異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

魔王の侵略 四日目

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 魔王の侵略四日目。

 この日を耐えれば折り返し地点な訳だが、状況は微妙。


 相変わらず、カラーヴォイス王国の死者は驚くほど少ない。

 回復薬と、救助方法の徹底化が死者の数を減らしている。


 魔物たちの内訳はかなり変化した。

 現在は、通常種四割、上位種三割、最上位種二割、支配種が一割前後。

 数は、やはり数えきれない。

 一万は下らないと予想されるが・・・。


 他の国では、散々たる有様になっていた。

 シンクレア王国と東国ジャンゼパールは比較的マシだが、被害は多い。

 レモニア王国など、すでに死者が山のようにできている。


 カラーヴォイス王国にも救援要請が来たが、エドワード国王は拒絶。

 与えた情報に耳を貸さず、何の対策もしなかった付けが回って来ただけだ。

 自国も危険な今、エドワードは助ける必要性を感じなかった。


「そこを何とか!我が国は絶対絶命なのだ!」

「何度も言わせないでくれ。その要請はお断りいたす。」

「見捨てるのか!?」

「見捨てるも何も。貴殿はこちらの情報を信じず、馬鹿にしたではないか。」

「ぐっ、その口の利き方はなんだ!私はレモニア王国の第一王子だぞ!?」

「私は国王なんだがな・・・。」


 結局第一王子は、怒って帰って行った。

 救いようの無いバカであったようだ。








 ここはソーラドールの町付近。

 ソフィーヤ雪山第二防衛砦。

 時刻が午後に突入したころ、焦ったように伝令がやって来た。


「伝令!スノーウルフの・・・王種です!第一砦を突破されました!」

「何だとっ!?もう王種が現れたのか!?」


 王種と言えばレベルは40~50。

 単独で倒すならば、最低でもA-ランク。

 欲を言えばAランク冒険者を複数当てたい。

 しかし、ソーラドールの町に、Aランクの冒険者は居ない。


 数で押すのも、現段階では避けたい。

 乱戦だと死者が出やすいし、戦力の消耗は悪手だ。


 指揮官が応援の要請を頭に浮かべた時、ある冒険者が発言した。


「それ、私が戦うわ!」

「ちょっ、ディアナ先輩、何言ってるんですか?」


 ランクC冒険者でしかないディアナだ。


 指揮官が無視して考え込んでいる間にも、敵は迫っている。

 応援の要請を決めたとほぼ同時に、スノーウルフが砦の前に辿り着く。


 冒険者たちにアイスブレスを吐いた。


 そこへ割り込んだのはディアナ。


「魔法吸収せし黄金の瞳、発動!」


 その言葉を合図にディアナの瞳が黄金色に輝く。

 そして、彼女の掌がアイスブレスを吸収した。

 驚愕しているスノーウルフに、ディアナはカウンター攻撃。


「魔力開放!火属性付与!・・・メガフレイムブレス!」


 アイスブレスの何倍もの威力を誇るフレイムブレスが、掌から放たれた。

 あっという間にそれに呑み込まれたスノーウルフ王種は、絶命した。


「・・・・・・。」


 指揮官や冒険者たちは、呆然としている。

 そんな中でもディアナに話しかける存在はアイシアのみ。


「ディアナ先輩!魔力の開放は奥の手なんですよね!?」

「・・・まあ、仕方ないわよ。そうしないと勝てないんだから。」

「今回は上手く行きましたけど・・・物理タイプが来たらどうするんですか?」

「その時は・・・・・・アイシアに任せるわよ。」

「私はまだDランクですよ?無茶苦茶言わないでください・・・。」


 アイシアは頭を抱えたくなった。

 当初は尊敬できる先輩冒険者だった。

 今でも尊敬はしているのだが・・・。


 その様子を見ていた指揮官は、ディアナの運用方法に考えを巡らせたのだった。









 四日目も終盤に差し掛かり、王種もちらほら現れるようになった。


 シレーマの町でも王種クラーケンが現れ、シェンドが直接討伐した。

 多少の怪我はしたが、低級回復薬で完治している。


「お疲れさん。早かったな、シェンド。」

「あ、はい。回復薬のおかげで、多少のリスク覚悟で戦えましたから。」


 そんな中、とある情報が入って来た。


「伝令!レモニア王国において、王都以外が壊滅したとのことです!」

「なにぃっ!?・・・いや、おかしなことでもないか。」

「そうですね。あれだけの数に攻められては、流石に・・・。」

「曲がりなりにも余力のあるこの国の方がおかしいよな・・・。」


 改めて、砦やアイテムの有難みを実感した二人であった。








 そして、あと数十分でこの日の侵攻が終わると言う頃、王都ヴォイザードにて。


「伝令!レスターさん、王都防衛第一砦にゴブリンエンペラーです!」

「もう皇帝種が現れたか・・・。」

「そうだな・・・。」


 ガイアとレスターは高ランク冒険者の派遣を決めた。




 数分後、派遣されたライトによって、皇帝種は討伐された。


 王都の防衛は余裕どころか、第一砦すら抜かれていない。

 負傷者は全員回復済みで、犠牲者もゼロだ。


 こうして、四日目は終わりを迎え、折り返しとなった。


 そして、激戦が始まる五日目となった。

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