異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
216 / 600
第二部「創世神降臨」編

世界の状況

しおりを挟む
 王都カラーヴォイス、その王城にて。




「おお、クロト。やっと目を覚ましたのか。」

「ええ、今日の朝に。数日も体を動かせば、元通りに戻ると思いますよ。」

「そうか、そりゃあ良かった。」


 国王エドワードはクロトの目覚めと回復を喜んでいる。

 色々と話すことが溜まっているようだ。


「それで、だ。改めて礼を言うぞ。クロトのおかげで、この国は守られた。」

「防衛案の提供については、僕にも思惑あってのことですから・・・。」

「それでも、だ。お前が居なければ、この国も陥落していたはずだからな。」


 確かに、クロトが居なければそうなっていた可能性は高い。

 それから、気持ち声を潜めて、クロトに確認してきた。


「それと、この国もだいぶん広くなったしな・・・。」

「ええ・・・二か国分ですからね・・・。」


 ブルータル王国とレモニア王国は、カラーヴォイス王国に編入された。

 カリスが滅ぼし、統治者が居ない状態の所をクロトが乗っ取ったのだ。


「本当にウチに編入してもいいのか?なんなら、クロトが収めてもいいんだが。」

「遠慮しておきます。いざという時に役に立てば、それでいいですから。」

「欲が無い上、恐ろしいことを考えるな・・・。国を道具扱いとは・・・。」


 エドワードはクロトの言葉に心底呆れている。


「新しい領土は迷惑ですか?」

「既に復興も終わり、統治の基盤が出来ている。そんな地を貰わない手は無い。」

「ですよね。色々終わらせておきましたし、手間は掛からず税収だけ入ります。」


 エドワードも国王としては、領土拡大は嬉しい。

 戦争をしてまで拡大したいとは思わないが、今回のクロトの提案は渡りに船。

 責任は、すべて魔王たちに押し付けてしまえばいいのだから。


「恐ろしいな・・・お前の財閥。」

「まあ、有能な人材が揃っていますから。」

「その内この国もひっくり返されるかもな・・・。」

「今のままであれば、そんなことにはなりませんよ、きっと。」


 クロトの曖昧な言葉に冷や汗を流すエドワード。

 密かに、子供のリオンを心配した。


「ところで、シンクレア王国の方はどうです?」

「順調だ。王家とグリーンフォレスト家が中心になって復興は終わった。」

「そうですか。そちらは急に計画を変えましたが、上手く行ってなによりです。」

「どんな狙いだったかは知らないが、予定通りとしか思えない機敏さだったぞ?」

「違いますよ。・・・あれ、目的は話してませんでしたっけ?」

「・・・聞いてないぞ。教えてくれるのか?」


 エドワードは嫌な予感がしながらも、好奇心に負けて聞いてしまった。


「ええ、僕がやろうとしたのは・・・・・・神殺しですよ。」

「かっ・・・!?」


 エドワードは口をパクパクさせている。


「おかげ様で、上手く行きました。ありがとうございました。」

「・・・・・・。」


 ついに絶句するエドワード。

 自分がそんな恐ろしい事の片棒を担いでいたと知って、言葉が出ないようだ。


「では、僕はそろそろ失礼しますね。ああ、コレ、ありがとうございます。」


 エドワードから受け取った物を見せ、そのまま去っていくクロト。


「・・・おお。領土ならやるから、いつでも言って来いよ・・・。」


 何とかそれだけ絞り出して、クロトを見送るのだった。











「リオン、やっぱり友達が居ないんだね。」

「出会い頭に何を言ってるのかなっ!?」


 今のは、第一王子のリオンに見つかって、話しかけられたクロトの言葉だ。

 突然と言えば突然だが、クロトからすればおかしな発言ではない。


「だってさ・・・いつ見ても一人で居るよね?」

「それは・・・クロト君が、中々会いに来てくれない、から・・・。」


 セミロングの金髪を指でクルクルさせながら、ぼそぼそとそう言った。


「・・・・・・友達?」

「またこの流れ!?この前、友達だという結論が出たよね!?」

「・・・・・・ごめん、記憶にない。」

「そんなっ!?簡単には忘れないタイプなんじゃ無かったのかい!?」

「・・・・・・・・・・。」

「・・・何か言ってくれよお!?」


 リオンはクロトに掴みかかったのだった。


 クロトはその時、ヘキサアイズ用の魔法陣の事で頭が一杯だった。

 そのために、珍しいことに、忘れてしまったのだ。

 リオンも運の無いことだ。








「・・・それで、僕以外の友達は?」

「・・・・・・。」

「やっぱりボッチのままか。ご両親も心配するよ?」

「・・・クロト君のばかぁっ!」


 リオンは顔を真っ赤にしてクロトを罵倒すると、走り去って行った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。 え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国

てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』  女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。