異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

ハリケルア雷山

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「ハリケルア雷山?」

「ああ。アクリルの町と、次に目指すイスタルの町の間にあるそうだ。」


 カレンがそんな情報を仕入れて来た。

 右手には買い食いしたであろう食べ物の串。

 色々と堪能しているようだ。


「・・・行ってみたいの?」

「まあ、な。少々興味深い。」


 カレンはハリケルア雷山に行ってみたいようだ。

 クロト自身に特に異論は無いので、他の三人に尋ねてみた。


「カレンがハリケルア雷山に行きたいみたいだけど、みんなはどう?」


 すると、すぐに全員から返事が返って来た。


「拙者も行ってみたいでござるな。」

「わたくしも行ってみたいですわね。」

「私も異論はありません。」


 即答するあたり、興味はあるのだろう。

 基本的にみんな、探索が好きなのだ。

 各々、少しずつ好きな理由が違っているが。


 クロトも探索には賛成だ。

 東国ジャンゼパールには危険地帯は殆ど無い。

 近くにあるなら、探索しておきたいのだ。

 というより殆どの国は、多くとも十か所くらい。

 犬が歩けば危険地帯に行きつく、カラーヴォイス王国と一緒にしてはいけない。









「ねえ、カレン。」

「何だ、クロト?」


 目的地にたどり着いたクロトたち一行。

 ハリケルア雷山を間近で見たクロトは、カレンに問いかけた。


「この場所の事を、どんな風に聞いていたのかな?」

「人が踏み入ることも困難な、危険地帯だと聞いていたな。」


 カレンの答えを聞いて、なるほど、と頷くクロト。

 確かに目の前の山は、人が踏み入るのは困難だ。


 だがしかし・・・


「これを知っていてここまで来たなら、ちょっと驚きなんだけど?」

「いや、流石にこれは知らなかった。てっきり、強い魔物が出るのかと・・・。」

「だよね・・・。」


 クロトは、カレンから目の前の山に向き直った。
 





 そこには、絶えず大量の雷が空から降り注ぐ、超危険な山があった。




「・・・どうやって探索するんですの、これは?」


 そんなマリアの呟きに、答えられる者は居なかった。












「仕方が無いから、雷避けの魔法陣を使おう。」

「いよいよ何でもありですわね!?」


 マリアが、なぜそんなものがあるのかという意味のツッコミを入れる。


「転ばぬ先の杖というか・・・。年をとってから杖を作るのは大変だよね?」

「欠片も意味を理解できませんわっ!」


 日本のことわざは分かり辛いのだ。


 ちなみに、クロトはそんなものが無くても、吸収してしまえる。

 寧ろ、大量のエネルギーを溜め込めるので、最高の環境だ。


「それで、どんな仕組みなのですか・・・?」

「雷属性と拡散と避雷と障壁と連鎖とその他色々かな。」


 アクアが仕組みを尋ねてきたので、大雑把に説明したのだが・・・。


「私には欠片も分からないな・・・。」

「拙者もでござる・・・。」


 と、前衛二人はまるで理解できなかった。

 アクアとマリアは、おおよそ理解したようだ。


「雷獄結晶を使うせいでかなりお高いけど、効き目は保証するよ?」

「それはありがたいのだが・・・。」


 カレンは微妙な表情だ。

 いよいよクロトの非常識さにおののいているのかもしれない。


「ちなみに、お値段の詳細は如何ほどでござるか・・・?」


 ナツメが代表で尋ねてきたが、全員気になっているようだ。

 使い捨てとはいえ相当に便利な物なので、欲しがるのは当然だろう。

 きっちり公私を分け、アクアにも詳しい値段などは話していなかったのだ。


 有り余る素材を消費する良い手段ではあるが、余計に儲かってしまう値段だ。

 まだ売り出してはいないのだが・・・。


 クロトは、使用した素材の売却代金を計算して、凡その見積もりを出した。


「少なくとも、黒金貨数枚は下らないかな?」

「「「「・・・・・・。」」」」



 クロトが値段を言うと、全員沈黙してしまった。

 高いかどうかの判断がつけられないのだろう。

 効果を考えれば安いのだが、やはり数億ゴールドというのは・・・。


 クロトはそこへ、とどめの一言を放つ。





「買ってくれるなら、身内価格でお安くするよ?」



 全員、クローナ雑貨店に出向くことが決定した。












「ちなみにどの商品も、僕に敵対したら自爆するようになってるから。」

「「「「それは酷い・・・。」」」」


 とことん抜かりないクロトであった。

 危険なモノを売り出すときは、事前の対策を忘れない。

 これは鉄則である。



 かくして、ハリケルア雷山の探索が始まったのだった。

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