異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

魔王の侵略 七日目ー2

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 クロトとエメラは暫く抱き合っていたが、状況が状況なので、一度離れた。


「それで、目の前の天種なんだけど・・・一緒に倒すということでいいかな?」

「ん・・・。問題、無い・・・。」


 エメラの答えを聞いて、天種に向き直る。

 そこに居るのは、緑の主、という天種の魔物。

 レベルは99であり、ユニークスキル「緑の支配者」を保持。


 同系統のスキルを解析したことがあるおかげで、詳しく解析できた。

 緑の支配者は、ありとあらゆる緑色のものを支配するスキル。

 周囲を緑に染めることも出来るので、実質、緑をなくすことは出来まい。

 また、近くに緑がある状態で、能力値二倍。

 基本となる能力値は、オール3000で、臨界突破のスキルは9となっている。



「エメラ、作戦は・・・言わなくても分かるよね?」

「ん・・・。」


 エメラが肯定し、戦闘が開始された。


 この戦いの重要ポイントは二つ。


 一つ、緑の支配者による緑を操る効果を、如何に封じるか。


 ハッキリ言って、それを封じなければ勝ち目など無い。

 例えば、体内にある緑色の何かを爆発させられたら、それだけで終わりだ。

 故に、封じる必要がある。


 二つ、明日に響かせないため、限界突破の使用は控える。


 その際、臨界突破を使用して能力値が上昇している敵と、どう戦うか。

 光輪や闇輪、橙の瞳の効果などを合わせ、クロトたちの平均能力値は6000。

 対する緑の主は、8400。

 この差をどう詰めるのか。




 勝負は短期決戦になる。

 クロトもエメラも、そして緑の主も、それを察していた。

 ゆえに、最初から全開。


 緑の主は緑の支配者で能力値を二倍にし、臨界突破も行使。


 クロトとエメラは模倣の鏡で橙の瞳を発動。

 クロトは光輪と闇輪を生成。



 命運を決めるのは初手。



 二人同時に緑の主に急接近する。


 緑の主は、緑の支配者を発動し、クロトたちの体内に緑を確認。

 それを爆破しようとする。

 最初に対象に選んだのは・・・エメラ。


 エメラは自分が狙われていると知りながら、欠片も躊躇わずに接近を続ける。

 そして、爆破された。

 間違いなく致命傷。
 

 クロトはその瞬間、アーティファクトを発動した。

 名称、完治の白玉。

 ありとあらゆる病気を治し、致命傷でも、治癒可能。

 ただし、致命傷を受けてから0,1秒以内に使用する必要あり。


 後者の効果は、グレンが詳しく解析してみて、ようやく分かった。

 タイミングはシビアなんてものでは無い。

 不可能とすら言いたくなるレベルだろう。


 だが、エメラは信じていた。

 以前、この効果を聞かされた時。

 自分なら間に合わせられると、クロトが断言していたのだから。


 だから、致命傷を負うことを分かっていて、突撃した。



 そしてクロトは、何でもないことのように、タイミングを合わせた。


 緑の主の攻撃が発動されるタイミング。

 発動から効果を発揮するまでのタイムラグ。

 効果を発揮してから致命傷を負うまでの時間。


 それらすべてを計算し切って、発動させた。

 0,1秒どころか、その十分の一の時間でも間に合っただろう。


 かくして、エメラは致命傷を受けた状態から生還。

 何事も無かったかのように走り続け、緑の主の元へ到達。

 再び緑の主が爆破する前に、最重要の一撃を与える。


「風雷神烈剣・万断よろずだち!」


 エメラの一撃が緑の主に炸裂。

 表面上は、風と雷のダメージしか受けていないように見える。

 しかし、内側への効果は絶大だ。


 エメラの剣技を受けた緑の主は、この上なく動揺していた。

 自らのユニークスキルがまるで使えなくなってしまったからだ。



 エメラの剣は、緑の主のユニークスキルそのものを切り裂いたのだ。



 そんなことが出来たのには二つの理由がある。


 一つは、エメラのユニークスキル「始祖烈剣術・万」の効果だ。

 このスキルは、あらゆるものを切り裂く。

 例え物理無効であろうが、魔法無効であろうが、問題なく切り裂く。


 だが流石に、スキルと言う概念自体を切り裂くのは不可能。

 そこで重要になってくるのが、神水晶。

 エメラの武器に組み込んだところ、概念すら切れるようになった。

 それが同格のユニークスキルでも、だ。


 ゆえに、現在の緑の主は、ユニークスキルを失っている状態。

 能力値も4200まで下落している。


 流石に、一度に複数の概念は切断できず、臨界突破は残っている。

 だが、これだけで十分だ。

 すでに能力値は逆転しているのだから。


 動揺している緑の主にクロトの剣技が入る。


「神天龍十六夜連閃・極黒!」


 いつの間にかリュノアを纏っていたクロト。

 黒竜装状態の剣技を喰らい、緑の主のHPは残り三割。

 同時に、隠密者応用の効果で必殺の一撃を混ぜた毒を流し込んだ。


 存在自体を破壊されて、HPと関係なくダメージを負っていく。
  

 もはやまともに動けないようだ。


「風雷神烈剣・風天二連!」


 エメラに駄目押しをされて、緑の主は絶命したのだった。


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