異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
175 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

カレンVSウリエル

しおりを挟む
 カレンは大天使ウリエルと相対していた。


「妙な真似をしてくれたようだな・・・・・・無駄なことを。」

「ほう?魔物が言葉を話すのか。いや、別におかしくは無いのか。」


 ウリエルが話し出したことで、カレンは驚く。

 だがしかし、すぐに平常心に戻った。


「ふん・・・下賤な人間の分際で・・・っ!?なんだ?力が入らない・・・?」


 ウリエルが、突然抜けていく力に驚愕して取り乱している。

 クロトが闇輪と光輪を生成したからだ。


 隔離空間内にも、力の増減は効果を発揮するよう、魔法陣に設定されている。

 とことん何でもありのようだ。

 理論上は魔法陣で何でもできる、というベッカーの教えは的を射ていた。


 そして、その隙を逃すカレンでではない。

 光輪の効果で上昇した能力値を生かして、ウリエルに接近する。


 神天魔の法衣に、ちゃっかりとついていた効果、相乗効果極大上昇。

 これにより、光輪の効果は味方全てに及ぶ。

 闇輪の効果も、全ての敵に及ぶ。


 現在、カレンの能力値は平均3000前後。

 一方のウリエルは、平均1500。


 とてもではないが、接近してくるカレンに対応できない。


「絶剣九曜連閃!」

「っ!しまっ・・・ぐあっ!?」


 結果、ウリエルに大ダメージが入った。

 三割ほどはHPが減っただろう。

 カレンはさらに追撃。


「絶剣九曜連閃・逆流!」

「ぐっ、また・・・何だ、この軌道は!?」


 先程の剣技を逆再生したかのような九連撃が全て炸裂。

 ウリエルのHPは残り四割を切った。

 僅か数秒間の出来事だった。

 あまりに的確な剣技に、油断していたウリエルは全く対応できなかった。

 炎天剣術10でもこれだ。


 カレンの始祖天剣術はレベル9。

 この状態で、常に最高の剣の腕を誇るのだ。

 現在、両者の強さは隔絶している。

 レアスキルとユニークスキルの差とも言えるだろう。


「くっ・・・舐めてかかったのは失敗か。なら・・っ!?今度は何だ!?」


 突如、どこからか襲ってきた威圧感に、恐怖を覚えるウリエル。

 僅かに体が震えている。


 クロトが新天魔の法衣の隠蔽を解除したのだ。

 カレンに対しての威圧は隠蔽されたままなので、何も感じないカレン。

 隠密者応用の選別効果だ。
 

 再び隙が出来たウリエルに接近する。


「っ、臨界突破!」


 今度は臨界突破が間に合ったウリエル。

 炎の魔法剣で迎撃する。


 現在ウリエルの能力値は、平均4500。

 カレンの九連撃を全て叩き落した。


「絶剣九曜連閃・逆流!」

「同じ技が何度も効くと・・・っ!?この軌道はっ、先程と違うっ!?」


 ウリエルは迎撃に失敗して、僅かにダメージを喰らった。

 カレンの剣技は、千変万化するのだ。

 今まで同じものしか使わなかったのは、ただのブラフ。

 そう思わせて隙をつくるための誘導だ。


 そこから数度、剣を打ち合ったカレンとウリエル。

 
 能力値で劣っていながらも、カレンは何とか食い下がっている。

 とはいえ、光輪と闇輪の効果が切れる前に勝負をつけたいカレン。


 そこに、隠密者を発動していた分身の援護が入る。

 状況を見る限り、前衛に加わった方が良さそうだ。


「神天一閃・龍絶!」

「っ?これはっ・・・何が来ると言うのだっ!?」


 驚異的な最高値の天感で、ギリギリ察知したウリエル。

 何処かから、何かヤバいモノが、そのうちに来る。

 ハッキリ言って、これでは対応のしようがない。

 取り乱すウリエルに、クロトの一撃が決まる。


「ぐあああっ!?」


 HPを一割以下まで減らされたウリエルは、絶叫した。

 カレンが引き付けてくれたおかげで、まともに入った。


 カレンとクロトが、ズタボロになったウリエルに追撃を行う。


「絶剣九曜連閃!」

「極天八奏連閃・全絶!」


 十六回の攻撃を半分以上受けて、HPは一桁に。

 カレンの九撃目を受けて、ウリエルのHPはゼロに。


「・・・カレン!回避!」

「っ?」


 分身から出た指示に従い、カレンは距離をとる。


 直後、ウリエルの体が爆発。

 ゴーレムの自爆魔法よりは威力が落ちるが、中々酷い置き土産だ。

 おそらく、ミカエルの天使統率の効果だろう。

 死んだら自爆させるとは・・・・・・実に合理的。


「まさか自爆とはな・・・。」

「合理的ではあるけどね・・・。」


 クロトの言に、カレンはあきれ顔だ。


「私の死体でも同じことをするのか・・・?」


 それは少しだけ嫌だと思ってしまうカレン。

 もっとも、必要とあらば、やって欲しいとも思っているが・・・。


「うん?そもそも、死体になんてさせないけど?」

「っ?っ・・・!?クロト、不意打ちはやめて欲しいのだが・・・。」


 ごく自然体で、そのようにのたまったクロトに、そんな苦言を漏らした。


 耳まで真っ赤に染めながら。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

切なさを愛した

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:6

その距離が分からない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:7

【R18】この恋止めて下さいっ!!

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

思い出を売った女

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:4,118pt お気に入り:744

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:7

可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy
BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:872

ヒロインではなく、隣の親友です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

孤独

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもらしの想い出

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:15

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。