異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
186 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

魔王の侵略 六日目ー2

しおりを挟む
 レクスシールの町には、カレンが常駐していた。

 カレンの剣術は、人型である天使と悪魔の相手に丁度いい。




「絶剣九曜連閃・逆流!」


 間近に迫っていた十八体のケルビムをすべて斬り捨てたカレン。

 追加でやって来たケルビム四体も、天剣八本で貫く。

 カレンの始祖天剣術・絶は天剣にも及ぶので、狙いに狂いはない。



 時間も夕刻を過ぎたころ、この日最後の試練が。


「・・・セラフィムか。私一人だと時間が掛かるな。」


 決して勝てないという訳では無いのだが、時間は掛かるし消耗も大きい。

 素直に増援を呼ぶことにした。


 少ししてやって来たのは、クロトの分身。

 転移直後に、セラフィムの背後から攻撃。


「神天一閃・龍絶!」


 セラフィムは察知すら出来ず、縦に真っ二つに。


「じゃあ、あとはよろしくね、カレン。」

「ああ、ありがとう、クロト。」

「どういたしまして。」


 僅かに微笑まれて鼓動が跳ねるカレン。

 戦場なのですぐに平常心を取り戻して、再び戦い始めた。


 既に、斬り捨てた天使と悪魔は、数えきれない。










 他の町にも、高ランク冒険者が常駐していた。

 ミレアイルドの町へはマリア。

 ソーラドールの町へはナツメ。


 飛行型魔物へは空を飛べるマリア。

 死者の迷宮から出てくる霊体系魔物は、ナツメが相手にする。

 悪くない配置だ。


 ファシアド付近はだいぶん落ち着いているので、常駐はさせない。



 ミレアイルドの町では、マリアがエンプレスハーピーと空中戦をしていた。




「天魔法術・天玉!」


 マリアが五感を失わせる天玉を、大量にばら撒いた。


 両者共に、それに当たらないように戦闘している。

 マリアは操作性の高い白羽を六枚駆使して、天玉を全く苦にしない。


 女帝ハーピーは苦労しており、やがて交わしきれずに衝突、五感を失った。


「天魔剣・楽園!」


 その瞬間を狙っていたマリアの剣技が炸裂。

 闇と光を纏った剣技は敵を一刀両断にし、絶命させた。


 天玉を消して周囲を見渡す。

 そして何も居ないことを確認して、一息吐いた。








 ソーラドールの町では、ナツメが霊体系魔物を斬り捨てていた。


「ふう。一休みするでござるか。」


 周囲の魔物が全滅し、ナツメは休憩することを決めた。


 ナツメは元々S-ランクに相応しい実力だったが、クロトの教えを受けて成長。

 そして、抜刀術の技術の足を引っ張っていた身体能力。

 これも、旅行中にレベルが大幅に上がったことで改善された。


 刀の効果も合わせれば、既に父親のシュウヤとも渡り合える強さを誇る。


 王種までのアンデッドなど、片手間に倒せる。

 しかし、たった今現れたのは、別物。


「・・・死皇帝、でござったか。闇魔法はまずいでござるな・・・。」


 ナツメは魔道具を使い、大至急連絡を入れた。


 その間にも、死皇帝が魔法を構成する。

 そして、回避不能、防御不能のそれを発動し・・・


「魔法吸収せし黄金の瞳、発動!」


 ・・・転移してきたディアナがそれを吸収。


「抜刀術・鳳凰!」


 ナツメが隙だらけの死皇帝に攻撃。

 速すぎる刃に、鎌での迎撃が間に合わず、直撃。


「納刀術・影無!」


 軌道の見えない一撃がとどめとなり、死皇帝は命を落とした。






「ディアナ殿、助太刀助かったでござるよ。」

「気にしなくてもいいわよ?お互い様なんだし。」

「そうでござるか?その心の広さ、流石はクロト殿の恋人候補でござるな。」

「ちょっ!?何よそれっ!?どういうことっ!?」


 ディアナは、唐突に意味不明なことを言われ、ナツメを問い詰めた。


「どういうことと言われても・・・恋人方の間では有名でござるよ?」

「有名!?何でそんなことになってるのよ・・・!?」


 ディアナは顔に両手を当てて、狼狽え始めた。

 ナツメはディアナの想いを確かめるべく、尋ねてみた。


「ディアナ殿は、クロト殿のことを好きでは無いでござるか?」

「・・・・・・クラッと来た時期もあったけど、今はそんなんじゃないわよ。」

「・・・・・・。」


 真剣な瞳でナツメを見つめながら断言したディアナ。

 その瞳に動揺の色は無く、嘘を吐いているようにも見えない。


 とりあえずは納得しておき、この日の防衛戦は終了したのだった。






 六日目を終えて、シンクレア王国とブルータル王国はボロボロだ。

 特に後者は、大半の町が陥落している。

 シンクレア王国も、被害が少ないのはグリーンフォレスト領だけ。

 東国ジャンゼパールは魔物が少ないので、なんとかなっている。




 そして、明日は七日目。

 魔王カリスが全力で攻勢に出始める。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

切なさを愛した

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

その距離が分からない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:7

【R18】この恋止めて下さいっ!!

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

思い出を売った女

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:4,118pt お気に入り:744

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:7

可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy
BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:872

ヒロインではなく、隣の親友です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

孤独

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもらしの想い出

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:15

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。