異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

洞窟の先へ

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 クロトとカレンは、告白から数時間後、ようやく洞窟の話を始めた。


「それで、なんだけど。僕に対する不満って、種類はそれだけだったの?」

「・・・ああ、そのはずだ。他には何も感じなかった。」


 クロトは自分の状況とも照らし合わせ、それならこの先は大丈夫だと推測した。

 カレンにもそのことを伝え、先へ進む許可をもらった。


 クロトたちは、もう一日休んで、明日出発することにした。


 その間、寝物語に、お互いの事を話した。


 カレンの、かつての戦友の話。

 クロトの、複数の恋人を持つことへの自責の念。


「アクアも言っていたが、クロトは気にし過ぎだ・・・。」

「それは分かっているつもりなんだけど、どうしても、ね・・・。」


 どれだけアクアたちにフォローされても、自責の念が完全に消えることは無い。

 カレンは、少しでもクロトに楽になって貰おうと、本音を語った。


「私としては、恋人が沢山居てくれた方が嬉しいのだが・・・。」

「・・・それは、どうして?」


 クロトは、理解できないと言った表情だ。


「簡単だ。その方が楽しくて、幸せだからだな。勿論、禄でもない女は嫌だが。」

「本気で言ってる・・・みたいだね・・・。」


 カレンの瞳を見つめ、嘘は無いと感じたクロト。

 心が軽くなって、自分は救われてばかりだな、と思った。






 翌日、二人は断絶空間から出て、再び洞窟を進み始めた。



「カレン、問題は無さそう?」

「ああ、大丈夫のようだ。流石はクロト。正確な予測だ。」

「まあ、僕は常に余裕だからね・・・。」

「うっ・・・!それはもう忘れてくれないか・・・!」


 そこから先はイライラすることなく、順調に進み、ついに・・・。


「カレン、天の瞳で洞窟の出口を確認したよ。」

「そうか・・・。何というか、一生記憶に残りそうな場所だったな・・・。」

「僕も同感かな・・・。」


 そして二人は洞窟を脱出し、明るい場所に出たのだった。







 洞窟の外は、穏やかな草原のような場所だった。

 中央には、小さな休憩所のようものがある。


「うん?休憩所の机に何かあるね。」

「ん?・・・本当だな。行ってみよう。」


 目についたものが何なのかを確認しに来たクロトとカレン。

 そこにあったのは・・・。


「・・・松明か?」


 カレンが見たままの感想を漏らす。

 クロトは解析を発動。


「・・・名称は、表裏の松明。それしか分からない。」

「表裏の松明か・・・二つあるから、一つずつでいいか?」

「もちろん。ここには生物が存在していないみたいだけど、探索はする?」

「そうだな・・・軽く探索しておこう。」




 その後、二人は探索をしてみたが、何も見つけられなかった。




「さて、そろそろ帰るとしようか。」

「そうだね。じゃあ、転移するけど・・・拒絶しないでね?」

「しない!するわけがないだろう!?」


 クロトは慌てるカレンを抱き締めて、転移を発動したのだった。




 転移してきたのは、無明の滝の傍。


「・・・ん?ここは滝の前か。どうしてここに転移・・・っ!?」


 カレンは、突然クロトに手を握られ、鼓動が跳ねた。

 不意打ちには弱いようだ。


「せっかく恋人になった訳だから、トウドウ家まで一緒に歩こうかと思ってね。」


 クロトはカレンの手を引きながら、滝の前に転移した目的を、そう話した。


「そうか・・・!アクアたちから聞いていたが、これが、デートと言うものか。」

「うん?そのつもりは無かったんだけど、それも良さそうだね。そうしよう。」


 そうして、クロトとカレンは町へ向かったのだった。



 ・・・途中でアクアとマリアに遭遇し、微笑ましそうな目で見られた。

 
「その目で見るのはやめて欲しいのだが・・・。」

「それは無理ですわね。」

「ええ。私も、それは無理ですね。」

「くっ・・・!」


 カレンは頬を赤く染めて、俯いてしまった。

 クロトは平常運転のまま、マリアに気になる事を尋ねてみた。


「そういえば、今日は縦ロールでは無いみたいだね?」

「ええ、そうですわよ。」


 胸を張って肯定するマリア。

 今日の髪形は中々良いので、自信があるのだろう。


 マリアは時々髪形を変えているのだが、あまり整え方が上手く無かったはず。

 だが今日は、とてもきれいに纏まっている。

 クロトは、アクアに頼んでやってもらったのだと推測した。


 そのことを端的に指摘する。


「マリアがアクアに甘えるなんて、珍しいね?」

「なっ!?なぜそれを知ってるんですの!?」

「私もそう思います。甘えてくるマリアさん、とても可愛らしかったです。」

「アクアっ!?何を言っているんですのっ!?」


 照れ隠しの為か、アクアに詰め寄るマリア。


 そして、それを微笑みながら受け止めるアクアであった。


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