かせたお詫びとして、隠密者のことを教えていた。

 セーラもお返しとばかりに、自分の持つユニークスキルのことを教えてくれた。


 セーラ本来、もっと警戒心が強いタイプで、そんなにあっさりと教えはしない。

 だが、クロトと談笑している内に、ポロッと漏らしてしまった。

 クロトと居るととっても落ち着くという、謎の効果のせいだと思われる。


「セーラさんとこの場で戦ったら、勝てる気がしませんね・・・。」

「それならそれで、別の手を考えそうな気がするんだけど・・・?」

「・・・・・・。」

「なんで黙ったのかしらねー?」


 セーラが、ぐっとクロトに近づきながら、そんな疑問を発した。


「・・・まあ、勝てないなら、勝てる方法を考えるのが基本ですから。」

「おっ、認めたわね・・・!それで、例えばどうするの?」

「そうですね・・・こうします。」


 クロトは収納からヘンテコなお面をセーラに見せる。


「っ?・・・何このお面!?ヘンな顔・・・!」


 セーラがお面を注視してしまい、笑いを堪えている隙に、隠密者を発動。


「ふふふっ・・・っ!?」


 背後から首に手を当てられ、固まるセーラ。

 身動きを取れないまま瞳だけ動かして、クロトの居た正面を見る。

 そこにはやはり、クロトの姿が。


 クロト・・・の分身は、首から手を退けて、セーラの正面に。


「今のは、どういう・・・?常に気配は把握していたはずなのに・・・。」


 セーラが訝し気に尋ねて来たので、クロトは解説を始めた。


「こっちは隠密者で生成した分身です。」

「分身・・・?そんなこともできるんだ・・・!」

「僕に集中する余り、生成と同時に隠密した分身に、気づきませんでしたね。」

「あぁ・・・なるほどね。これはやられたわ・・・。」


 セーラは両手を挙げて降参のポーズ。

 クロトが本気だったら、今ので重傷を負っていたのは間違いないという判断だ。

 もっとも、彼女のスキルによって、決定打にはならない可能性が高いが。


「でも、教えてしまっても良かったの・・・?」

「・・・・・・全くもって、良くありませんね。」

「えええっ・・・!?えっと・・・忘れた方がいいかしら・・・?」

「・・・いえ、お気になさらず。話した僕が悪いので。」


 それほど重要なことではないとはいえ、あっさり手の内を晒した自分に驚く。

 どうにも、セーラには警戒心を持ちづらい。

 そこのところに原因がありそうだと、クロトは推測した。


 この話は引っ張っても仕方が無さそうだと思い、話を変えた。


「ところで、セーラさんは何をしに来たんでしたっけ?」

「えっ?・・・ああ。折角だから、クロト君にお昼ご飯を届けに来たの。」


 やって来た目的を話しつつ、クロトに昼食を手渡す。

 クロトはそれを受け取りつつ、感謝と謝罪。


「昼食を、ですか?わざわざすみません。ありがとうございます。」

「気にしないで?世界樹の様子を見るついで、なんだから。」


 真剣な顔でお礼を言われて照れたのか、パタパタと手を振って誤魔化すセーラ。

 とても高齢とは思えない反応だ。

 それを言ったら、マリアもそうなのだが。


「それで、なんだけど・・・調査の方はどう?」

「・・・何とも言い難いところですね。先程、何か掴めそうだったんですけど。」

「えっ!先程って、私が来る前のことよね?」

「いえ?セーラさんが僕に驚いて跳び退った辺りです。」

「ちょっ!?思い出させないでよね・・・!心臓が止まるかと思ったんだから。」


 セーラは胸に手を当てている。

 余りに驚愕し過ぎて、あの時の事は、一生忘れられないとか。


「それはすみません。でも、あの時何かを掴めそうだったのは確かなんです。」

「んー・・・何が分かりそうだったの?」

「そこまでは・・・。ただ、セーラさんの雰囲気から何かを感じ取ったのかと。」

「私の雰囲気・・・?戦闘時の真剣な雰囲気のこと?」

「ええ、それです。」


 クロトは今一つ、掴めそうで掴めない。

 まだ、パズルのピースが足りていないようなイメージだ。

 ピースそのものが無い状態でパズルを完成させろというのは、無理難題だろう。


 もう少し里にとどまって調査を続ける必要があると判断したクロト。


「・・・と、そういう訳で、もうしばらくは滞在することになりそうです。」

「うんうん、幾らでもここに居て良いから、焦らず、ゆっくりしていってね?」



 セーラはどこか嬉しそうに、クロトの滞在を歓迎したのだった。

しおりを挟む
感想 1,172

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

半分異世界

月野槐樹
ファンタジー
関東圏で学生が行方不明になる事件が次々にしていた。それは異世界召還によるものだった。 ネットでも「神隠しか」「異世界召還か」と噂が飛び交うのを見て、異世界に思いを馳せる少年、圭。 いつか異世界に行った時の為にとせっせと準備をして「異世界ガイドノート」なるものまで作成していた圭。従兄弟の瑛太はそんな圭の様子をちょっと心配しながらも充実した学生生活を送っていた。 そんなある日、ついに異世界の扉が彼らの前に開かれた。 「異世界ガイドノート」と一緒に旅する異世界

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。