異世界隠密冒険記

リュース

文字の大きさ
上 下
138 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

無明の洞窟

しおりを挟む
 食って掛かって来たカレンを宥めつつ、滝の裏への侵入を図るクロト。


「それで、どうやって入るんだ?」

「カレン、耳が赤いよ?」

「うるさい!誰のせいだと・・・!」


 自分のせいで間違いないが、クロトはそれを意図的にスルーして、話を続ける。


「滝の裏にはこれを使って入るよ。」

「っ!・・・これは?」

「避水魔法陣だけど?」

「・・・いくらだ?」

「今回はタダ。次回からは2000万ゴールド。」

「・・・今度買いに行こう。」


 二人は避水魔法陣の効果範囲に入り、空を飛んで、滝への侵入を目指す。

 カレンは飛べないので、クロトに背負われている。


「クロト・・・恥ずかしいのだが・・・。」

「我が儘言うと、お姫様抱っこにするよ?」

「それは勘弁してくれ!」


 カレンの叫びを尻目に、クロトは巨大な滝に突入した!







「ねえ、カレン。実は駄目な子だったの?」

「うぅ・・・。」


 カレンは水浸しになっている。

 魔法陣を起動するタイミングを間違えたようだ。

 早めに起動しておくよう、クロトは注意していたのだが・・・。


 口では駄目な子と言いながらも、本当にそう思っている訳では無い。

 クロトに密着していたのが原因だろう。


「カレン、早く乾かして。風邪をひくし・・・目に毒だから。」

「・・・?・・・・・・!?」


 タオルと魔道具を渡され、ようやく気付いた様子のカレン。

 水に濡れたせいで、服が透けているのだ。

 クロトにとっては、相当に目に毒である。
 

「す、すまない。嫌なモノを見せてしまって・・・。」

「うん?別に嫌ではないよ?」


 クロトが正直に答えると、カレンは真っ赤になって俯いてしまった。


 カレンの様子がおかしく、ミスが多いのには理由がある。


(こんなに何度も感情が溢れ出すなんて!私はどうしたら良いんだ・・・!?)


 と、いよいよ感情の抑えが効かなくなってきたのだ。

 そのせいで変に焦ってしまって、失敗をする。


 いくつか原因はあるが、1つは、クロトと密着したこと。

 もう1つは、ナツメの事だ。


 アクアやマリアと親しげなのは当然だが、ナツメまで親しげになって来た。

 自分が感情を抑えている間に、2人も恋人が増え、ついにはナツメまで。

 本当にこれで良いのかと自問した結果、感情の抑えが緩くなってしまったのだ。


 また、クロトと長らく一緒に過ごしたことも原因かもしれない。

 そろそろ、旅行を始めて二か月。

 全極の島を探索し終えてからは、これほど一緒に居たのは初めてなのだ。


 クロトは、俯いているカレンを見ながら、何とも言えない表情をしていた。

 カレンがそれに気づくことは無かったが。



 カレンはタオルで体を拭いて、魔道具を手に持った。

 だが、使い方が分からない。


「ク、クロト。これはどう使えばいいのだ?」

「ああ、その中に服を入れて魔法陣を起動させると、乾かしてくれるから。」

「ほう・・・それは凄いな。・・・・・・服を脱ぐのか。」


 流石に躊躇いがあるようだ。

 男の前で服を脱ぐ行為には、抵抗があって当然だ。


 クロトは気を利かせて後ろを向いて、本を読んでいる。

 カレンは意を決して、服を脱ぎ始めた。

 だが、動揺しているせいで、上手く裾を掴めず、数分かかってしまった。


 数分後、カレンの裸体が露わになった。

 平均より大きめの胸を持ちながら、とてもスラッとしていて、スタイルが良い。

 カレンは胸を隠しながら、服を魔道具に入れて、魔法陣を起動。

 あっという間に服は乾いたので、急いで着用。

 その上に防具をつけて、クロトに声を掛ける。


「クロト、もういいぞ?」

「ん?ああ、そうだったね。じゃあ、先に進もう。」


 クロトは本を仕舞い、何も無かったかのような対応をする。


(もう少し、動揺するなり、顔を赤くするなりしてくれても良いのでは・・・?)


 カレンは、何とか感情に蓋をして、返答した。


「ああ。迷惑を掛けて済まなかった。」

「気にしないで。誰にでも失敗はあるから。」


 そうして、仮称・無明の洞窟の探索が始まったのだった。



「クロト、天の瞳に反応は?」

「・・・魔物の反応は無いよ。」


 いつも通り、凛とした雰囲気に戻ったカレンが、クロトに尋ねた。

 それなりの距離を進んで来たが、一度も魔物と遭遇していないが故の質問だ。


 クロトは、反応が無いとしか答えられなかった。

 本当に何も居ないのだから。

 
 一本道でありながら、左右に曲がったり、下方向に下ったり。


 一体、この洞窟は何なのだろうか。


 二人は最新の注意を払いながら、進んでいくのだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

切なさを愛した

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:6

その距離が分からない

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:7

【R18】この恋止めて下さいっ!!

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

思い出を売った女

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:4,118pt お気に入り:744

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:7

可愛いだけが取り柄の俺がヤクザの若頭と番になる話

ivy
BL / 連載中 24h.ポイント:134pt お気に入り:872

ヒロインではなく、隣の親友です

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

孤独

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おもらしの想い出

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:262pt お気に入り:15

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。