異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
180 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

魔王の侵略 二日目

しおりを挟む
 侵略二日目の朝。

 昨日のカラーヴォイス王国の死者は、数える程しかいない。

 他の国も、大きな被害は出さずに持ちこたえている。




 ここはシレーマの町近海の、ダイダル海域第一海上防衛砦。

 文字通り、ダイダル海域の浅部からやってくる魔物、その迎撃をする砦だ。

 クロトが金に物を言わせて建造した砦の一つだ。



 この砦の防衛についているのは、クロトの知人。

 ダイダル海域越えで一緒だったAランク冒険者、ドランとシェンド。

 ここの砦は重要拠点なので、Aランク冒険者が常駐しているのだ。


「ドランさん。こんな立派な砦、いつの間に出来たんでしょう?」

「・・・いつの間にか、としか言えないな。」

「ですよね・・・。」


 この二人はシレーマの町を拠点にしているので、このあたりに詳しい。

 そのため、つい先日まで、こんな砦は存在しなかったことを知っている。


「ミカゲ財閥が建てたと聞いたが、最近頭角を現したグループだよな?」

「そうですね、最近よく名前を聞きます。」

「ミカゲって、クロトの名字だったような・・・?」

「・・・なるほど。つくづく出鱈目な人ですね。」


 クロトの話をしている内に、伝令が届く。


「伝令!シースネーク最上位種とブルーシャーク最上位種が迫っています!」


 最上位種が同時と言うのは初めて。

 ドランは数秒考え指示を出す。


「ランクB冒険者、順番通り迎撃を!」

「了解!」


 ランクCパーティーでも行けると思うが、最初であるため安全策をとった。

 指示を受けたBランク冒険者が迎撃に出向く。


「・・・しっかし、この迎撃指示マニュアルとかいうやつはすげぇな。」

「色んな状況での指示が漏れなく載ってますよね・・・。」


 指揮官様に受け取ったマニュアルを見ながら、感嘆の声を漏らす二人。




「だがなぁ・・・数分単位で別れる指示まで載ってるのはな・・・。」

「あくまでオマケ要素なんでしょうけど、扱いきれませんよね。」


 その後、最上位種二体は無事に討伐された。







 二日目の昼頃になると、明らかに上位種の割合が増えていた。

 少しずつ割合が変化しているので分かり辛いが。


 また、最上位種が、一時間に一度のペースで現れるようになった。

 防衛戦力は、ほんの少しずつだが消耗している。






 ここは、ラシアルドの町。

 この町には、Sランク冒険者のレファイスが常駐していた。

 そのような指示は出されていないので、あくまでも自己判断で居る。


 レファイスは先程届いた伝令について考えていた。


(最上位種が同時に三体か。ここはBランクパーティーだな。)


 そう結論を出し、指示を出した。


 すぐに討伐されたのを確認しながら、別の事を考えていた。


(何故、戦力の逐次投入を?どんな意図がある・・・?)


 レファイスは暫く考えていたが、無駄だと論じて思考を打ち切った。


「伝令!再びスコルピナス最上位種です!」

「順番通り迎撃させよ!」


 それからは、レファイスが思考を逸らす暇など無くなった。









 侵攻は一週間、つまり八日で終わると、事前に通達があった。

 そして現在は二日目の夕方。

 もうすぐで四分の一が終了しようとしている。



 ここはドレファトの町。

 この町の指揮はアリスが執っていた。


「伝令!双眼鏡により、ゴブリンロードを確認!」

「っ・・・もう支配種が?まだ二日目だと言うのに・・・。」


 アリスは湧き上がる不安を抑えながら、どうするべきか考える。

 しかし、指示を出す必要はなかった。


「伝令!ゴブリンロードが討伐されました!」

「えっ、一体誰が・・・?」


 支配種討伐となれば、最低でもBランクは欲しい。

 そんな相手である支配種を、この短時間で討伐できる人間など、早々居ない。


「・・・ああ、彼ね。それなら納得できるわ。」


 アリスは自分の方へ向かってくる男性、ヴィオラの父親替わりの存在。

 Aランク並みの実力を誇るカザロフを見つけて、確信した。


 終末の鐘は仮にも裏ギルドなので、国の指揮下には入っていない。

 ただ、ドレファトの町の防衛戦力にはなっている。

 なんとも微妙な立ち位置だ。

 アリスの指揮下にも入っていないので、直接的な指示は出せない。


 今回は独断専行だったが、早急な対応が必要だと思ったからでしかない。

 普段は指揮系統に歯向かう気は、カザロフにも無い。


「二日目で支配種・・・。八日目にはどうなってしまうというの・・・?」


 再び不安に揺れ始めたアリス。

 クロトからもらったペンダントを握りしめて、不安を消し去るのだった。



 こうして、支配種が一体確認され、二日目は終わりを迎えた。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

経理部の岩田さん、セレブ御曹司に捕獲される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:78

六本木の鴉-カラス-(鳴かない杜鵑 episode2)

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:28

不夜島の少年 小話集

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:57

富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:839pt お気に入り:222

邪竜転生 ~異世界いっても俺は俺~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,360

僕のスライムは世界最強~捕食チートで超成長しちゃいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3,060

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:379

【完結】前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:17,061pt お気に入り:4,477

さよなら私のドッペルゲンガー

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:195

異世界で演技スキルを駆使して運命を切り開く

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:313pt お気に入り:7

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。