異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

エレイアの町

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 クロトが孤高の道から帰ってきて三日。

 魔王の侵略開始まで、あと一か月となったこの日。



 そろそろカラーヴォイス王国への帰国を視野に入れ始めた一同。

 そこで、ナツメからこんな提案が。


「折角でござるから、まだ行っていない町へ訪れてみるのはどうでござろう?」


 クロトはその提案に、確認の意味を込めて尋ね返した。


「訪れて無い町というと、エレイアの町、だよね?」

「そうでござるよ。他の町は、既にいったでござるゆえ。」


 東国ジャンゼパールには、首都を含め七つの町がある。

 港町ティルミアに始まり、アクリル、イスタル、ウルズ、シャンレイド。

 ナツメの故郷、フィレント。

 そして、まだ訪れていない、エレイア。


 ナツメが行こうと提案しているのは、最後のエレイアだ。


「行くのは構わないが、観光名所でもあるのだろうか?」

「そうですわね。どうせなら、目的地があったほうが良いですわ。」


 カレンとマリアは、行くのはいいが、目的があった方が良いと主張している。

 確かに、何の目的もなく行くのは、時間が勿体ないかもしれない。


 ナツメはちゃんと調べていたらしく、自信満々で答えた。


「それが・・・エレイアの町の更に先には、危険地帯があるでござるよ?」


 一同は、エレイアの町へ行くことを決めた。

 全員、冒険が嫌いではないので、即決だった。


 出発は、提案者のナツメが、明日の朝とした。






「ところでナツメ、一つだけ確認してもいいかな?」

「なんでござるか・・・?」

「明日はデートの予定だけど、行きたくないという意思表示かな?」

「・・・あっ!?ちちち違うでござるっ!そんなつもりは決してっ!?」


 二人のお出かけは、またしても延期になったのだった。

 今回も、予定を忘れていたナツメが悪い。

 クロトも、少しだけ機嫌が悪くなったのであった。









 翌日、一同は首都を離れて、エレイアの町を目指していた。


「そういえばナツメさん、エレイアの近くにある危険地帯というのは・・・?」


 アクアがそう切り出した。

 今から知っている分だけ聞いておいても、早くは無いだろう。


 ナツメは未だにショックを引きずりながらも、アクアへ答えを返す。


「確か、迷いの森という場所で、文字通り、迷いやすいという話でござるな。」

「迷いやすい、か。はぐれないように気をつけなくてはな・・・。」

「そうですわね。でも、クロトが居れば捜して貰えそうですわね。」

「えっ?はぐれても捜さないよ?」

「「「「えっ・・・?」」」」


 まさかの放置宣言。


 無論、ちゃんと天の瞳などで捜索はするし、危険に陥れば助ける。

 だが、すぐに迎えに行くつもりはない、ということだ。

 クロトはそのことを全員に説明した。


「なら最初からそう言ってくださいまし!心臓が止まるかと思いましたわ!」


 マリアに怒られてしまったクロト。

 あの言い方では、何の躊躇いも無く自分たちを見捨てる、という風に聞こえる。

 カレンとナツメもフォローしようとしない。

 唯一アクアだけは、マリアに怒られているクロトを心配そうに見つめていたが。

 アクアが夫に甘い妻になりそうな予感が、ヒシヒシと伝わってきた一件だった。







 数日後、エレイアの町に到着。

 町中で情報収集したところ、迷いの森について、詳しいことが分かった。


 曰く、どれだけ気を付けていても、必ずはぐれてしまう。

 曰く、一人、また一人と消えていく。


 この町では、言うことを聞かない子は迷いの森に放り込む、と脅かすとか。

 大人はそこまで恐れている風では無かったが、わざわざ近づきたくはない。

 そんな印象を持たれている森。


 広さ自体はそこまででもないと言われている。

 だが、毎年必ず行方不明者が出るため、危険地帯に指定された。

 数年前には、S-ランクの人間も帰って来なかったとか。

 一方で、駆け出し冒険者でも、帰って来られることは珍しくない。


 そんな不思議な場所のようだ。
 

 クロトたちは最後に、冒険者ギルドで情報を入手しようとしたのだが・・・。




「その話は本当なのです?だったら、私が助けてくるのです!」

「いえ、ですが・・・あなたはまだ子供で・・・。」

「今、子供って言ったのです!?私は立派な大人なのです!」


 聞き覚えのある声が、ギルドの中から聞こえて来た。

 声の聞こえた方では、金髪の幼女がギルド職員に食って掛かっていた。

 どうやら、幼女扱いが気に入らなかったらしい。


 港町ティルミアの宿で、部屋が無いことに対してごねていた声。


 大運動会(武闘大会)の本選で、カレンと戦ったSランク冒険者の声だった。

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