異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

泉の秘密

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 ギルドで討伐を報告すると、大げさなほど喜ばれた。


 また、報酬は莫大な金額となった。


 伝説級の天種討伐となれば、信じられない程に大金が動く。

 今回は、町の観光スポットを守ってくれたことに対する報酬も出る。


 ギルドもそれなりに資金があったようなので、一括で払ってもらえた。

 流石は観光名所のある町のギルドだ。


 そして、泉の水を頂いている。

 泉は誰のものでも無いのだが、一応、許可は貰っておいたのだ。

 現在は、アクアのアイテムボックスに収められている。


 解体では、大海結晶、純水結晶、その他メイルシュトロムヒュドラの素材。

 大量の収穫と言えるだろう。






 そしてクロトたちは、泉の畔でのんびりしていた。

 その場には、椅子や机、軽食などが置かれている。


 本来なら、この手の占有は迷惑行為なのだが、今回は問題ない。

 この日一日は、クロトたちの貸し切りになっているのだ。

 ヒュドラ討伐のおまけ報酬である。



「はぁ・・・何だかとても癒されるな・・・。」

「そうでござるなぁ・・・。」


 泉の神秘的な雰囲気のおかげで、とてもリラックス出来るようだ。

 カレンとナツメは、今にも眠ってしまいそうな声音である。


 アクアとマリアはと言うと・・・・・・既にクロトの両脇で眠っていた。

 そんな二人を微笑ましく思いながら、泉の考察をしていく。


(やっぱりこの神秘さは、泉の水が純水であることと関係してるよね・・・。)


 神秘の泉の水は、不純物の一切混じっていない純水である。

 他の場所では中々見られない水だ。

 理由までは分からないが、間違いなく関わりがあると、クロトは睨んでいる。


 ふと、カレンの方を見てみると、スヤスヤと眠っていた。

 ナツメは起きたままだ。

 そこで、ナツメに声を掛けてみた。





「ナツメ、ちょっとデートしよっか。」





 クロトの言葉に驚愕しながらも、ナツメは嬉しそうにして、肯定の返事をした。


「それで、クロト殿のことであるからして、何か目的があるのでござろう?」

「まあね。泉の謎を調べてみようかと思って。」

「あぁ・・・クロト殿は変わらないでござるなぁ・・・。」


 ナツメも、クロトとはそれなりの付き合いであるため、そんな言葉が零れた。

 クロトは、分からないことは調べようとするし、大抵の場合は解き明かす。

 そんなクロトの探究心と頭脳は、ナツメからしても、とても魅力的のようだ。




 それから、二人は泉の周囲を探索してみるが、何も見つからない。


「やはり、泉の中でござるか・・・?」

「そうだね。・・・ちょっと行ってくるね?」

「行ってらっしゃいでござるよ。」


 ナツメは手を振って見送り、クロトは泉の中へ潜って行った。


 ナツメはクロトを見送った後、気づいた。

 まるで夫婦のような挨拶では無かっただろうか、と。

 ナツメは、本人にも分からないほど僅かに、頬を赤く染めた。



 クロトは泉の中へ潜っていた。

 普通に呼吸しているし、泉の水が汚れることもない。

 創世神器たる神天魔の法衣を、なめてはいけない。


 泉の深さはそれなりで、しばらく潜って、ようやく底が見えて来た。

 そして、底には穴が開いているのが見えたので、思い切って入ってみる。



 クロトは驚いていた。

 穴に入ったと思ったら、急に水が無い空間に出たのだから。


 そこは不思議な空間で、とても神秘的だった。

 見た目は神殿のようだが、その中心にある小さな泉から、水が湧いている。

 解析してみると、純水だった。


(神秘の泉の水は、ここから来ていたんだね・・・。)


 クロトはそう思いつつ、更に泉を解析。

 どうやら泉自体に仕掛けがあり、水が神秘的な気配を纏うに至っている様だ。

 その仕掛けを解析してみると、神秘結晶という物を見つけた。

 さすがにこれを回収する訳にもいかないので、構造を解析していく。


 そこそこ時間を掛けたが、解析は成功。

 天結晶、聖結晶、光絶結晶、純水結晶、魔力結晶、永霊結晶、魂魄結晶。

 霊体の残滓、大海の恩恵、永遠の聖水、氷雪女帝の氷、魂の輪、氷不死鳥の羽。


 代用品もあるが、これらの組み合わせで、神秘結晶が作れるようだ。


(・・・いやいやいや。難易度おかし過ぎるよね?全部あるけど。)


 魂の輪は使ってしまったが、暇なときに再び作成しておいた。


 クロトはとある魔法陣が刻まれた布を取り出し、材料を上に乗せた。


(合成魔方陣・亜。これをこんなところで使うことになるとはね・・・。)


 クロトが取り出したのは、他者の魔法を合成した魔法陣の亜種。

 半物質の合成を行う魔法陣だ。

 これの作成には、クロトも苦労した。


 なお、半物質の合成だから出来るのであって、武器などを合成するのは無理だ。


 そんな訳で、魔法陣を発動。


 数分後に、神秘結晶が完成したのだった。

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