異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

無明の洞窟

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 食って掛かって来たカレンを宥めつつ、滝の裏への侵入を図るクロト。


「それで、どうやって入るんだ?」

「カレン、耳が赤いよ?」

「うるさい!誰のせいだと・・・!」


 自分のせいで間違いないが、クロトはそれを意図的にスルーして、話を続ける。


「滝の裏にはこれを使って入るよ。」

「っ!・・・これは?」

「避水魔法陣だけど?」

「・・・いくらだ?」

「今回はタダ。次回からは2000万ゴールド。」

「・・・今度買いに行こう。」


 二人は避水魔法陣の効果範囲に入り、空を飛んで、滝への侵入を目指す。

 カレンは飛べないので、クロトに背負われている。


「クロト・・・恥ずかしいのだが・・・。」

「我が儘言うと、お姫様抱っこにするよ?」

「それは勘弁してくれ!」


 カレンの叫びを尻目に、クロトは巨大な滝に突入した!







「ねえ、カレン。実は駄目な子だったの?」

「うぅ・・・。」


 カレンは水浸しになっている。

 魔法陣を起動するタイミングを間違えたようだ。

 早めに起動しておくよう、クロトは注意していたのだが・・・。


 口では駄目な子と言いながらも、本当にそう思っている訳では無い。

 クロトに密着していたのが原因だろう。


「カレン、早く乾かして。風邪をひくし・・・目に毒だから。」

「・・・?・・・・・・!?」


 タオルと魔道具を渡され、ようやく気付いた様子のカレン。

 水に濡れたせいで、服が透けているのだ。

 クロトにとっては、相当に目に毒である。
 

「す、すまない。嫌なモノを見せてしまって・・・。」

「うん?別に嫌ではないよ?」


 クロトが正直に答えると、カレンは真っ赤になって俯いてしまった。


 カレンの様子がおかしく、ミスが多いのには理由がある。


(こんなに何度も感情が溢れ出すなんて!私はどうしたら良いんだ・・・!?)


 と、いよいよ感情の抑えが効かなくなってきたのだ。

 そのせいで変に焦ってしまって、失敗をする。


 いくつか原因はあるが、1つは、クロトと密着したこと。

 もう1つは、ナツメの事だ。


 アクアやマリアと親しげなのは当然だが、ナツメまで親しげになって来た。

 自分が感情を抑えている間に、2人も恋人が増え、ついにはナツメまで。

 本当にこれで良いのかと自問した結果、感情の抑えが緩くなってしまったのだ。


 また、クロトと長らく一緒に過ごしたことも原因かもしれない。

 そろそろ、旅行を始めて二か月。

 全極の島を探索し終えてからは、これほど一緒に居たのは初めてなのだ。


 クロトは、俯いているカレンを見ながら、何とも言えない表情をしていた。

 カレンがそれに気づくことは無かったが。



 カレンはタオルで体を拭いて、魔道具を手に持った。

 だが、使い方が分からない。


「ク、クロト。これはどう使えばいいのだ?」

「ああ、その中に服を入れて魔法陣を起動させると、乾かしてくれるから。」

「ほう・・・それは凄いな。・・・・・・服を脱ぐのか。」


 流石に躊躇いがあるようだ。

 男の前で服を脱ぐ行為には、抵抗があって当然だ。


 クロトは気を利かせて後ろを向いて、本を読んでいる。

 カレンは意を決して、服を脱ぎ始めた。

 だが、動揺しているせいで、上手く裾を掴めず、数分かかってしまった。


 数分後、カレンの裸体が露わになった。

 平均より大きめの胸を持ちながら、とてもスラッとしていて、スタイルが良い。

 カレンは胸を隠しながら、服を魔道具に入れて、魔法陣を起動。

 あっという間に服は乾いたので、急いで着用。

 その上に防具をつけて、クロトに声を掛ける。


「クロト、もういいぞ?」

「ん?ああ、そうだったね。じゃあ、先に進もう。」


 クロトは本を仕舞い、何も無かったかのような対応をする。


(もう少し、動揺するなり、顔を赤くするなりしてくれても良いのでは・・・?)


 カレンは、何とか感情に蓋をして、返答した。


「ああ。迷惑を掛けて済まなかった。」

「気にしないで。誰にでも失敗はあるから。」


 そうして、仮称・無明の洞窟の探索が始まったのだった。



「クロト、天の瞳に反応は?」

「・・・魔物の反応は無いよ。」


 いつも通り、凛とした雰囲気に戻ったカレンが、クロトに尋ねた。

 それなりの距離を進んで来たが、一度も魔物と遭遇していないが故の質問だ。


 クロトは、反応が無いとしか答えられなかった。

 本当に何も居ないのだから。

 
 一本道でありながら、左右に曲がったり、下方向に下ったり。


 一体、この洞窟は何なのだろうか。


 二人は最新の注意を払いながら、進んでいくのだった。

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